医者は風邪を引いてもクスリを飲まない-2

 富家孝講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。
{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第3章 「老化」と「病気」は違うもの

医者は風邪を引いてもクスリを飲まない-2

風邪薬は完治薬ではなく、症状を和らげるだけの対処薬なのである。つまり、咳や鼻水を抑える効果のあるクスリである。現在の医学では、まだ風邪を完治させるクスリはできておらず、対処薬といっても、その多くはほとんど偶然にできたものなのだ。
そこで、風邪とはいったいどんな病気なのか?を知る必要がある。
残念なことに、風邪には病気としての明確な定義がない。わかっているのは、ウイルスが風邪を引き起こすことで、風邪を引き起こすウイルスは200以上もあるとされていることだけだ。
このウイルスによって、上気道(鼻から喉にかけての間)が感染症に冒された状態を風邪と呼んでいる。インフルエンザもウイルスによる感染だが、風邪に比べて感染力が強く、症状は風邪より重い。
風邪の3大症状とされるのが、「咳、鼻水、のどの痛み」の三つである。これらの三つが1~2日の問に同時に起きたら風邪だと診断される。この3症状を伴わないで、下痢をしたり、熱が出たりした場合は、医者は風邪以外の疾患を考える。
それでは、なぜ風邪薬は症状を和らげることしかできないのだろうか?
よく風邪で抗生物質をもらいたがる患者さんがいる。「先生、抗生物質を出してください」と、はっきり言われる患者さんがいるが、こういう方は大きな勘違いをしている。なぜなら、ウイルスには抗生物質はまったく効かないからだ。抗生物質が叩けるのは細菌(バクテリア)だけなのだ。
ウイルスは細菌より小さく、ヒトや動物などの細胞のなかに入り込んで増殖する。そのため、攻撃しょうとすると、ウイルスが入り込んだ細胞そのものを破壊してしまうのでクスリには手に負えない。抗生物質と同じような抗ウイルス剤というものがある。こちらは抗生物質が細菌を直接殺すのに対して、ウイルスが増えるのを阻止する薬である。抗ガン剤もこの抗ウイルス剤の一種なので、ガンそのものに直接効くわけではない。
このように、クスリだけでは病気は治らない。病気を治すには、私たちが持つ免疫力を高めなければならないのだ。つまり、老化が引き起こす病気は完治はしないと知っておくべきである。