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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}
第5章 こんな検査・治療は拒否していい
国民全体が「検査漬け」という大問題
日本では、ほぼどこの学校、職場でも、定期的に健康診断が行われている。日本人なら1年に1度は健康診断を受けるのが当たり前のことになっている。
しかし、訪米諸国では、30代以上の女性の婦人科検診は定期的に行われているものの、一般の健康診断はあまり行われていない。これは、「若い人はとくに健康診断は必要ない」という考え方が主流だからだ。アメリカ人もイギリス人も、ドイツ人や滅多なことでは健康診断を受けない。
欧米ではそもそも健康診断は定期的に受けるものという考え方がない。また、国も健康診断の受診を積極的に奨励していない。
これは、国によって保険制度が違うこともある。とくに、アメリカのように民間保険が主流の国だと、健診費用の自己負担額が大きいため、日本のようにすぐ医療機関に行くようなことはしない。
アメリカでの医療経験がある知り合いの医者は、こう言う。
「アメリカはなんでも個人の判断が優先されます。だから、自覚症状もないのに、病院に健診だけのためにやって来る人なんていませんよ。
健康基準値なんて知らない人がほとんどです。高血圧でも、なんらかの病気をして検査を受け、初めて自分の数値を知るという場合が多い。日本人のように、自分の血圧値、血糖値などをこまめに知っている人なんて、あまりいませんね」
日本は国民全体が検査漬けになっているのだ。それが、私たちの健康に結びつくのなら問題はないが、必ずしもそうは言えないので、私たちはこの問題を真剣に考える必要がある。
健康のバロメーターとされる基準値の変更で、大混乱が起こつた例がある。
2014年4月、日本人問ドック学会と健康保険組合連合会が「健康・新基準」を発表した。これを受け、新聞、テレビ、雑誌などメディアはどこも大特集を組んで、どこがどう変わったかを伝えた。
というのも、この改定はいままでと違って、緩和された基準値が多かったからだ。つまり、これまで異常とされてきた人が正常になってしまったからだ。
たとえば、血圧の基準値が緩和された。その結果、これまで高血圧として降圧剤を処方されていた人が、飲まなくてよくなってしまった。それで、「これまでの診断はなんだったのか?クスリ代を返してほしい」と言う人まで現れた。また、医者のほうは患者が減 捕
ってしまった。これは病院収入に大きく響くので、専門学会の猛反発が起こつた。
では、この基準値改定を基にして、健康を数字で表すことでなにが起こるのか?
そもそも健康とはなにか?を改めて考えてみたい。