朱一閃一〇四歳の風通る

新緑に水玉紅白抱き着いて    四日

「草間彌生 わが永遠の魂」展開催の六本木・新国立美術館。新緑の並木に、紅白の水玉模様の布が巻かれ、これも作品。目がちかちかするような会場。見終わって、自転車で菊池智美術館。「篠田桃紅 昔日の彼方に」展。

さくらんぼ十七年の恵み二個    五日

ベランダのさくらんぼの木に紅い実が二つ。連れ合いが声を上げた。一七年前に門前仲町の植木市で買って、連れ合いが水やりを続け、毎年花は咲いたが、実をつけたのは初めて。コーヒーの濾しガラを与えたせい?

朱一閃一〇四歳の風通る      五日


篠田桃紅さんの図録を見て、いくつかの作品に朱色の線が凛としたたたずまいで引かれていることに気づかされた。上村松園の絵にも、和服の襟や裾などに、朱色が使われていて、共通する美学を感じる。一〇四歳でなお現役の桃紅さんはいつも着物姿。

 

観世能銀座シックス蘭の花   

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マロニエは隅田川にもよく似合う  二四日

佃の隅田川沿いにマロニエの花が咲いている。東京都とパリは姉妹都市。中央大橋にはパリから贈られた彫刻も。佃島はパリのシテ島を思わせ、水の文化が住み心地をよくしてくれる。またパリに行きたいと時々。

春雨やはるか彼方に早や台風   二七日

台風1号発生。東京はまだ朝夕肌寒い。春は別れの季節でもあり、昨夕は間もなく七五歳になる電気技師の嘱託終了で送別会。お礼にと佃煮を買った「天安」では、秋田美人の店員さんに里帰りの話を聞く。

観世能銀座シックス蘭の花   二八日

GINZA SIX地下三階の観世能楽堂。和服の女性が際立つオープン記念公演。ロビーの胡蝶蘭など数えてみたら五〇鉢以上。タレント名や大学の能楽サークル関係の名前。眠りを誘われて、「羽衣」など。

夏日とかあの夏の日がよみがえり

 

夏日とかあの夏の日がよみがえり   一七日

東京は夏日。今日発売の「週刊現代」四月二九日号「田中角栄が逮捕された、あの日」に、「あれから四〇年ー当時の現場記者が語る」の見出しで、私のコメント。何十回も話したことだけど。政治家の質の劣化が心配。

朝六時目覚めに春の雨を聴く    一八日

六時前後に起きパソコンを立ち上げ体温を測る。両親などの遺影に水を供え体重など測定後、風呂場で一〇数種類のストレッチ体操、そして入浴。朝食後にラジオのフランス語講座をパソコンで聴く。これがルーティン。

ツツジ咲く牡丹はまだかと聞いてみる   ニ一日

江東区の牡丹町公園。そろそろ、純白、黄色、ピンクなどの花が咲く頃。佃公園にはあちこちにツツジが咲いて、桜から主役が交代。福島・三春の滝桜は満開という報道。

将棋見る佃の桜咲いていた    二二日

映画「3月のライオン 前編」。日本橋コレドTOHOシネマで。ロケの大半が隅田川沿いの佃・月島・新川地区で、我がマンションが映し出されるシーンも。交通事故で両親と妹を失い、将棋以外に人生の選択肢がない高校生が主人公。下町の人情もからめて、秀作。

目の奥に花の記憶を重ね塗り

目の奥に花の記憶を重ね塗り   一二日

この春もさまざまな花を見た。今朝は自転車で佃公園経由。花びらが敷き詰められた道は幸せなピンク色。先日の人間ドックでは、白内障の兆しはあるが、当面心配はない、と。

葉桜が好きと女のひとり言    一四日

知り合いの女性がFBに「満開より葉桜の頃が好き」と。工場がある川崎・大川工場団地のオオシマザクラもほぼ葉桜に。太白の里帰りが話題になり、ロンドンからもメール。

目の中に飛び込む緑朝の街    一六日

日曜日の朝は一週間分の食糧を買い込むためスーパーへ。自転車を引き出すと、あたりの緑が鮮やかに目に飛び込む。葉桜の緑や民家の軒先に並べられた植木など佃・月島は緑が多い。スーパーにはもう西瓜が並ぶ。

