投稿者「花見 正樹」のアーカイブ

「レセプト」の水増しと「差額ベッド」押し込み--2

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第7章 信頼できる医者の探し方、選び方

「レセプト」の水増しと「差額ベッド」押し込み--2

そこで、今日までレセプトの電子化、つまりオンライン請求に一本化することが進められてきた。しかし、日本医師会が抵抗し、今日まで完全なオンライン化は実現していない。
つまり、世界各国がこうしたことをほぼオンライン化しているのに対して、日本ではいまだに約8000人の審査員が請求書に目を通すという時代錯誤の方式がまかり通っている。
日本の診療報酬の審査は、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)と国民健康保険団体連合会(国保連)の2団体がほぼ独占している。この2団体は、じつは国や自治体からの天下り組織である。つまり、完全オンライン化が実現してしまえば、大幅な人員削減を行わなければならをい。
っまり、医師会、厚労省は同じ船に乗っていて、自分たちの利益しか考えていないことになる。そして、そのツケは患者に回されているのである。
よく患者さんから聞くのは、たとえばこんな話だ。
「毎月通っている病院があるのですが、今月の医療費が高すぎるので、おかしいなと思って医療費明細書を確認すると、やってもない検査項目が加算されていました」
また、勤務医からも「うちの病院は事務局ぐるみで不正請求をしている」という話も聞かされる。
前記したように、医療機関は2010年度の診療報酬改定により、領収書のほかに「診療情報明細書」の発行を義務づけられた。しかし残念ながら、患者側がとくに要求しないと、項目がない簡易領収書を平気で出してくる病院がいまだにある。そこで、病院では必ず明細書と領収書をもらうことを忘れないようにしていただきたい。


「レセプト」の水増しと「差額ベッド」押し込み--1

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第7章 信頼できる医者の探し方、選び方

「レセプト」の水増しと「差額ベッド」押し込み--1

カネの亡者の病院では、「検査漬け」「クスリ漬け」はまだましなほうで、保険料の「不正請求」もよく行われている。不正請求というのは、ひと言で言えば「架空請求」である。
つまり、処置してもいないことを処置し、出してもいないクスリを出したように見せかけることだ。
こうした医療処置は「レセプト」(診療報酬明細書)に記載されるが、いまのところ、一部をのぞいて医者側にこれを開示する義務はない。ただし、患者本人や家族は開示請求が可能だから、このレセプトの開示を求める患者も多くなり、「診療報酬明細書」を領収書といっしょに出すことが義務化された。その結果、不正請求は減ったとされるが、まだまだ水面下では続いている。
痛院による不正行為は、レセプトだけではない。患者の無知をいいことに、「差額ベッド」に押し込んでしまうということも平気で行われてきた。健康保険の効かない自己負担のベッドを差額ベッドと呼ぶのは、みなさんもご存知と思う。
この差額ベッドに関しては、使う場合には、病院側は患者本人にあらかじめ承諾を得決まりになっている。ところが、それをしない病院が後を絶たず、退院時に患者との間でトラブルになるケースが多い。カネの亡者の医者ほど、患者が気がつかなければいいと思っていて、平気でこれをやるのである。
医療費をめぐる不正がメディアでも大きく問題視された2007年、厚労省はあるデータを発表した。それによると、2006年の1年間で、124の医療機関が不正請求を摘発されて監査を受け、歯科医師24人、医師17人が保険医登録を取り消されている。また、
そこまでいかなくても、個別指導を受けた医療関係者は、なんと約7000人に上った。
そこで、こうした不正を防ぐために、厚労省では2007年から診療報酬の不正請求対策として、架空請求や水増し請求などの不正を摘発する「医療Gメン」と呼ばれる指導医療官を増員した。
じつは、不正請求を防ぐのはレセプトを電子化してしまえばいい。おそらく、全部電子化してしまえば、不正はずっとやりにくくなり、不正があれば容易に発見できるはずだからである。


病院の約7剖が赤字という現実の意味-2

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第7章 信頼できる医者の探し方、選び方

病院の約7剖が赤字という現実の意味-2

病院を倒産させた後の私は、多額の借金を抱えた。上の借金を返済するために、その後はなりふりかまわぬゲリラ的な仕事もこなし、そうしたなかで日本の医療を常に考えてきた。そうしてみて思うのは、医者の世界にも、世間一般と同じようにオモテとウラがあることだ。ただし、医者の世界のオモテとウラのギャップは、ある意味で世間一般のオモテとウラより大きい。それは、医者というものが世間からの尊敬と信頼で成り立っている職業だからだろう。
簡単に言うとオモテがどんなにいい先生であろうと、ウラは「カネの亡者」という医者がいる。カネの亡者の医者にかかってしまうと、治る病気も治らない。かえって悪化してしまったりする。


