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あくまで医学的に確定される死に方-1

富家孝講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。
「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)」より。

第2章 死ぬとはどういうことなのか?

あくまで医学的に確定される死に方-1

じつは私も、これまで100通以上の死亡診断書を書いてきた。書いてみればわかるが、人生の最期がこんなたった1枚の紙切れで終わるということに、たとえようのない虚しさを感じる。
それで思うのが、大学病院での解剖の虚しさである。世間一般の人はご存知ないかもしれないが、大学病院では、死亡診断書を書くにあたっては、なるべく解剖を勧めることになっている。どんなかたちで死亡しょうと、大学病院で死ねばあなたの死体は解剖されることが多い。これは、大学病院が診療行為とともに医療研究を行うという使命があるからだ。死因に関して言えぽ、解剖して初めてわかることもある。たとえば∵心臓疾患で死んだのに、胃に潰瘍があった、思いもよらない血管に疾患があったなどということはけつこうザラにある。なかには、解剖してみて初めて臓器にガンが見つかったなどということもある。
ところが、遺族のなかには、死後解剖を嫌がる方がいる。これは、遺族の気持ちとしては当然だと思う。
「なんで死んでほで身体を切るのですか? 耐えられません。やめていただけないでしょうか」と訴えられる。しかし、そういう気持ちは理解できても、大学病院の決まりなので、それを告げて同意してもらうほかない。


死んだら必ず必要になる死亡診断書-2

富家孝講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。
「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)」より。

死んだら必ず必要になる死亡診断書-2

たまにだが、「24時間以上たっているので死亡診断書は書けません」という医者がいる。
施設で訪問診療を受けているにもかかわらず、最終診療から24時間以上経過しているのでダメだというのだ。
しかし、これは医者のほうが間違っていて、医師法第二十条にある「受診後24時間」を誤解しているからだ。厚労省の医制局発行の「死亡診断書記入マニュアル」には、「診療継続中の患者が、受診後24時間以内に診療中の疾患で死亡した場合は、異常がないかぎり、改めて死亡診断しなくても死亡診断書を交付できる」とある。
よく動物は死期を悟ると姿を消すと言われている。とくに、象は死期を悟ると群れを離れて「象の死に場所」に行くと言う。しかし、人間は社会的動物であるから、自分ひとりで勝手に死んでいくことは許されないのである。


死んだら必ず必要になる死亡診断書-1

{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

死んだら必ず必要になる死亡診断書-1

日本では、人は死ぬと荼毘(だび)に付される。荼毘とは、死者を火葬にすることである。日本では火葬が代表的なので、このとき必ず死亡診断書が必要になる。つまり、私たちの死は死亡診断書をもって確定するのだ。
あなたは、これまでご自身の死亡診断書がどのように善かれるか、想像したことがあるだろうか? 死を想像しても、まさか、死亡診断書のような具体的なことを想像したことはないと思う。
たとえば、ガンで衰弱して自宅で死亡Lたケースでも、明らかに病死であることを証明できるものがないと、遺族はいらぬ疑いをかけられることがある。動けない高齢者に食事を与えずに死亡させたのではないかと疑われ、保護責任者遺棄致死等に問われる場合が考えられる。つまり、事前に受診している医者がいない、治療が継続中でない場合は、ほぼ確実に警察が入って「異状死」ということになってしまうのだ。
これは、死亡の因果関係を医者が十分に判断できないと考えた場合は、異状死とすると決められているからである。こうなると、遺体は警察に検視を受けることになる。
突然、心肺が停止して119番通報して救急車で病院に行った場合も、同じプロセスになる。検死後は監察医により、死亡診断書の代わりに死体検案書が作成される。
というわけで、自宅で死にたい、できれば自然におだやかに死にたいと願っていても、最終的には医者のお世話にならなければならいことを知っておいていただきたい。



{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}
第2章 死ぬとはどういうことなのか?

なぜ「老衰」で死ぬ人が減ったのか?

