韓国では検査のしすぎで「甲状腺ガン」が激増

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第5章 こんな検査・治療は拒否していい

韓国では検査のしすぎで「甲状腺ガン」が激増

ガン検診をやりすぎて、患者が激増してしまった例がある。お隣の韓国では、甲状腺ガンの超音波検査をやりすぎて、世界一の甲状腺ガン大国になってしまった。
韓国では、町の小さな病院まで超音波検査器が普及したため、女性で甲状腺ガンの検査を受ける人が増えた。その結果、2011年には年間約4万人が甲状腺ガンと診断された。
これは、10万人あたり81人が甲状腺ガンということで、その発病率は世界1位、世界平均の10倍を超え、イギリスの17・5倍、アメリカの5・5倍にもなつてしまった。ちなみに、日本の14・0倍である。
韓国の医者たちは、甲状腺ガンが発見されると、手術を勧める。そのため、明らかにしなくてもいい手術まで行われるようになつた。
甲状腺ガンは、どちらかと言えば悪さをしないガンである。症状もほとんど出ない。それなのに、検査によってガン患者が増え、手術まで増えるというのは、医療の行き過ぎと言っていい。
医者が手術を勧めるのは、商業主義のためである。世界保健機関(WHO)の外部組織・国際ガン研究機閑(IARC)では、韓国の医療機関が病状が深刻ではない患者に対して手術が必要だとする診断書を意図的に発行している疑いがあるという報告書を出して
いる。
検査による甲状腺ガンの急増は、別の弊害も発生させている。それは、医療機関が簡単な甲状腺ガンの検査で競争をする一方で、ぜんそく・慢性閉鎖性肺疾患・糖尿合併症などをおざなりにしてしまったことだ。こちらのほうは、本来、重症化して入院しなければならない患者が放置されてしまったのである。
韓国では、この間邁に対して医者の間で対立が続いている。「甲状腺ガンの急増は健康保険拡大と検診増加と関連がある」としてセーブを呼びかける側と、「ガンを早期に発見するほうがガンを育てるよりはましではないか」とする側の意見がかみ合わないのである。
また、「日本は韓国より超音波検査費などが高いのであまり発見されない」という見方も出た。               いずれにしても、一般の人間不在の不毛な論争だ。