さくら散る掃除の苦労知らぬげに

さくら散る掃除の苦労知らぬげに    七日

佃小学校の桜が自宅マンションの階段に散り始めた。出勤時、玄関前で管理人の深井さんに「大変ですね」。玄関先には入学したばかりの一年生も含め、傘をさした小学生一〇人ほどが母親達に見送られてにぎやかに。

シャガに雨七宝に目を癒されて   八日

目黒の東京都庭園美術館に並河靖之・七宝展を見に行く。改築後初めてで、新しいギャラリーが別棟に。藤の花や蝶が描かれた作品は、気が遠くなるほど細かい線使いだが、見ていて気持ちが綺麗になるような。目黒川の花見に向かう途中にシャガの白。甘茶の日。

九十一歳春のゴルフで優勝と    九日

社会部旧友ゴルフ・コンペで九一歳の牧内節男・元スポニチ社長が優勝した、と幹事の堤哲さんから。スコア109、年齢ハンディも加味されて。その瞬間に立ち会いたかった。こちらは月曜日に今年初めてのゴルフ。

夜桜に上弦の月屋形船

夜桜に上弦の月屋形船

桜模様のネクタイ締めて年度末  三一日

濃紺の地色に小さな花びらを密集させた図柄。今日で定年を迎え職場を去るサラリーマンも? 最近は六五歳までの雇用確保が義務化され、嘱託などで仕事を続ける人も。自分の会社生活は六月一六日の株主総会まで。
【二〇一七年四月】

蕗の薹墓前に祈る子や孫か     三日

一日に徳島へ帰って山川町の両親の墓参り。墓の前に蕗の薹が沢山生えていて、墓に手を合わせている親族のような感覚。桜は東京より開花が遅く桜並木の母校も一分か二分咲き。

夜桜に上弦の月屋形船       五日

昨夜は隅田川沿いの佃・さくら亭で、新聞社後輩と花見酒。ようやく満開近く、大川沿いに花見客。帰りにカフェバー「星時計」に立ち寄り、さとみさん手作りの佃煮やカブ漬け。日本酒は「幻」「白竜」「東力士」など。

ゆすらうめ桜に負けずベランダに  六日

山桜桃梅の花がベランダで満開に。楚々とした白い花。昨夜は門前仲町・大横川の桜を楽しんだ。新聞社時代の「三人娘」と。川面に伸びる花がボンボリの灯りに照らされて。また来年もこの花を。絶滅から救われ、英国から里帰りした「太白」の話題が新聞に。

ベランダの椿ようやく花開く

氷雨降る春は名のみの歌も出ず   二七日

春は名のみか 風の寒さよ…。「早春賦」。脳梗塞で倒れた先輩の元社会部長は、薄れた意識の中でこの歌を繰り返し口ずさんでいたという。氷雨に、せっかく開花宣言した靖国神社の桜も、戸惑っていることだろう。

ベランダの椿ようやく花開く   二八日

五島列島出身で「人生八聲」同人の津村裕子さんが送ってくれた玉之浦椿。昨年暮れに蕾を確認後、花開くまで三か月以上も。濃いピンクと白の花弁に、中心の雌蕊は黄色が鮮やか。ただ一輪、凛とした姿が好ましい。

豊島から産廃消えて花見待つ   二九日

香川県は二八日、豊島に不法投棄された産業廃棄物の搬出が完了した、と発表した。公害調停成立から一七年。総量は九〇万八千㌧。ようやくごみの島の汚名を返上するが、汚染地下水の浄化や跡地利用が課題。安岐正三さんはツツジの花見に断酒解禁か。

忌部の地歴史語って濁り酒     三日

忌部(いんべ)は大和朝廷成立に力を尽くした阿波の氏族集団。麻や粟など農業技術を関東に広めた。伝統を守る三木家を昨日、剣山の近くに訪ね、当主三木信夫さん(八一)と囲炉裏を囲み濁り酒。

