安楽死は本当に「自殺封助」なのか?-1


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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)」より。

安楽死は本当に「自殺封助」なのか?-1

2014年11月、アメリカのオレゴン州で、末期の脳腫瘍で余命半年と宣告されたブリ夕ニー・メイナードさんという女性(29)が、「自死宣言」通りに死亡したため、世界中で安楽死を巡る論争が巻き起こつた。彼女は、自身のフェイスブックで自死を明かしたため、日本でも大きく報道された。
しかし、これほ厳密に言うと尊厳死ではなく、日本で言えば「自殺封助」に当たる。
オレゴン州では、「オレゴン尊厳死法」という法律の下に、医師の手助けによる自殺(pAS‥physiciantassistedsuicide)が認められている。tだから、彼女はカリフォルニア州からオレゴンに転居して、自らの意思で死ぬことを選んだのである。
多くの方が安楽死について誤解しているが、安楽死には二通りある。一つは積極的な安楽死というもので、今回のケースのように医師が患者の意思を尊重して死ぬための薬等を与えるケースだ。もう一つは、患者の意思を尊重するのは同じだが、薬等の死に至る処置はせずに延命治療を止めること、つまり尊厳死である。
前者は、米国では今回のオレゴン州のほか4州が、世界ではオランダ、ベルギー、スイスなどが合法化している。しかし、日本ではこれを認める法律はない。なぜなら、医者が死ぬための薬を与えることは、「自殺を手助けした」とされるからだ。そうなると、現在
の刑法に触れてしまう。
実際、日本の医師の多くが、この積極的安楽死には反対している。それは合法化されていないという以前に、いくら患者さんの意思とはいっても、自らの手で他人の死期を決め、そのための処方をするのは、倫理観が許さないという理由からだ。
「安楽死と言うけれど、それを実行する医者の立場になつたら、とてもできるものではありません。倫理の問題もありますが、本来、医者とは命を救うのが使命で、その道もまた使命というのは矛盾しています」
と、私の知人の医者の多くが言う。そのなかには、こう言う医者もいる。
「生きる権利があるなら死ぬ権利もあると主張する人もいますが、積極的安楽死の合法化は、患者の権利ではなく、医者に死なせる権利を与えることですから、そんなもの欲しくありません」
この辺の問題は非常に難しく、私自身も迷っている。