病院の約7剖が赤字という現実の意味-1

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第7章 信頼できる探し方、選び方

病院の約7剖が赤字という現実の意味-1

 

日本の病院の約7割が赤字経営である。地方の多くの病院は自治体などからの補填がないと、経営が成り立たなくなっている。また、町医者、いわゆる個人病院も経営がうまくいっているところは少ない。
そんななか、多くの医者たちは真面目に仕事をしている。最近は病院に所属しないフリーター医者も増えたが、それでも日本の医者は本質的には真面目だ。ただし、真面目だということは仕事を教えられたとおりにこなすことにつながるので、それが個々の患者さんにとって弊害をもたらすことも多い。
前記したように私は「間違いだらけの医者選び」という講演でよく地方に出かけるが、そうしたときつくづく思うのが、多くの方が、意外と医者が本当はなにをしているのかを知らないことだ。
日本人は真面目だから、みなさん、医者を尊敬し、信頼している。医者は先生だから、間違ったことはしない。病気を必ず治してくれると信じて病院通いを続けている。つまり、ある意味で、ご自身の健康を医者任せにしてしまっている人がほとんどである。
しかし、医者から言わせていただくと、多くの医者は真面目だとしても、なかには信頼できない医者もいるということだ。つまり、単に医者だからといって全面的に信頼してはいけない。
そこで私自身の話をさせていただくと、私はかつて病院を経営していたことがある。それは、1980年代前半のことで、当時は景気がよかったから、私はいけいけドンドンだつた。それで、老人向け病院を3軒、歯科医院を2軒、クリニックを2軒、接骨院を1軒
と、8軒もの医療機関を次々にオープンさせた。
しかし、いま思うと私には経営者としての才覚がなかった。いくら景気がいいとはいえ、それは過剰投資で、その結果、経営に行き詰まり、最終的に病院を潰してしまった。
当時のことを思うと、私はとてもいい医者だったとは言えない。病院の経営ばかりに頭がいっていて、患者さん個人のことなど二の次だった。だから言えるが、病院に行くときは、その病院の経営状態がどうなのかを知っておくことも極めて重要だ。


「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-2

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第7章 信頼できる探し方、選び方

「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-2

つまり、患者さんが治らずにリピーターになつてくれたほうが病院経営は安定する。現代において「必要な医療以外はしない」は神話化している。つまり、患者さんの病名を突き止めて完治させることは、医者自身の首を絞めるのである。
とすると、「わからない」と言って、専門医を紹介してくれる医者が、もっともいい医者だということが、おわかりいただけると思う。
世の中には素直に「わからない」と言える医者は多くない。とくに、最高学府の医学部を出ていたりすると、この言葉はなかなか言えない。だから、私は医者を選ぶときは、学歴よりも、経験数を重視すべきとも言っている。自分の専門分野の臨床経験が豊富な医者が、いちばんである。医者は患者によって鍛えられるので、どれほど多くの患者と接してきたかによって、その価値を判断すべきだ。
経験値が豊富な医者は、患者さんの目を見て話す。パソコンに向かいきりで、検査データばかりを見ている医者はやめたほうがいい。また、3種類を超えるクスリを出す医者も勧められない。
自分の範囲を超えていたら、素直に「わからない」と言い、その場で専門医や大病院のしかるべき診療科に連絡を取ってくれる。そういう医者こそ、あなたのかかりつけ医にすべきだ。


