医療費が払えない患者は病院を追い出されれるー1
それでは、国が自宅介護を強要し、医師もベッド数も足りなくなった社会では、なにが起こるのだろうか?
車いすや寝たきりになった老人を引き取って、自宅で介護できる余裕のある家庭は多くない。とくに老々介護となったら、在宅介護はほぼ無理といえる。
そんな中でベッド数が減ってゆくのだから、病院を追い出されたら、在宅介護ができない家庭は、介護付きの老人ホームか特養にいれるしかない。しかし、前記したように、老人ホームや特養は順番待ちのところばかりである。と、なると、お手上げになる。
「脱病院」への厚労省の医療方針変更を、朝日新聞は、今後の高齢者医療の姿は、「時々入院、ほぼ在宅」と書いた。これからは患者が自宅や施設で暮すのが基本となり、入院が必要でも極力短期間になるから、これは実にうまい表現だった。しかし、「時々入院、ほぼ在宅」できるのは、恵まれた家庭だけだ。介護付きの老人ホームか特養は、最低でも月20万はかかる。
こうなると、この費用負担ができない高齢者は、行き場がなくなってしまう。つまり、これからは、この章の冒頭で述べたように、「病院でも老人ホームでも死ねない。もしかしたら自宅でも死ねない」という現実が、私たちを襲ってくる。