愛川欽也さんの死に方は「理想的」か?-2

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第8章 「死に方格差」を乗り切るには?

愛川欽也さんの死に方は「理想的」か?-2

ただし、ここで降板を発表してからわずか1カ月で逝ってしまった。降板後、すぐに自宅に介護ベッドや点滴器具が運び込まれ、妻のうつみ宮土理さんがかたわらにつきっきりになった。うつみさんは、最期まで、毎朝、ご本人が好きだった山芋と野菜をまぜた健康料理をつくつて食べさせていたという。愛川さんは最期のときまで「さあ、仕事に行こう」と言っていたというが、ご自身の死期を悟ったうえでの言葉だったのではないか。
肺ガンは、高齢男性ではもっとも発生頻度が高いガンである。愛川さんを偲ぶ会(葬儀)で弔辞を述べた親友の大橋巨泉氏は、愛川さんとは対照的にガンとの闘いを選択し、これまで4回もそれを公表し、ご自身のエッセイでも綴っている。
治療するかしないか、どちらが正解ということはない。とはいえ、その一連択の決め手となるのは、やはり年齢とガンのステージによるだろう。
たとえば肺ガンでもステージ1なら、5年生存率が約8割なので、手術を受けても命に大きな影響はないだろう。かえって長生きできるかもしれない。しかし、ステージ3や4となれば、抗ガン剤や放射線治療が主役になるので、治療で得られるメリットよりも副作用によるダメージが大きくなる。高齢者の場合、このダメージはかなり大きいので、治療を拒否して終末期をどうすごすかの選択のほうが大事である。
最近は「クオリティ・オブ・ライフ」に加えて、「クォリティ・オブ・デス」ということも注目されるようになつた。っまり、「死の質」である。その人らしい死に方、尊厳ある死に方こそが大事だとする考え方である。
じっは、この考え方で終末治療が行われたほうが、本当は医者にとってもいいのである。
というのは、日本では患者さんや家族の意思が明確でないままに終末治療を止めると訴えられる可能性もあるからだ。
っまり、終末治療をどうするかは、あらかじめ決めておくべきなのである。