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死を意識し始めたら医者に頼らない。

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第3章 「老化」と「病気」は違うもの

死を意識し始めたら医者に頼らない。

このように見てくると、ガンや生活習慣病は治すということより、どうやって付き合っていくことのほうが大事だということがわかっていただけたと思う。
糖尿病にしても高血圧にしても、クスリや治療に頼りきることのほうが危険だ。つまり、近代医学はなんでも治してくれるという誤った考え方を持って、老後を過ごしてはいけない。
人生の下り坂に差しかかっているのに、自分の健康を医者に丸投げしてしまうと、あなたが望むような死に方はできない。
多くの医者は自身の専門分野に基づいて、肝臓なら肝臓、脳なら脳と、体の一部分を見ているだけである。そのため、病気の根本原因を探るというアプローチを取らないことが多い。
まして、老化という大きな見地から病気を捉え、患者さん個々に合ったオーダーメードの治療を施そうとはしない。というか、いまの医療システムではそれができない。
しかも、真面目な医者ほど、病気ならなんでも治そうとする。それが医者の使命だから仕方ないが、そうした治療にべルトコンベア一式に乗っかる意味を考えたほうがいい。
私は歳をとったら、どこかが悪くなるのは当然と考え、予防検診を受けながら、なんらかの病気が発症してもあせらないことを勧めている。病院に行って医者にかかれば治るという思い込みがあるから、あせってしまう。
医者に頼る、クスリに頼ることになる。もちろん頼ることは大事だが、本当に頼るべきなのは自分自身だということを知っていただきたい。
人間の体には自然治癒力が備わつている。免疫力がある。これをなんとか低下させない努力が必要だ。そのためにもっとも重要なことは、十分な休養である。十分な栄養を摂り、体を安め、そしてぐつすり眠り、回復したら適度な運動をする。健康で長生きするための基本だ。このことに関しては、第6章で詳述する。
繰り返すが、多くの病気は老化による。
人間は老化するから、病気になりやすくなるのであって、その逆ではない。したがって、60歳を超えて死を意識するようになったら、生活習慣病にかかったり、ガンなどの疾患が発見されたりしたときは、それは病気ではなく、老化の進展だと考え、医者にかかったとしても、それを治すというより、できるかぎり共生して長生きしていく道を選んでほしい。


{ポリーブ、結石}医者に勧められてもほとんどの場合は取る必要はない。

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの
{ポリーブ、結石}医者に勧められてもほとんどの場合は取る必要はない。

検診を受けたとき、よく発見されるのが、ポリープである。たとえば、会社や自治体の集団検診、人間ドックなどで、「胃にポリープがありますね」「大腸にポリープがありますね」などと言われたことのある人はかなり多いのではないだろうか。
そんなとき医者は「念のため取っておきましょう」と必ず言う。
しかし、たいていの場合、そんなことをする必要はない。
ポリープがいずれガンになる可能性があるからというわけだが、胃のポリープの場合ほぼその可能性はないと思っていただいていい。
ただ大腸の場合は、その可能性はある。それでも5ミリ以下の場合は取る必要はほぼないと、私は思っている。
なぜなら、すべてのポリープがガンになるわけではなく、小さなポリープなら、ガンにならないまま一生を終えると考えられるからだ。
しかし、いまは内視鏡による切除(内視鏡的ポリベタトミー)が一般化したため、医者はなんでもかんでも取ろうとする。
胆石の場合もまた同じだ。胆石の場合、石のできる場所によって胆管結石、胆嚢結石、肝内結石の三つに分類されるが、もっとも多いのは胆嚢結石で90%以上の胆石は胆嚢結石である。
この胆嚢結石は、胆管結石と比べると、ほとんど無害である。胆管の場合はたまに黄痘などの症状を引き起こす場合があるが、胆嚢結石の場合は症状がなければ手術する必要はない。
胆石を取らないと心配する人がいるが、胆嚢結石を放置しておくとどのくらいの確率で症状が出るかははつきりした統計がない。そこで、痛くもないのに医者に勧められただけで、手術をするようなことは避けるべきだ。
というのは、どんな手術でも体に負担がかかり、免疫力を低下させるからだ。