人は老いれば死ぬ。だから、ほぼすべての老いた死は「老衰」である。
ところが、第1章で触れたように、老衰は死亡原因全体のたった4・8%にすぎない。
厚労省の「都道府県別生命表の概況」によれば、老衰による男性の死因別死亡確率は全国平均で2・10%、同じく女性の死因別死亡確率は全国平均で6・29%である。
これは、、医療技術が発達したために、人が死んだ際にはほぼ必ず疾患が発見されるからである。つまり、医学的には疾患の病名を死因とするようになり、病気ではない老衰を原因としなくなってしまったからだ。そのため、いまでは平均寿命以上に生きた高齢者が、さしたる疾患が見つからずに死んだときにしか、死亡診断書に老衰とは書かなくなってしまった。
本来の死を考えたとき、一般的にはこれはおかしいと思うが、医者の立場ではこれが常識となっている。死亡診断書を書くとき、医者は「なるべく老衰と書かないように」という教育を法医学などの講義で受けている。
人の死はその形態によって何種類かに分類される.。自然死、病死、災害死、事故死、自殺、他殺などである。そして、医学的に見た死の原因は、死に至る基本的病態にしたが
って分けられ、具体的滋疾患名が死因とされる。         l
そこで、老衰に話を戻すと、これは自然死であるとして、疾痛などの原因がなく自然に死に至った「自然死」ということになる。
そこで思うが、多くの医者は人間が自然に死ぬということを知らない。医者は病院で、末期ガンや脳疾患などで死んでいく人しか見ていないので、自然に死んでいくということに関しては経験も知識もあまりないのである。
このことはかなり重要なことだと思うが、世間はそうは思っていない。この世界にはプロフェッショナルな職業がいっぱいある。いわゆるプロと呼ばれる人々がいる。
しかし、医者は病気のプロではあっても、死のプロではない。
だから、あなたがいくら自然に穏やかに死んでいきたいと願っても、多くの医者はそうさせてくれないと思ったほうがよい。また、死に関しては個々人の「死生観」が非常に大切と思うが、これに関しても医者はプロではない。
このことに関しては、後述するとして、まず、あせたが死んだとき、死亡診断書がどう書かれるから述べてみたい。


東京に住む高齢者は地方に移住せよー2

{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

東京に住む高齢者は地方に移住せよー1

移住候補地として挙げられたのは、函館、青森、富山、福井、岡山、松山、北九州など一定以上の生活機能を満たした地方都市だった。過疎地城は、移住先候補からは外された。しかし、観光地としても有名な別府や宮古島島などは入っていた。
この構想が発表されると、即座に候補地から反発の声が上がった。たとえば、和歌山県の仁坂吉伸知事は「移住者が所得をあげていたときの税金は全部、東京都に入っでいる。
それが地方に移らないと財政が維持できない。負担の押しっけで、東京のことしか考えて いない」と反発した。
高齢者の地方移住は、地方を「姥捨(うばすて)山」にする政策ではないかというのだ。
もし、あなたが雲に住んでいるとしたら、この先、病院にもホームに入れないからと、地方に移住するだろうか?
日本創成会議の提案は、いみじくも、今後の私たちの死に方が大いなる危機にさらされこれまで、私たちは、東京がいちばん便利で安心して暮らせるところと思ってきた。しかし、事実は逆で、歳をとったら東京は便利でも、安心して暮らすことはできないのである。まして、多くの人が望む理想的な死に方など、できようがないのだ。
「在宅介護」を促進し、「自宅死」をしてもらうという国の政策はけっしていい政策とは言えない。高齢者には過酷な政策である。
しかし、財政赤字でこのような選択肢しかなくなってしまった以上、私たちはそれを受け入れ、悔いなく死ねるように、いまから死に方を考えていくしかない。


東京に住む高齢者は地方に移住せよー1

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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

 東京に住む高齢者は地方に移住せよー1

 民間有識者でつくる日本創生会議(座長・増田覚也元総務相)は、2015年6月4日、驚くべき提案を行った。2025年、東京など1都3県では高齢化が進む。そうなると、介護施設が13万人不足するので、東京圏に住む高齢者は、施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域に移住すべきだというのだ。これを創生会議は「東京圏高齢化危機回避戦略」と題して発表したのである。
創生会議によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県では、今後10年間で75歳以上の後期高齢者が175万人増えるという。その結果、高齢は病院や施設を奪い合うことが起こる。それを回避するためには、高齢者の地方移住や外国人介護士の受け入れ、大規模団地の再生、空き家の活用などが必要であるというのである。


 TPPによって「混合医療」が解禁されるとー3

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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

