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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}
第2章 死ぬとはどういうことなのか?
死んだら私たちの心はどうなるのか?-2
この番組で、立花氏は、「死ねば、心も消える」という結論に達している。よく言われる臨死体験も、単なる脳の活動としている。臨死体験ではまず「体外離脱」と呼ばれる現象が起こり、天井付近からベッドに横たわる自分や医者を見る。その後、トンネルのような場所を通って光輝く美しい世界へと導かれる。
しかし、これは実際の体験ではなく、脳内現象に過ぎないという。また、フォールスメモリー(偽記憶)と言って、ネズミの脳に実際にしていないことを植え付ける実験も紹介された。そして圧巻は、ウィスコンシン大学のジュリオ・トノーニ教授の意識研究の紹介だ。トノーこ教授は、これまで突き止められなかった脳内で意識(つまり心)が生まれるメカニズムを、現在、実証しっつある。
トノーこ教授の理論によると、脳の中には熱い・寒いなどの感覚に関する情報や、楽しい・悲しいなどの感情、過去の出来事の記憶など膨大な情報がある。これらの情報は複雑に繋がり蜘妹の巣のようになっている。このまとまりが意識だというのだ。つまり意識は、脳内の特定の部位、細胞にあるのではなく、神経細胞が複雑な繋がり方をして一つに統合されたときに生まれるというのである。これを、統合情報理論と呼ぶ。トノーニ教授は、これを脳内に微弱な電流を流すことで実証実験している。
複雑な繋がりこそが意識。もし、それが本当なら、鳥や動物、昆虫でも脳内には複雑な繋がりあるので、それに応じた意識があることになる。また、機械でも複雑な繋がりを持つもの(超コンピュータ)なら意識が生まれることになる。
つまり、複雑な繋がりが消滅すれば心も消えるのだ。結局、人は死ぬ。心も死ぬのである。私としては、医者という立場を離れても、人間はそれでいいのだと思う。