{ぜんそく}いったんぜんそくになったら、一生付き合う覚悟を。

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-6

{ぜんそく}いったんぜんそくになったら、一生付き合う覚悟を。

ぜんそくの原因は、外因性と内因性がある。外因性の場合はアレルギーからきているが、内因性の場合はなんらかの免疫障害である。
ぜんそく(喘息) になると、「ゼーゼー、ヒユーヒユー」といった喘鳴(ぜんめい)や、激しい咳が出て、呼吸が苦しくなり、発作も起こる。
これは、呼吸をするときの空気の通り道(気道)が、アレルギーなど炎症によって敏感になり、けいれんを起こして狭くなってしまったからだ。
日本では、子どもの5~7%、大人の3~5%がぜんそくに罹患(りかん)していると言われている。
内因性で1度発症した気管支喘息に関しては、絶対に治らない。クスリを使い発作が起きなくなって、治ったと思い治療をしなくなる人もいるが、これは治ったのではなく、たまたま発作が起きなくなっただけである。
つまり、ぜんそくは一生付き合わなければならない病気だ。
アトピー性皮膚炎の患者さんのなかに、数人に1人ぜんそくになり、気管支拡張剤を飲んでいる人がいる。気管支拡張剤というのは、いわゆるステロイドだが、これは副作用が大きい。朝晩飲み続けると、腎臓をやられてしまうことがある。また、気管支拡張剤というのは交感神経を刺激して気管支を拡張するものだから、心臓を過度に刺激してしまいかねない。そうすると、必ず不整脈が出る。
つまり、抗ガン剤と同じように、副作用が大きい。


完治しない病気とどう付き合うのか?-5

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-5

{リュウマチ}民間療法も多いが、クスリはほとんど痛み止めであって治療薬ではない

関節リユウマチ(RA)は、全身の関節に起こる慢性の炎症性疾患。初斯症状は、たとえば指の関節にこわばりが起こることで、これは朝方に起こるが、すぐに収まる。しかし、こわばりの時間がだんだんと長くなっていき、関節が痛くなり、整形外科に行くと、たいていの場合、関節炎と言われる。
そうして、湿布とりハビリをするように言われるが、痛みはさらに強くなり、指が曲がらなくなったりする。
こうなと、血液検査や尿検査をされてリユウマチと診断される。
リユウマチは膠原病の一種で、はつきりした原因はわかっていないが、一種の免疫障害である。だから、治すことはできない。
したがって、クスリは主に痛み止めであり、それで痛みをコントロールしながら、病気とうまく付き合っていくしかない。
民間療法も数多くあるが、それも痛みを緩和させるだけで治るものではない。


完治しない病気とどう付き合うのか?-4

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-4
{肝炎・肝硬変}A型肝炎は別として、B型肝炎の半数、C型肝炎の約1割の人以外は治らない。