「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-1

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第7章 信頼できる探し方、選び方

「わからない」とはつきり言う医者は信頼できる-1

私がよく言っているのは、まず近所の町医者に行ったら、その医者の人間性をチェックする。そして、ある程度信頼できるとなったら、きちんと「私と私の家族の医療問題について、相談に乗ってくれますか?」と申し出ることを勧めている。この申し出に「はい」と答える医師を持つのと持たないのでは、老後の人生は大きく変わる。
さらに、これと思った医者を味方につけるには、なんでもいいから誉めまくることである。服装でも身につけているものでもいいから誉めることだ。医者はプライドが高いので、もっともおだてに弱い人種である。また、付け届けも有効だが、これを奨励するのは問題があるので、詳しくは書けない。ただ、医者は贈り物が大好きだということは知っておいたほうがいい。こうして、まずはかかりつけ医をつくつておくことである。
では、医者の人間性を見るにはどうしたらいいだろうか?
私がもっとも重視しているのは、「わからない」とはつきり言ってくれる医者がいちばん安心できるということだ。医者は万能ではなく、それぞれ専門分野が違う。にもかかわらず、町医者のなかには、患者を診療報酬の点数としか見ていない医者が多く、どんな症状を訴えても、こうした医者は「とりあえずこれで様子を見ましょう」と、クスリを出すだけだ。それも、クスリの点数が多い。
たとえば、ある内科医は腹痛を訴えてきた60歳代の女性患者に何種類かの調整剤や栄養剤を出すことだけを繰り返した。もちろん、レントゲン検査、血液検査は毎回した。しかし、「異常がない」と言われるので、その女性患者は我慢し続けた。女性の場合、我慢強いのがアダになることが多い。この方もその典型だったが、いっこうに改善しないので、ご自分からツテを頼って婦人科に行き、精密検査を受けた。結果は、卵巣嚢腫。かなり肥大化していたので、緊急手術となり一命をとりとめた。
町医者でも大病院でも、収入は医師が行う医療行為からしか得られない。事務員の給料も病院の賃貸料、光熱費、設備投資の費用も、全部そこから出ている。したがって、ある月に、来院患者数、薬の数、検査の数などが少なくなると、たちまち減収になる。


長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-2

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第7章 信頼できる探し方、選び方

長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-2

こうした点は改善されると思うが、単に診察、治療をしてくれるだけでなく日頃の健康にも留意してくれたり、なにかあれば迅速にほかの専門医を紹介してくれたりしなければ、本当の主治医とは言い難い。
つまり、近所のかかりつけ医にしても主治医にしても、問題となるのは医者の質である。
この例のように専門医にもヤプ医者はいる。
とくに日本の場合、専門医と言っても、その認定証は専門学会に申請すればほぼ誰でももらえるので、本来の専門医とは言い難いからだ。
このように、かかりつけ医・主治医制度が成り立つためには、医者の質と技術が高くなければならない。結局、かかりつけ医・主治医の選び方次第で「死に方」も決まつてしまうかもしれないのだ。若いうちはいいが、歳をとるにつれて体の不調は多くなる。そうした時に、これまでと同じようにいsy通いを続けるだけでは、いざというときになにが起こるかはわからない。
だから、私は、日頃から医者にかかる機会があったら、その医者をよく観察、チェックすべきだと言い続けてきた。そうして、これまで「間違いだらけの医者選び」というテーマの本を何冊か書き、そうした内容の講演も続けてきた。高齢化社会になり、この間題はますます切実になっている。
私の講演後、出席された方々のお話を聞くと、医者への不満が充満している。たとえば、「診察がおざなりでですぐ終わる」「とりあえず様子を見ましょうとしか言ってくれない」「いつもクスリの量が同じ2週間分」「治療の方針をはつきり教えてくれない」など、きりがない。
とくに高齢の患者さんが欲しているのは、「なにかあったときに緊急対応してもらえるか」「頼めば時間外でも診療をしてもらえるか」「往診をしてもらえるか」「電話やメールなどで診療してもらえるか」などだ。
はっきり言うが、こうしたことに対応できる医者は少ない。現在の日本の医療システムでは、ただでさえ忙しい医者がそこまで対応できることは不可能に近いからだ。
しかし、そうは言っても、これからはかかりつけ医、主治医を持たなければ、いい老後生活は送れない。健康に自信があり、これまで大きな病気一つしないで老後を迎えられた人は別として、病気がちの人はとくにそうだ。


長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-1

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第7章 信頼できる探し方、選び方

これからは「主治医をつくれ」と国が提唱-3

厚労省の「かかりつけ医・主治医制度」は、こうした仕組みの日本版と言えるもので、これを受けて最近では、自治体や医者の団体が「かかりつけ医のいない方にかかりつけ医となる医師を紹介いたします」というキャンペーンを始めている。「往診(訪問診療)が必要な方には往診可能なかかりつけ医を紹介いたします。また、すでにかかりつけ医のいる方でも、異富診療科の医師が必要とをつたとき、専門医を紹介させていただきます」などと、じつに親切きわまりない。

