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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}
第8章 「死に方格差」を乗り切るには?
先進医療ははたして有効なのか?
先進医療、最先端治療などと聞いただけで、いままでの治療法より優れている、いままで助からなかったガンも助かると信じている方は意外に多い。そこで、最近は、生命保険やガン保険でオプションとして先進医療を加える人が増えている。
ガンで言うと、「陽子線治療」と「重粒子線治療」の二つが先進医療の主流である。
この二つとも放射線療法で、入院の必要がないほど体への負担が少ないという特長がある。陽子線はⅩ線やガンマ線と比べて、人体に入っても弱くならず、一定の深さで一気にエネルギーを放出する。そのためピンポイントでガン細胞を叩けるので、副作用はほとんどない。
ただし、いずれも健康保険対象外のため、治療を受けるには300万円前後の治療費が必要となる。これは、一般の方には簡単に用意できる金額ではないから、保険に入ってしまうのだろう。保険会社も、「少ない負担で大きな安心」と盛んにセールスしている。
しかし、先進医療は必ずしも有効とはかぎらない。また、先進と名前がついているから「先進」とも即座には言えないのだ。
先進医療については、厚労省のHPに下記のように記されている。
《「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であつて、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされています。》
どこにも〝先進″とは書いていない。厚労省としては、とりあえず保険診療との併用を認めてはいるが、まだ保険適用にするかどうかわからないものを、一般に先進医療と呼んでいるにすぎないのだ。
実際、陽子線治療自体は、アメリカでは1961年から臨床応用が始まっている。日本では、2001年7月に先進医療に指定されたが、現在も保険適用するかどうか検討中となっている。
また、陽子線治療も重粒子線治療もすべてのガンを叩けるわけではない。肺ガン、前立腺ガン、喉頭ガンなどには有効とされるが、胃ガン、大腸ガンといった動く臓器では粘膜に照射すると潰船場ができやすいとされている。また、白血病や悪性リンパ腫のような体全体に広がるガンについては、このような局所的治療は効かない。
こうしたことから、この二つの治療を受けた患者はガン患者全体の1%に満たない。つまり、先進医療は本当の意味での先進医療ではなく、その保険は 「入っているから」というだけでは安心とは言い切れないのだ。