ジュテームの壁の広告春はいま

肥田さんと紙面で別れお彼岸に  二一日

日本被爆者団体協議会で被爆医療活動に献身した肥田舜太郎さんが春分の日に一〇〇歳で亡くなった。自らも軍医として広島で被爆。終生、被爆者医療に貢献してきた。浦和の自宅で話を聞いたことも。温厚な人柄で、反核運動のシンボルだった。

ジュテームの壁の広告春はいま  二四日

パリ・モンマルトルの丘にある「ジュテームの壁」。いろんな言語で落書きのように「愛」が記されている。今朝の新聞にその写真が全面広告で掲載され、二年前の秋に訪れ、写真を撮ったことを思い出した。

古唐津に柿の木の花目に浮かぶ  二六日

出光美術館で開催中の「古唐津展」。「絵唐津柿文三耳壺」は、柿の枝と実を軽妙なタッチで描いた図柄が素晴らしい。見ていて、田舎で目にした白い柿の花が思い出された。

屋形船長屋の花見聞きながら   二六日

屋形船でてんぷらや寿司を味わい、落語を聞いて、隅田川沿いの桜を楽しむ、という趣向。しかし桜はほとんど開花せず、冷たい雨。それでも浅草・吾妻橋から船出して、桂伸治さんの「長屋の花見」を聞きながら豊洲市場用地など眺めて、連れ合いと二時間。

能舞台 柳は青く角田川

能舞台柳は青く角田川      一二日

知り合いの井上貴覚さんがシテを務める金春会定期能の「角田川」。我が子梅若丸をさらわれた都の女が東国に消息を求め、柳の木のたもとで、亡霊となった我が子に出合う。小学校三年生の長女和奏さんが亡霊役として舞台に立ち、父娘共演。国立能楽堂は春の気配。

フェイクだとメディアの冬に偽者が
一七日
昨夜は、旧東京大学新聞研究所(現・情報学環)の同窓会。現役学生の修了式に合わせて本郷で開かれ、TBS「NEWS23」の編集長、萩原豊さんが「Post Truthの時代に」と題して講演。安倍首相の「一〇〇万円寄付」のニュースも話題に。

ハクモクレン川風に散る昼下がり 一九日

自転車で近隣を走ると、隅田川沿いなどにハクモクレンの並木があり、もう散り始めていた。近辺では、東陽町に近い汐浜運河沿いに一㌔㍍以上も続く並木がある。連れ合いが所属する広山流の花展は、春の花の賑わい。

ラ・ラ・ランド春夏秋冬メロドラマ
二一日
映画「ラ・ラ・ランド」。主演女優賞(エマ・ストーン)などアカデミー賞六部門受賞。ミーハー的に昨日、観に行った。女優
を目指すコーヒー店員と自分の店を持ちたいジャズピアニスト。夢はかなったが、結ばれなかった。

春近き日に・・・

椿咲く寂聴さんと京の旅      五日

BS・TBS「麗しの京都巡礼」を見て、『中坊公平の追いつめる』を一九九八年に出版した際、中坊さんとの縁を取材後、寂聴さんとお酒を?んだ日を思い出した。俳人真砂女さんをモデルに小説「いよよ華やぐ」を新聞連載していた頃で、店は彼女の銀座「卯波」。

梅の花メジロせかせか蜜を吸う   七日

知り合いのフェイスブックに、梅の蜜を吸うメジロの姿。カメラなど気にせず、さぞ忙しく動き回っていることだろう。子供の頃、田舎でメジロを飼っていた。

ドバイへとコンシェルジュさん春の旅    八日

朝、マンションの管理人、深井美恵子さんと立ち話。ドバイ旅行に行ってくる、と。お孫さんの世話の骨休めに。エジプトや南アにも行ったことがあり、旅慣れている様子。

少年は打って走って春を呼ぶ    八日

中学生の頃まで野球少年だった。ワールドベースボールクラシック(WBC)が始まり、日本は初戦でキューバに勝ち幸先のいいスタート。選手たちの心はいまも少年。

六年目津波のあの日春寒く    一〇日

東日本大震災から六年。三月一一日のあの日から、日本は大きく変わったはずだけれど、原発再稼働の動きはやまない。ダブルスタンダードを採用してまで避難解除区域を指定する政策に、かつての住民は戸惑う。