長く診てもらつてきただけでは主治医とは言えない-1

しかし、いくら紹介してくれるといっても、この制度には問題がある。それは、かかりつけ医、主治医を待ったからといって、ほたしてその医者が信頼に足る医者かどうかわからないということだ。
かかりつけ医は、近所にかかりつけの町医者がある場合は、頼めば引き受けてくれる可能性はある。また、自治体などのサポートで見つけることは可能だ。しかし、主治医となると、長患いをしていて専門病院に通院を続けていたとしても、なかなかつくれるものではない。
こういう例がある。ある糖尿病患者さんは、10年にわたり専門病院に通院して、そこで担当医に診てもらつていた。だから、その医者を自分の主治医だと思っていた。
ところが、あるとき普段と違う体の不調を訴えたにもかかわらず、その担当医はなにもしてくれなかつたので、別の大病院で検査を受けた。すると、末期の胃ガンと診断され、すぐに手術を受けたにもかかわらず、半年で亡くなってしまった。
ご遺族は「ずっと同じ医者にかかり、その人を主治医と思っていたのに納得がいかない」と言うのである。
この例が示すのは、単にかかりつけだけでは、主治医とは言えないということだ。


これからは「主治医をつくれ」と国が提唱-2

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第7章 信頼できる探し方、選び方

これからは「主治医をつくれ」と国が提唱-2

日本では保険証1枚で、どの医療機関にも自由にかかることができる。この結果、軽症者も重症者も地域の中核になる大病院に集中してきた。しかし、今後はこれをなくさないと、高齢化で年々増える高齢者と医療費の増加は抑えられないと国は考えたわけだ。
ただし、いくらそうしろと国が国民に言っても、言うだけではいまの体制は変わらない。
そこで、厚労省は、病床数が200床未満の病院や診療所の医師が、高血圧、糖尿病、脂
‥質異常症、認知症のうち二つ以上の病気を抱える患者を継続して診た場合は、診療報酬を
月1回当たり1503点 (1万5030円) がもらえることに制度を変えた。ただし、主治医の条件は厳しい。主事医のいる医療機関は、患者には24時間対応し、在宅医療も行うことが義務づけられ、介護保険に関する相談などにも応じるよう求められた。
これまで、私たちはなにかあれば、まず近所の町医者(主に内科医) にかかった。誰もがよく行く病院、よく行く医者を持っていたと思う。
これをかかりつけの医者、すなわち「かかりつけ医」とすれば、今後はこれを積極的に活用し、そのうえで主治医を持ってほしいということである。
たとえば、英国には国営医療制度(NHS)がある。これは、税金を財源としている制度だから、英国国民は原則負担なしで治療を受けられる。
ただし、NHSでは、あらかじめ登録しているホームドクター(かかりつけ医)の診察を受けなければならない。そして、そのホームドクターが必要と判断して、はじめて病院の専門医の治療が受けられることになっている。欧州では、オランダやデンマークなど
も同様の仕組みがある。


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第7章 信頼できる探し方、選び方

これからは「主治医をつくれ」と国が提唱-1

第1章で述べたように、厚労省は「看取りの場所」を「病院」から「在宅」へ転換させることを決め、その壷として、2014年から「主治医制度」を打ち出した。
これにより、これまで「かかりつけ医」(ホームドクター)を持つことせ提唱してきたことと合わせて、私たちの医者へのかかり方が変わろうとしている。
簡単に言うと、まずは普段は「かかりつけ医」に診てもらう。近所の町医者や病院の医者から、私たちはかかりつけ医を選び、そこで診てもらう。かかりつけ医揮いわば「ホームドクター」なので、健康に関しては日頃から相談しておく。
そして、なにか不調が起こり、治療や検査の結果、専門的を治療や手術が必要とされたら、いわゆる大病院である大学病院、専門病院、地域の拠点病院などを紹介してもらう。
そして、ここで「主治医」が決まる。
主治医とは、あなたの疾患の治療方針に関して全般的な責任を負う医師のこと。担当医とも言えるが、患者の体や健康状態に関しては、主治医が哀して面倒をみる。
つまり、「かかりつけ医1大病院1主治医」というコースをたどって、はじめてあなたなたのである。
巨かかりつけ医」 「主治医」 と開いて、「そんなお医者さんは持っていない」 という人も多いと思う。しかし、今後はそのような医者を持っていないと、いざというときに困ることになった。
というのは、国の政策の方向は明確で、端的に言うと、「ちょっとした症状では、大痛院の外来に直接来るな」ということだからだ。さらに言えば、「かかりつけ医を自分でつくり、普段はそこで面倒を見てもらえ」ということを意味する。