無償の愛をつぶやく Ⅲ
高尾 義彦
保津川に 冬鳥遊ぶ 水きらら
(2019/12/13)
京都の旅の続き。嵐山に開館したばかりの福田美術館で、上村松園や竹久夢二の作品を見た。ほとんどの絵が写真撮影OKで、会場にスマホの音が響く。案内文は触れてないが、消費者金融の雄が渡月橋と保津川を借景に建設した。嵐山にはまだ紅葉のグラデーション。
シクラメン 魔女の宅急便も来て
(2019/12/14)
連れ合いの友人が紅いシクラメンを届けてくれた。どうやらスダチのお礼のような。連れ合いが魔女さんと呼ぶ友人からもクリスマスに向けた贈り物が届いた。1日7個の宅配便は我が家の記録かもしれない。一人ひとりの顔を思い浮かべて、今年一年の感謝を礼状に。
新聞の 生理終えたい 年内に
(2019/12/15)
新聞のスクラップ作業をいまも続ける。現役の頃に比べれば、切り抜く項目は減ったが、読み直していると思わぬ発見があつて、やめられない。半年前から、ハワイ「日刊サン」 のコラムを執筆するようになつて、関心が広がる。後輩の気になる文章も時々。
銀座裏 遅い銀杏と 戯れて
(2019/12/16)
銀座5~7丁目の昭和通りに、まだ真っ黄色の銀杏並木。外国人観光客らがカメラに向かってポーズをとり、一眼レフのカメラマンも。パナソニック汐留美術館のラウル・デュフィ展で見た絵画「黄色いコンソール」が、まさに同じ色。日曜の昼下がり、往復自転車で。
セーターに スキーの横線 幼い日
(2019/12/17)
仏壇の角に、小学校2、3年生頃の写真。両親と弟妹の5人で、珍しく写真館での撮影。セーターの模様で、南国から石川県に転校してスキーに夢中になった時期を思い出す。昨日は徳島クラブで、「なっちゃんの写真館」5代目、立木さとみさんの講演を聞いた。
部屋ぬくめ パソコンのキイ 左手で
(2019/12/18)
先輩の元主筆と同期の演劇記者が、脳梗塞、脳出血のリハビリで病院で年を越す。回復を祈りつつ、昨日は元主筆のお見舞いに。最近、パソコンの前に座って、出来るだけ左手を多用してキイを押す。機能訓練にもならないが、自分なりの予防的な気持ちの問題。
きつねうどん 京都の冬を 追体験
(2019/12/19)
銀座4丁目近くに京うどんを看板にした「きつね庵」がある。テーブルも含め8人で満員に。甘いきつねうど
んを味わって、自分が関西出身であることを改めて確認する。食べ物へのこだわりを大事にしたい年齢。書道仲間の後輩女性から、丸々とした銀杏が届いた。
菊も食べ 冬に備える 小鳥たち
(2019/12/20)
シネマ歌舞伎「刺青奇遇 ベランダの菊の花びらが無残に食いちぎられた。先日、ムクドリらしい姿を見かけたが、あの鳥の仕業か。貴重な枇杷の実をついばまれたこともあり、小鳥たちは美味しい果物の食べ頃をよく知っている。東劇で、連れ合いとシネマ歌舞伎「刺青奇遇(ちょうはん)」。
周防大島 晩生(おくて)の蜜柑 しっかりと
(2019/12/21)
瀬戸内・周防大島出身の先輩から、島で育った蜜柑をもらった。昨年も味わったが、しつかりとした甘さと酸っぱさ、近所の店で買うものより、日持ちがいい。大学生の頃、知り合いの静岡の蜜柑園で摘み取りを手伝いながら一日
で40個くらい食べた。
有馬記念 馬券頼んだ 姫は逝き
(2019/12/22)
元電話交換嬢のふーみんは、元気だつた頃、有馬記念を編集局仲間と見に行っていた。何度か馬券を頼んだが、当たつた記憶はない。電話口の声の縁で飲み友達になり、門仲・久寿乃菓のグループ旅行にも参加した。府中通信部の時代は遠く、今年も馬券は買わない。
人生を 振り返りつつ 賀状書く
(2019/12/23)
パソコンで管理している住所録は、鬼籍に入った人もそのまま残してある。一人ずつ名前を確認しながら前年の発信に基づいて万年筆で宛名を書く。そのプロセスの中で、忘れていたことが蘇る。購入した600枚のうち100枚は連れ合いが使用。枚数が足りるかどうか。
豊満な ロシアソプラノ イヴの曲
(2019/12/24)
・クリスマス・コンサートを昨夜、よみうり大手町ホールで。サンクトペテルブルグ室内合奏団がアヴェ・マリアやハレルヤなどおなじみの20数曲のさわりをヴアイオリンやハープで演奏。ソプラノ歌手2人が「きよしこの夜」 を日本語で歌うサービスも。
雪を踏み 橋を渡った その昔
(2019/12/25)
隅田川にかかる相生橋。佃・月島と門前仲町を結ぶ。門仲で心地よく酔って20分ほどの道を歩いて帰った
日々。靴の下できしむ雪の音を聞いたことも。新聞社への往復に、大江戸線を使わず一駅分を歩き、門仲から東西線。昨日、ディズニー映画「アナと雪の女王2」。
ゆく年 くる年 母校が登場 するという
(2019/12/26)
大晦日のNHKゆく年くる年。大嘗祭に麻布「鹿服(鹿の上に々・あらたえ)」を調進した故郷の忌部神社から中継があるといぅ。忌部族当主三木信夫さんらが出演。母校川島高校の校宝である「至誠無息」 の旗も登場する。昭和天皇の大嘗祭の時に、鹿服(鹿の上に々・あらたえ)の余り布で作られた。
注連縄を 抱えて帰る 所帯主
(2019/12/27)
清澄通りを門前仲町方向に歩いていると、注連縄や松飾を抱えた中年の男性とすれ違った。所帯主かどうか分
からないが、ここ空家の主が新年の準備と受け止めたい。同人誌『人生八馨』新年号の発送を終えて帰る途中、早期退社した元秘書から「就職先決定」と嬉しいメール。
田作りを ちょっとおよけに 路地裏で
(2019/12/28)
佃にある佃煮屋さん4軒のうち、「つくしん」だけが路地の奥にあり、目立たない。ここが卸売りもする本格的な店、と教わり贔屓に。行くたびに、女将さんは小袋にかつおそぼろやでんぶを入れサービスしてくれる。竹籠の容器もあり、江戸の伝統を感じる。
魚沼の 季刊誌雪に 覆われて
(2019/12/29)
新潟の八海酒造を訪ねてから、もう20年近く経っている。季刊誌『魚沼』がいまも送られてくる。冬号の表紙は雪。日本橋・コレドの店で八海山の甘酒を買ったりしているが、十分義理を果たしているとは思えない。この冬は、熱爛向きの八海山を買ってみょぅか。
掃除機を 引きずりながら 年暮るる
(2019/12/30)
家事の中で掃除、アイロンかけ、食器洗いの半分、などは、ほぼ引き受けている。風呂の浴槽の掃除も定期的
に。狭いマンションでも、周辺の環境など立地は最高。
大晦日 つぶやく 一句幸せに
(2019/12/31)
ツイッター俳句、一日も休まず、明日から三年目に。健康と精神的安定に感謝し、支えられてここまで来たこ
とを実感する。ものを書く人間としてささやかでも発信。
(注)写真の不足分はNETからお借りしました。
心から感謝申し上げます。
よいお年をお迎へ下さい。
高尾 義彦
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