肝臓が悪くなると、発熱、黄痘、全身倦怠感などの症状が出る。こうした肝臓病は、主に肝炎ウイルスの感染が原因で起きるが、日本では肝炎ウイルスのうち、A、B、C型が多い。
A型肝炎は1度かかると永久免疫ができ、再感染することがない。つまり、安静にしていれば自然に治るので問題はない。しかしB型は、たとえば100人かかると50人は自分の抗体をつくつて治してしまうが、残りの50人はこれができず完治は望めない。B型肝炎は、経口感染や空気感染することはなく、原則として個人から個人へ血液感染する。感染してもまったく症状が出ない不顕性感染の人も70~80%いると言われているが、約10%の人が慢性肝炎へと移行してしまう。
この場合、治療薬は大きく分けて二つある。一つは肝炎ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤(インターフェロン)、もう一つは肝臓の炎症を抑える肝庇護薬だ。
C型肝炎もまた血液感染だが、B型より抗体をつくる人が圧倒的に少なく、こちらは約1割に過ぎない。その結果約9割の人は、早くてほ年、遅くてお年で肝硬変になる。C型肝炎ウイルスは感染力が弱いので、単に血液に触れたぐらいでは感染しないが、感染しても気づかないことが多く、そのまま7~8割の人が慢性肝炎に移行してしまう。こうなると、自然治癒は極めてまれで、放置しておくと初期肝硬変から後期肝硬変、肝ガンに進行してしまう。
慢性肝炎になると、体のだるさや吐き気、食欲不振などの症状が出るが、初期には自覚症状はほとんどないので、要注意だ。慢性肝炎と診断された人の大半は、検診などで偶然見つかったケースが多い。症状が出てからよく使われるのが、インターきロン。最近のインターフェロンは改良されてよくなったが、初期のインターフェロンは、うつ病や糖尿病になるという副作用が強かった。
インターフェロンは肝炎ウイルスの増殖を抑え、ウイルスの核酸を最終的に破壊する。
しかし、人によってはまったく効かず、やり続けたために溶血性貧血になって死んでしまった例が報告されている。
とはいえ、C型肝炎の治療薬はどんどん進歩しているので、慌てずに病気と付き合っていくことが肝心だ。


完治しない病気とどう付き合うのか?-3

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-3

{高血圧}降圧剤は血圧を上がらなくするだけ。あくまで治すためではない。

生活習慣病の代表とされる高血圧。しかし、血圧が正常値より高いということがはたして病気だろうか?
とはいえ、高血圧の状態を放置していると、動脈硬化を促進し、脳卒中や心疾患、あるいは慢性腎臓病などの重大な病気につながる恐れがある。だから、医者ぼ「このまま放置しておくことは危険です」と言って、降圧剤を出す。
しかし、健康診断で高血圧が発見されても、とくに異常な数億でないかぎり、あまり問題はない。
私としては、症状がたいしたことがなければ、食生活を変えたり、適度な運動をしたりと生活習慣を改善したほうがよほどいいと思っている。問題は、そうしても数倍の高さが慢性化してなかなか下がらない場合だ。そういった場合は、やはり降圧剤に頼る
しかない。
ただし、降圧剤は単に「これ以上血圧が上がらないようにするためのクスリ」で、高血圧体質そのものは治らない。むしろ、歳をとれば血圧が高くなるのが自然だ。
高血圧患者さんに多いのは、降圧剤を服用して数値が下がり出し、体調もよくなると、「クスリが効いた」と思って服用を止めてしまうことである。そうすると、また数値が上がるわけで、結局、一生クスリに頼る生活になる。
高血圧の方は、クスリ一辺倒にならず、日常生活を無理なく送れるように生活を改善することがいちばんだろう。


完治しない病気とどう付き合うのか?-2

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-2

糖尿病になると、インスリンを分泌する膵臓のベータ紳胞が死んでいく。もちろん、再生機能が失われないかぎりは大丈夫だが、糖尿病患者の場合は機能が失われるスピードのほうが速く、インスリンが足りなくなる。
そこで、インスリン注射が必要となり、これを始めると、ほぼ一生の間続けていかなければならなくなる。
腸内のインスリンを出すスイッチとは、インクレテンという腸のホルモン。血糖値が上がってからスイッチが入る膵臓のスイッチよりも、食物がスイッチを押す腸内のスイッチのほうが反応が早く、そのスイッチを増やすことができるのが、バクテロイデスという腸内細菌なのだという。
したがって、バクテロイデスを腸内で飼って、野菜を摂取することで血糖値を低くしていけるという。もちろん、それだけで糖尿病が全般的に改善されるわけではないが、こうした新しい治療法を取り入れることでインスリンの分泌量を適正に保つことは可能だ。
最近は、IT技術が治療にも取り入れられている。たとえば、iPhOneによって、患者の血糖値を正確にコントロールできるデバイスの開発も行われている。これは、常にiPbOneが患者の血糖値を測定し、1日で注射するインスリンの量を計算できるというも
のだ。こうした治療法の進化が、この先、糖尿病患者の負担を軽くしていくだろう。


