特別寄稿
忌部(いんべ)の地 歴史語って濁り酒
写真は忌部小学校
特別寄稿
「天皇譲位と忌部族」-7(最終回)
高尾 義彦
(「人生八聲」一七年夏季号・第十一巻掲載から)
地元住民や林教諭たちの啓発活動が実を結んだ形で、農林水産省は今年三月、急傾斜地農業を日本農業遺産に指定するとともに、世界農業遺産候補の一つとして申請することを承認した。徳島県西部の勾配三度を超える急傾斜地で引き継がれてきた農業は、ソバ、キビなどの雑穀、白菜、大根などの野菜、あるいは葉タバコなどの生産に適する農地として、古くから開発されてきた。急傾斜地に段々畑を作るのではなく、斜面をそのまま生かして、土が流れ出さない工夫などを施している。
森林を焼いて畑地を生み出す「焼き畑農業」が古来からの手法として伝えられ、これは忌部の発達した農業技法にさかのぼることが実証されつつある。急峻な山の斜面、「ソラ」と呼ばれる天空に近い集落で営まれる農業がいま注目されており、地元では「徳島剣山世界農業遺産推進協議会」が結成され、推薦運動を活発化させている。
「忌部が担ってきた農業文化は、共生、共助、自然循環などの思想が根底にあり、持続可能な社会の実現に向けたモデル的な要素が認められる」と林教諭はみる。忌部の歴史をさらにさかのぼれば、中国・雲南地域やさらに西方の大陸にもルーツを求め得ることが考えられ、日本の歴史を根底から見直すスケールの大きな研究の可能性を秘めている。この「忌部ロマン」 に大いに期待して、自分なりに協力できることを模索してゆきたい。
「忌部」文化研究所設立協議会のURL
薔薇館 ショパンにリスト 別世界 2014年6月
今年も千葉市・土気にあるドクター本間の薔薇の館へ。若い音楽家を支援するチャリティーコンサート・シリーズで、今日は若手ピアニスト、近藤和花さん。べヒシュタインの一八八〇年製リストモデルのピアノを弾きこなし、超絶技巧も見事だった。