不能ストレス-2
デキなくなる症候群の増加-2
PTAの役員改選で不信任を受けた主婦が外出恐怖症になり、買い物にも行けなくなった。
車の販売員でいつも好成績を誇っていた男が、突然セールス恐怖症にかかって、得意先に行けなくなり、喫茶店に入り浸っている。販売した新車がメーカーの整備検査偽証でリコールにな販売が伸び悩んだだけのことで、自分の責任でもないのに頭を抱えて落ち込んでいる。
かつて、フリードマン博士らが発表した「Aタイプ」人間はつねに肯定的で積極活動型で休養知らずの働き者、健康そうだが、突然の心臓発作におそわれやすいという。
前向き人生大いに結構だが、休養不足で極端に寿命を縮めたのでは何のための人生か、高齢化社会にはそれなりの老後の楽しみがあろうというものを、勿体ない話である。
ぁる日、地方からの相談の電話、か細い女性の声がおどおどと頼りなさそうに聞こえた。
「仕事が手につかないんです」
「なぜです?」
「急に自信がなくなって、人に会うのも辛いんです」
「お仕事は?」
「フランス語の翻訳と通訳をしていますが」
「それで?」
「突然、仕事が嫌になって自分が今、何をしているのか、何で生きているのか、それすら わからなくなってしまって」
「そうですか」
「どうしたらいいんでしょう」
「まあ落ちついて話してみて下さい」
結婚して三年目、ご主人は会計事務所に勤務し近い将来には独立開業を目指している。彼女は油絵と音楽が趣味、スポーツは乗馬とテニス。実家は南九州の観光地でホテルを経営 している。
彼はM大商科の出身、麻雀と酒と映画、テレビの前で水割りをたしなみ、柿の種とピーナツの混ぜ合わせをつまみながらの野球観戦が趣味だとか。高校時代の同級生とはいえ、七年の交際で結ばれたにしてはすべてにチグハグ、水と油、恋愛中は気にしなかった性格の不一致が気になって仕方がない。