無償の愛をつぶやく Ⅲ
高尾 義彦
紫蘭春蘭 その名知らずに 散歩する
(2020/05/08)
隅田川沿いの佃公園に紫色の花が咲いている。初めて見た時、「この花の名前は?」と聞かれて、「知らん」。春蘭は、知り合いの陶芸家、神谷紀雄さんの器に描かれている。この春、チューリップや藤の名所で、三密を避けるため花を切る愚行。花に罪はない。
五日ほど 菖蒲浮かべて 湯が香る
(2020/05/09)
端午の節句に湯舟に浮かべた菖蒲の束をしばらくそのままに。微かだが晴々しい香りを感じて、コロナ感染兆候である喚覚障害はないと確信する。朝は30分ほどストレッチした後、入浴するル-ティンは変わらない。夜は、身体を洗って、ゆったりとした気分で。
海風を 五月の凰を 受け止めて
(2020/05/10)
隅田川の一番下流に出来た築地大橋から、竹芝、芝浦など湾岸を自転車で。マッヵーサー道路から環状2号線が豊洲市場まで延び、築地市場は解体されてほぼ更地に。緑濃い浜離宮庭園はコロナのために休園。いつもなら遅咲きの桜などが楽しめたが、整備工事中。
アヤメ咲く 聖路加タワー 伸び上がり
(2020/12/12)
佃公園にアヤメが咲いた。いずれがアヤメ杜若、ここはアヤメ(菖蒲)。遠景の聖路加タワーは鎖骨及び肋骨の一部を骨折した自転車事故で、生涯初めて入院した病院。10数年前、20日間ほどの個室生活を思いだす。2棟がつながって双子のような高層ビル。
衣更え 狭い我が家を 右左
(2020/05/12)
小さなマンションだけど、入居した頃、収納の能力が充実していることに感心した。しかし今では、書物やら衣類やら物置の様相を強めて、室内の移動にも神経を使うほど。衣更えは冬物と夏物の置き場所をコンバートする作業が中心で、根本的な解決にはならない。
検事総長 粘って夏を 超えるべし
(2020/05/12)
俳句にはならないが、そう言いたい。黒川東京高検検事長は半年延長された定年を8月7日に迎える。稲田検事総長がそれまでに辞めなければ、安倍首相の目論見は実現しない。国会論議をよそに、総長の抵抗に期待したい。#検察庁法改正案に抗議します。
熱海の湯 初夏 の楽しみ 秋に延び
(2020/05/13)
昨日12日は講師を依頼された熱海市民講座が開かれる予定だったが、コロナの影響で9月に延期された。テーマは三ユースの読み方裏・表」で月1回。高齢者向けに、高齢者がしゃべる。
銀座から アワガミ消える コロナ五月
(2020/14)
我が故郷で和紙を漉くアワガミファクトリーから、銀座の事務所を閉鎖するとメールが届いた。自費出版を予定している『無償の愛をつぶやくⅢ』の表紙用の和紙をお願いしたばかり。担当の女性は在宅勤務で支障はないが、銀座の拠点が消えるのは残念。
顔洗う 手押しポンプの 水ひやり
(2020/05/15)
朱色の佃小橋を渡った佃一丁目の路地で、手押しの井戸ポンプが使用されている。フェイスブックで紹介したら、徳島の友人などから反応があつた。佃には、江戸以来の人情や古きよきものが残され、嬉しい。
初夏の風 ロッキード世代の 言葉読む
(2020/05/16)
松尾邦弘元検事総長らが法務省に提出した「検察庁法改正案に反対する意見書」を読んだ。元首相を逮捕・起訴して三権分立の理念を現実に示した体験を共有する世代。「朕は国家である」とルイ14世を気取るかのような安倍首相への痛烈な批判。
新緑に 染まる 心地で 街歩く
(2020/17)
佃公園をはじめ、東京の都心は大都市にしては緑が多く、新緑が目に優しい。徳島県の木に指定され街路樹にもなつているヤマモモは、6月末頃、紅い実をつける。この木が重要な役割を果たす高田郁さんの小説『あい永遠に在り』は阿波藩の御殿医も務めた関寛斎の話。