座ったきり生活では長生きできない

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第8章 「死に方格差」を乗り切るには?

座ったきり生活では長生きできない

 食事や運動を少しずつ減らすといっても、一つだけやってはいけないことがある。それは、座ったきり生活をすることだ。仕事を引退して家にいることが多くなると、必然的に運動量は減って、座ってすごすことが多くなる。しかし、この座ってすごす生活は寿命を縮めてしまうということが知られている。
2015年6月、フィンランドの保健省は「座ったきり生活」に対して国民に警告を発し、「SitLess一Fee-Better(座ることを減らせば気分がよりよくなる)」というキャンペーンを始めた。フィンランド保健省は、「たいていのことは、座っていなくても立ったままや歩きながらでもできる。新聞を読んだり、食事をしたり、コーヒーを飲んだり、テレビを見たり、これらは立ったままでできる」として、できれば食事も立ったまま食べることが重要だと指摘したのである。
長時間座り続けることは、血行不良、腰痛などにつながり、さらに糖尿病、肥満、心血管系の疾患などの多くの病気を引き起こすことが、欧米の研究機関の調査で明らかになっている。たとえば、アメリカでは「1日に6時間座る生活を続けていると、1日に3時間しか座らない生活の人に比べて15年以内に死ぬ確率が40%増える」という調査研究がある。
また、スウェーデンでも同様な研究調査から「座るな、歩け」ということが提唱されている。長時間座り続けると、血液中に含まれる「テロメア」と呼ばれる短鎖重合体の長さが短くなり、テロメアの長さが寿命に影響することが判明したのである。
こうしたことを受けてフィンランドでも「座るな」警告が出たわけだが、フィンランド保健省が示したデータによると、フィンランドの成人は、起きている時間の平均4分の3以上を、座ったり横になったり、もしくはじっとしたりして過ごしているという。
その結果、「1日に7時間以1座っている人では、さらに1時間長く座るごとに死亡リスクが5%ずつ増加する」というのである。
私たち日本人も、考えてみると昔に比べて座ったきり生活が多くなつている。現役世代を見ても、職場がⅠT化されてから、パソコンの前に長時間座り続けて仕事をする人が多くなった。こうしたことで座ったきりに慣れ、またそのほうが楽なために、歳をとっても座ったきりで日常生活を送る人が増えている。
過度の運動はよくないが、座ったきりはもっとよくない。65歳を過ぎたら、意識して立ったままで過ごす時間をつくるべきだろう。