はじめに 6 医者の目で見た「死」を描く

             医者の目で見た「死」を描く

「2035年問題」というのは、医療界では早くから囁かれている問題だ。

というのは、認知症患者がこの年までに1000万人ちかくに達すると見られているからだ。  現在、全国の認知症患者は約460万人とされる。                                                     これが2025年には約700万人に達し、さらに増え続ける。

そうなると、老老介護という現実からみて、もっとも困るのが、                                      「親一人子供一人」という所帯になる。                                                         こうした所帯は現在どんどん増えている。                                                      となると、親の認知症が進んだ場合、自宅介護となれば、                                          子供の生活は成り立たなくなってしまう。

                                                                            認知症に限らず、ほかの病気でも同じことが言える。
寝たきり高齢者が増え続け、それが施設で面倒をみてくれないとなれば、                                    家族はどうしたらいいのだろうか?

このように、じつは私たちの老後は、圧倒的に暗いと言える。                                    もはやリタイヤ後の悠々自適生活というのは、                                                 大多数の日本人にとってはかなわない夢ではないかと思う。

だから本当に、「どうやって、自分の願い通りに死ねるか」を、                                          いまから考えておかなければいけない。                                                    とはいえ、歳をとるにつれて、確実に私たちは衰えていく。

現在、「健康本」「長生き本」は書店に溢れている。                                           健康で長生きできれば、それに越したことはないが、                                             はたしてどれぐらいの人がその願いをかなえられるだろうか?

このような問題意識から、医者の目で見た「死」を描いてゆくのが本書である。                         どうか、みなさまも私といっしょに考えていただきたい。