長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-1

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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第7章 信頼できる探し方、選び方

これからは「主治医をつくれ」と国が提唱-3

厚労省の「かかりつけ医・主治医制度」は、こうした仕組みの日本版と言えるもので、これを受けて最近では、自治体や医者の団体が「かかりつけ医のいない方にかかりつけ医となる医師を紹介いたします」というキャンペーンを始めている。「往診(訪問診療)が必要な方には往診可能なかかりつけ医を紹介いたします。また、すでにかかりつけ医のいる方でも、異富診療科の医師が必要とをつたとき、専門医を紹介させていただきます」などと、じつに親切きわまりない。

長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-1

しかし、いくら紹介してくれるといっても、この制度には問題がある。それは、かかりつけ医、主治医を待ったからといって、ほたしてその医者が信頼に足る医者かどうかわからないということだ。
かかりつけ医は、近所にかかりつけの町医者がある場合は、頼めば引き受けてくれる可能性はある。また、自治体などのサポートで見つけることは可能だ。しかし、主治医となると、長患いをしていて専門病院に通院を続けていたとしても、なかなかつくれるものではない。
こういう例がある。ある糖尿病患者さんは、10年にわたり専門病院に通院して、そこで担当医に診てもらつていた。だから、その医者を自分の主治医だと思っていた。
ところが、あるとき普段と違う体の不調を訴えたにもかかわらず、その担当医はなにもしてくれなかつたので、別の大病院で検査を受けた。すると、末期の胃ガンと診断され、すぐに手術を受けたにもかかわらず、半年で亡くなってしまった。
ご遺族は「ずっと同じ医者にかかり、その人を主治医と思っていたのに納得がいかない」と言うのである。
この例が示すのは、単にかかりつけだけでは、主治医とは言えないということだ。