「早期発見をすれば治る」とは言い切れない

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第4章 ガンで死ぬということについて。

「早期発見をすれば治る」とは言い切れない

現在、国も医者もメディアも「早期発見が大事」と、盛んに言っている。
しかし、ガン検診でガンが発見され、その後治療を受けた人々がなにもしなかつた人より長生きした、また、早期発見したことでガンが治ったという確かなデータは存在しない。
また、一部のガンで検診の有効性は確認されているが、ほとんどのガンで検診では有効性が証明されていない。
こうしたことは極めて重要なことだが、あまり声高に言う人はいない。
とくに医者や国は言わない。
現在、全国の市町村ではどこでも、「受けようー・ガン検診」というようなキャンペーンを行っている。
そして、病院に行けば「ガンは早期発見で治る」というようなポスターが粘ってあり、医者も「ガンは早期発見、早期治療が第一と言う。 だから、一般の方は「ガン検診は受けたほうがいい」「早期発見すればガンは恐くない」と思い込んでいる。
しかし、これは美しい誤解と言ったほうがいい。
毎年、健康診断のオプションで、肺ガン検診や大腸ガン検診、とくに女性は乳ガン検診を受ける人は多いと思う。
しかし、これらの検診は、欧米諸国では日本のように国民的には行われていない。
というのは、欧米諸国では、「くじ引き割り付け試験」といって、健常な人々をたくさん集めてくじ引きをし、検診するグループと放置するグループとに分けて追跡調査が行われ、ガン検診は「効果がない」という結果が出たからである。
とくに、肺ガン検診、大腸ガン検診、乳ガン検診やは、検診しょうとしなくとも死亡率はほぼ同じという結果が出た。そのため、アメリカではあまり呆施されなくなっている。
つまり、一般の方が思っているような「ガンは早期発見、早期手術をすれば助かる」ということに根拠はないのだ。
しかし、日本ではメディアが、ガン手術の成功例などをさかんに取り上げることもあって、このイメージが定着してしまった。また、医療側はこのことを知っていても知らないふりを続けている。そのほうが儲かるからだ。
さらに、くじ引き割り付け試験そのものにも疑問が掟示されている。たとえば、肺ガン検診を受けた人1万人と肺ガン検診を受けなかった人1万人を追跡調査したとする。
その結果、検診した人のほうで死亡が少なかったら、それをもって検診が有効と言えるだろうか?
死亡が少ない原因が、検診によって肺ガンが早期発見され、早期治療したことと関係があったとは言い切れないはずだ。
なぜなら、死亡者が少なかったのには、なにか別の原因も考えられるからだ。たとえば、肺ガン検診を受けるような人はもともと健康志向が強い。
そのため、食事や運動などに気を遣う生活を送っている。その結果、長生きしたと言えるからである。
このようなことを考えると、ガン検診はあまり意味がないと言える。ただし、一部のガンにおいては、検診による早期発見が大事なことがある。