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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}
第4章 ガンで死ぬということについて。
x ガンには 「悪さをしないガン」と死に至る 「悪さをするガン」があると言っても、それが初期段階ではわからないのだから、人はやはhリガンを恐れる。
悪さをするガン細胞は、増殖するためには正常細胞の何倍もの栄養が必要で、患者の体からどんどん栄養を奪い取る。だから、ガン患者はやせ細っていく。そして、ガンが進行すると、ガンによって臓器や骨が圧迫を受けたり、ガンが原因の炎症が起こつたりする。
とくに骨に転移したガンは骨を溶かして増殖していくので、激しい痛みをもたらす。こうなると、いくら抗ガン剤や放射線治療などは効果がないとしても、最終的な緩和治療が必要になる。
ただし、もしガンになっても、痛みもなく安らかに死ねるとしたら、どうだろうか?
誰もムダな延命治療は望まず、緩和治療も必要がなくなる。
「手遅れのガンでも苦痛なしに死ねる」
という例が、第2章で紹介した中村仁一氏の著者『大往生したけりや医療とかかわるな』では紹介されている。
手遅れの胃ガンとされ、余命2、3カ月と言われた79歳のある患者さんは、本人も家族も積極的な治療を望まなかったため、入居していた老人ホームに戻った。老人ホームの多くはガン末期の患者を引き取らない。しかし、このホームは常勤医と看護師がいたため例外だった。
当初、職員は、ガンの患部から出血したら病院に連れていって輸血も考えたが、それは起こらず、それまでのタール便が普通便に変わり、それを機会に食欲が出てモリモリ食べだした。そして、それ以降、外出も可能になり8カ月間普通の生活を送ったという。
そうして、最終的に老衰死を迎えたというのだ。この患者さんのほかにもう2例紹介されているが、いずれも痛みを感じず、徐々に衰えて死を迎えている。
ただし、これは高齢者のガンである。若い人のガンはこうはいかない。しかも、高齢者といっても、誰もがこのように死ねるわけではない。
ただし、ガンをむやみに恐れず、このような死に方もあるとして、過剰な終末治療を拒否することは大事だ。
高齢でガンが発見されたら、治すということより、いかに寿命まで生きていくかのほうがはるかに重要だということを、この例は教えてくれる。
第2章で述べたように、人の自然死は餓死である。それはけっして惨めなことではない。