講演「いま、なぜ田中角栄なのか」-11

Pocket

特別寄稿第2弾

講演「いま、なぜ田中角栄なのか」-11

高尾義彦
=「人生八馨」一六年正月号・第五巻掲載から抜粋

主任検事の自宅が舞台になつたもう一つの私の「個人的事件」がある。橋本登美三郎元運輸相、佐藤孝行元運輸政務次官の国会議員大も起訴され、丸紅、全日空の幹部も含めし十六人が被告人となつて、熱かつた夏が終ろうとしていた。その頃取材のターゲットになつたのが、いわゆる「灰色高官」問題だつた。ロッキード・丸紅資金を受領しながら職務権限が無かつたり、時効成立などの理由で刑事責任を問えない国会議員六人に事情聴取したうえで、不起訴または起訴猶予の結論を出す仕事が検察にゆだねられていた。国会では彼らの政治責任論議が起き、捜査の行方が注目されていた。
八月二十五日。大筋の捜査が山場は超えていたこともあつて、毎日新聞の司法記者グループはこの日、大胆にも夜回りゼロの日と決め、青山学院近くのスナックで全員が呑んでいた。しかし午後十時過ぎになつて、不安になつた筆者が、せめて主任検事のところだけ、と出かけたところ、元首相逮捕前日に記者たちがたむろしていた西大久保の公園に、この夜も他社の記者たちがいた。
「次席検事のところで、灰色高官事情聴取の話が出たよ」。我が社以外は全社が耳にした情報だったせいか、簡単に教えてくれた。
一瞬、冷や汗がどつと流れる思いで、近くの公衆電話を握りしめ、まさに〝勧進帳″で原稿を送り始めたところ、社内で原稿を筆記していた記者の電話をデスクがひったくるようにして 「もうNHKがニュースで流している。何をやってんだ」と怒鳴った。
それにしても、どうして検察の公式スポークスマンである次席検事がそんなことを、と不審に思い、この夜は主任検事が自宅に入れてくれたので確認すると、「事情聴取なんか、やってない」と正反対の答え。主任検事宅の電話を借りて次席検事に電話してみたが、答えは暖昧で否定も肯定もされなかった。

-------

ポツリぽつり 出席にマル 秋の会
(2016,9,6)

母校・徳島県立川島高校の同窓会「東京至誠会」。二五日に銀座ライオンで開く総会へ出欠回答が日々、到着。往復葉書五〇〇通、メール連絡約100人。うち出席は1割? 毎日、読売にミニ案内。