医者はあまり健康診断を受けていない

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第5章 こんな検査・治療は拒否していい

医者はあまり健康診断を受けていない

まず、健康診断で行われる検査が、それほど意味を持っていないということから述べてみたい。
健康診断の王道と言えば「人問ドック」だが、これを受診すると、ほとんどの人が〃不健康〃になつてしまう。日本人間ドック学会が調査したデー夕によると、2012年に人間ドックを受診した全国の約316万人のうち、全項目で「異常がなかった人」の割合はたったの7・2%である。つまり、92・8%の人がなんらかの「異常がある」ということになってしまった。
もしこれを”不健康″と呼ぶなら、なんと日本人10人中、健康な人はl人もいないことになる。まさかそんなことがあるわけがない。
ということは、人間ドックの検査は健康な人まで不健康にしてしまうと言うほかない。
この日本人間ドック協会の調査は1984年から始まったが、このとき全項目で「異常がなかった人」の割合は29・8%だった。つまり、年々、「異常な人」は増えているのであり、その原因は健康の基準値をくるくる変えてきたことにある。基準値を変えて厳しくすれば、その分だけひっかかる人が増える。そうすると、これまでひっかからなかつた〝健康な人″が、いきなりク不健康な人″ になってしまうというわけだ。
このことを医者はよく知っているから、あまり健診を受けない。ケアネットが2013年3月15日に実施した医師を対象にした健康診断や人間ドック、医療機関の受診状況調査によると、健康診断・人間ドックを「毎回必ず受けている」と回答した医師は68・7%、「受けないことがある」は19・3%で、「毎回受けない」は12・0%だった。
健診や疾病予防を推進する立場の医者自身が、じつは、健診や人間ドックを必ずしも受診していないのである。
この調査に回答した医師の所属は、一般病院が54・7%、診療所・クリニックが32・7%で、大学病院が11・0%、その他1・6%だから、だいたいの医者を網羅していると言っていいだろう。そこで、なぜ彼らは健診や人間ドックを受けないのだろうかと回答を見ると、40歳代では「忙しいから」から72・7%に上っていた。忙しいことを理由にパスしてもかまわないと考える検査がはたして効果があるものなのだろうか。また、「自分の健康状態は自分でわかっていると思うから」という医師も21・4%いた。