「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-1

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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第7章 信頼できる探し方、選び方

「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-1

私がよく言っているのは、まず近所の町医者に行ったら、その医者の人間性をチェックする。そして、ある程度信頼できるとなったら、きちんと「私と私の家族の医療問題について、相談に乗ってくれますか?」と申し出ることを勧めている。この申し出に「はい」と答える医師を持つのと持たないのでは、老後の人生は大きく変わる。
さらに、これと思った医者を味方につけるには、なんでもいいから誉めまくることである。服装でも身につけているものでもいいから誉めることだ。医者はプライドが高いので、もっともおだてに弱い人種である。また、付け届けも有効だが、これを奨励するのは問題があるので、詳しくは書けない。ただ、医者は贈り物が大好きだということは知っておいたほうがいい。こうして、まずはかかりつけ医をつくつておくことである。
では、医者の人間性を見るにはどうしたらいいだろうか?
私がもっとも重視しているのは、「わからない」とはつきり言ってくれる医者がいちばん安心できるということだ。医者は万能ではなく、それぞれ専門分野が違う。にもかかわらず、町医者のなかには、患者を診療報酬の点数としか見ていない医者が多く、どんな症状を訴えても、こうした医者は「とりあえずこれで様子を見ましょう」と、クスリを出すだけだ。それも、クスリの点数が多い。
たとえば、ある内科医は腹痛を訴えてきた60歳代の女性患者に何種類かの調整剤や栄養剤を出すことだけを繰り返した。もちろん、レントゲン検査、血液検査は毎回した。しかし、「異常がない」と言われるので、その女性患者は我慢し続けた。女性の場合、我慢強いのがアダになることが多い。この方もその典型だったが、いっこうに改善しないので、ご自分からツテを頼って婦人科に行き、精密検査を受けた。結果は、卵巣嚢腫。かなり肥大化していたので、緊急手術となり一命をとりとめた。
町医者でも大病院でも、収入は医師が行う医療行為からしか得られない。事務員の給料も病院の賃貸料、光熱費、設備投資の費用も、全部そこから出ている。したがって、ある月に、来院患者数、薬の数、検査の数などが少なくなると、たちまち減収になる。