はじめに 1 「人は思ったようには死ねない」

 

「死に方」格差社会
満足できる死を迎えるためには
富家 孝(ふけたかし)

はじめに 1

人は思ったように死ねない。

しかし、今後は 主体的に考えておかないといい死に方はできない。                                         医者を長年やってつくづく思うのは、                                             人は自分が思ったようには死ねないということだ。

若いときは自分が死ぬことなど考えもしないで、                                         患者さんの病気や死を見てきた。                                                     医者だから、死は身近だったが、死を意識したことはなかった。

それが、60歳を超えてからは、                                                  自分の死を次第に意識するようになり、いまでは、                                      どのように死んだらいいのかとよく考えるようになった。

私は医者としてはかなり特異な経験をしてきた。                                                   代々の医者の家に生まれた私は、                                              当然のように医大に進んで進学して医者になったが、                                   独立心が旺盛だったために                                                    開業医となり、いっときは病院経営者として                                         8つの病院やクリニックを切り盛りしていた。

しかし、                                                                   ビジネスの才覚はなく、あえなく倒産してしまい、                                      それからは医療にかかわるあらゆる仕事を経験した。

新日本プロレスのドクターをしたり、                                              さらに病院経営のコンサルタントや医師紹介業などもやり、                                この間、ジャーナリストとして日本の医療のあり方を考えて                                メディアの仕事を続けてきた。

そうしながら、数多くの本を書かせてもらったが、                                     これからの連載はこれまでの私の主張とは趣を異にしている。

なぜなら「死」がテーマだからだ。

{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

 

                                       つづく