食べられなくなって餓死するのが「自然死」-1

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)」より。

第2章 死ぬとはどういうことなのか?

食べられなくなって餓死するのが「自然死」-1

死が医者によって判定され、死亡診断書で確定するというのに、前述したように医者は死というものをよく知らない。とくに、老衰のような自然死については知らないと言っていい。疾患を待った患者の死しか目の当たりにしていないから、人は老いれば自然に死んでいくものなのに、病気を治す要領で延命治療を行ってしまう。
口から食べる力がなくなつているにもかかわらず、チューブをつけて栄養剤を投与し、呼吸する力がなくなつているにもかかわらず人工呼吸器で息をさせる。これらはいずれも、自然死に逆らう行為と言っても過言ではない。
「自然死とは、実態は”餓死”なんです。餓死という響きは悲惨に聞こえますが、死に際の餓死は一つも恐ろしくない」と、『大往生したけりや医療とかかわるな』(幻冬舎新書)の著者、中村仁一氏は言っている。中村氏は医師としてのキャリアの最後に特別養護老人ホーム常勤医となり、高齢者の死をたくさん看取ってきた体験を元にこの本を書かれているので、人間の自然死への見方は確かである。
中村氏は、「自然死は病気ではありません。過度の延命治療は死に行く人のためにはなりません」と言い、「大往生するためのいちばんいい死に方は自然死です」と、結論している。