日本人の8割りは病院で死んできた-4
たとえば、日本老年医学会は2012年1月に、「経管栄養や器官切開、人工呼吸器装置などの適応は、慎重に検討されるべきである。
すなわち、なんらかの治療が、患者本人の尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮すべきである」と、新しい立場表明を発表した。
「経管栄養」というのは、口から食べ物を摂ることが出来なくなった患者さんに対し、体外から消化管内に通したチューブを用いて流動食を投与する処置のことだ。これは主に「胃瘻(いろう)」で行われるが、これを「(胃瘻)など高度医療の投入は必ずしも最善の選択肢ではない」と言い切ったのだから、じつに画期的な路線転換だった。なお、「胃瘻」に関しては、別の章で詳しく述べさせていただく。
また、日本透析医学会も2013年1月に、終末期の患者家族が希望すれば透析の中止や開始の見合わせを可能とする提言をまとめた。
さらに、国の機関である社生保障制度改革国民会議は、報告書で死について言及し、次のような主旨のことを提言した。
「今後の医療のあり方は、医療提供者の側だけでなく医療を受ける国民の側がづ考え、なにを求めているかが大きな要素になる。超高齢社会に見合った{地域全体で治し、支える医療}が重要」
「医療側は、国民が納得し満足できる最期を迎えられるに支援すべきで、人間の尊厳ある死を視野に入れた{QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)を高める医療}を行うべきである」
「これまでの「病院完結型」の医療から{地域完結型}の医療への転換が必要」
などが提言に盛り込まれた。これは、ひと言でいえば「脱病院」ということになる。
つづく