完治しない病気とどう付き合うのか?-1

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

完治しない病気とどう付き合うのか?-1

ガンと同じように、老化として付き合わなければならない病気は多い。これらの病気は、いくら病院に通おうと完治はしないので、治療はすべて対症療法となり、死ぬまでの問、上手に付き合っていかなければならない。
最近では手術で治す方法も。発症しても症状を抑えていく方法が次々に登場しているこれまで薬物治療が中心だった糖尿病の新たな治療法として、最近、世界的に注目されているのが外科手術である。これは、十二指腸をバイパスして胃と小腸とをつなぐ手術だ。
すでにアメリカでは、手術を受けた糖尿病患者の8剖以上で血糖値が正常になり、体重も減少したという報告があり、日本でも行われるようになつてきた。
また、いままでは常識とされた「運動・薬・食事制限」とはまったく別の「食べて改善」する治療法も登場している。

NHKの『ためしてガツテン』は、これまで10回も糖尿病をテーマとして取り上げ、その都度、最新の情報を視聴者に提供している。2015年6月10日の放送では、「食べて糖尿病大改善!医師も驚がく最新ワザ」として、糖尿痛を改善する腸内細菌を増やす方法を紹介していた。
それによると、インスリンを出すスイッチが腸内に元から存在し、野菜を食べることでそのスイッチを増やすことができるという。
糖尿病とは、膵臓でつくられるインスリンというホルモンの分泌不足により、慢性的に高血糖になった状態を指す。高血糖が続くと、腎臓病や網膜症、神経障害などの合併症が起きる可能性が高まる。そこで、糖尿病治療は、できるだけ血糖を正常に近い状態に保つことを目的としてきた。


ガン治療における「治癒」「完治」「寛解」の違い-2

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

ガン治療における「治癒」「完治」「寛解」の違い-2

ただし、この状態では、まだ再発の危険性を否定できない。
抗ガン剤を用いた治療では、症状は改善されたが検査ではまだ一部に異常が残る場合に「部分寛解R)」、症状が消えて検査でも異常がなかった場合を「完全寛解(CR)」と呼んでいる。
「完治・治癒」と言えるようになるには、治療を終えてから最低でも5年間で再発が見られないことが必要で、そうなって初めて、一般的に 「ガンが治った」と言えるのだ。
ガンに関して次の第4章で詳しく述べるが、ガンになったら「とうとう老化がやっできた」と思い、どうやって付き合っていくべきかを考えるべきだ。手術で完全に治ると信じ込むのは間違いである。
70歳を前にした私の友人の一人は、「できるならガンで死にたい」と言っている。その
理由は、よほど後期でなければ、「死ぬまでに十分な時間があり、いろいろなことを整理できるから」と言う。


ガン治療における「治癒」「完治」「寛解」の違い-1

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第3章 「老化」と「病気」は違うもの

ガン治療における「治癒」「完治」「寛解」の違い-1
このように、風邪だけを見ても、痛気を治すことには限界があるのだから、老化が引き起こす病気に関しては、「完治は無理」ということを前提にして考えていかなければならない。
私は、60歳を超えて発症した病気は、ほぼ老化の兆候と考えるようにと、患者さんに言っている。
そうして、自身の老化と真剣に向き合うことが、いい死に方をする道であるということを提唱している。
とくに、ガンの場合は、「完治」ということはほぼありえない。
ガンの治療を行った場合、その後の経過として、医者の問では次の三つの表現が使われる。「治癒」「完治」「寛解(かんかい)」の三つである。
このうち、「完治」と「治癒」はほぼ同じ意味だが、発見が遅れた進行ガンでは、こうなることはほとんどありえない。また、ガンの種類によっては「寛解」が最大限の治療結果ということもある。
「寛解」というのは、一般的に病状が落ち着いており、臨床的に問題がない程度になったことを言う。