 TPPによって「混合医療」が解禁されるとー3

 これらは、安全性や有効性が確認されるまでは、保険が適用されない。しかし、効果が認められれば保険適用の対象となり、そうなれば、医療費も全額負担から3割負担に下がる。しかし、混合医療になると、こうしたメカニズムが働かなくなる。先進治療は先進治療のまま。高額のままにされるのだ。
当然のことながら、自由診療の病院が増え、その結果、全体の医療の質も低下し、病院による患者の選別も行われるようになる。おカネのある人とない人では、受けられる治療に決定的な差がついてしまうのである。いつでも、どこでも同じ治療が受けられる国民保険制度は骨抜きにされる。
昔は、いまでは一般的に行われているCT検査もMRI検査もなかった。腹腔鏡手術もなかったので、臓器のガン手術はほとんどが開腹手術
だった。しかし、これらは保険適用になって普及した。しかし、混合診療が解禁になれば、こうした最新の治療は帰って、一般国民のものにならなくなる可能性が高まるのだ。


 TPPによって「混合医療」が解禁されるとー2

 富家孝(1)

  謹 賀 新 年

      富家 孝

 

{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

 TPPによって「混合医療」が解禁されるとー2

 ところが、TPPが成立すると、ほぼ間違いなく混合診療が解禁される。つまり、保険適用の診療と適用外の診療を同時に受けることができるように成る。3割負担診療と全額負担診療を組み合せることが可能になる。
これgは一見すると、患者にとって有利になるように見えるが、医療の市場化が促進されるので、長期的には不利に働く可能性が大きいのである。また、医者にとっても市場原理の中で競争が激しくなるので、医師会は大反対している。なぜなら、腕の悪い医者、評判の悪い医者は稼げなくなってしまうからだ。
では、なぜ混合医療は私たちに不利なのだろうか?
それは、現時点で保険適用外の診療のなかには、将来保健適用になる可能性のある診療もあるからだ、「先進治療」と呼ばれているガンの治療法などが、これに該当する。


TPPによって「混合医療」が解禁されるとー1

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{富家孝著・SB新書「死に方」格差社会(本体800円)より}

 TPPによって「混合医療」が解禁されるとー1

ここ数年、アメリカや日本などの環太平洋諸国で提携交渉が進められてきたTPP(環太平洋提携協定)。これが実現すると、じつは、私たちの死に方も大きな影響を受ける。国民保険制度も大きく変質する。
TPP関税や規制の完全撤廃を目指しているため、日本の医療制度もアメリカ型に近づくのである。つまり、医療の市場化である。
まず、現愛の保健制度下では、実質的に「混合診療」は選択できないようになっている。混合診療とは、公的健康保険の対象となる治療法と、対象にならない治療法を併用することをいう。日本の保険制度では、厚生労働大臣保険の対象となる治療法、クスリを限定し、その価格を一定している。
その一方で、健康保険の対象にならない治療法、クスリは「自由診療」と呼ばれ、これは患者が全額自己負担することになっている。しかし、これを組み合わせると、健康保険が適用され3割負担の診療もまた全額が自己負担になってしまうので混合診療は出来ないのと同じなのである(ただし例外として、入院時の差額ベッド代や、高度・先進治療を受けた時の医療費などは、保険診療との併用が認められている)


医療費が払えない患者は病院を追い出されれるー2

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SB新書
「死に方」格差社会
著者・富家孝
発行・SBクリエティブ株式会社
定価・800円・本体+税
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 医療費が払えない患者は病院を追い出されれるー2

 2007年、マイケル・ムーア監督の「SICKO](シッコ)という映画が話題になった。
この映画は、医療費が払えなくなった病院から見放され、路上で死んでゆく姿を描いたドキュメンタリーである。もちろん、これはアメリカの話だが、日本がやがてこうならないとは誰もいえないのではないだろうか。
この映画は、交通事故で足をけがした男性が、裁縫針を使って自分で傷を縫うシーンから始まる。この男性は接合手術の費用が、中指6万ドル(1ドル120円として約720万円)、薬指1万200ドル(約1440円)と告げられたため、自分で縫うことを選択したのだ。
アメリカには日本のような国民皆保険がないため、無保険者となると、お金を持っていなければ、病院で治療を受けられない。おカネがないと分かると、病院側は力づくでも患者を追い出す。映画で描かれていた患者は、肋骨や鎖骨が折れたまま傷も治っていないのに、裸足で病院で寝てたままの格好で、貧民街にゴミのように捨てられていた。