有閑ストレス-1

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

有閑ストレス-1
「でも、私、今の人生嫌なんです」

 何ものにも拘束されない自由な時間があるということはすばらしいことに違いない。
三連休の朝、自分を除く家族全員が旅行に出かけて家にはただ一人。
「さあ、思いっきりのんびりするぞ!」
大きく背のびをして、例えば高層のベランダから下界を眺めつつ、三連休の初日の遅い朝、自分にいい聞かせるが予定はなにもない。
この時点では、まだ朝食食食があるからいい。食卓にはそれらしきものが揃っている。
テレビを見ながら手酌で一杯の食前酒、これもいい。子供たちもいないから肩にまとわりついたり、妄想の邪魔をするものもいない。
こうなると女子バレーでもスケートでも新体操でも、女子プロゴルフでも・・・とにかくテレビ画面に躍動する若い娘を存分にみられる。
大脳は刺激されるほど活性化されるそうだから適度の興奮が身体にいいのは当然なのだ。
本能が刺激されて元気になるのは正しい健康法だからやましいことは何もない。その上、食欲も出る。
で、食事をし、昼寝をする。そこまでは思っていた通りだから何の問題もない。
ところが、これからが大変、テレビも見飽きるし、酔いも醒めて快くなくなる。時間はもてあます。家族がいないから会話もない。
外出しようと思っても、予定にないことだけに面倒くさい、それにパジャマを着替えるのもおっくう、せまい部屋の中をうろうろ歩いてもすぐへたりこんでしまう。
かくして、連休初日から挫折は始まるのだ。自由な時間が苦痛になるとは勿体ない話だが情けないことに、これが日本の中年サラリーマンの真の姿なのだ。
これは働き蜂特有のワーカホリック症、病気ではないが健全な状態でもない。家族がいない一人ぼっちの空間、そこにたたずむ孤独な己れの姿、理由のない不安があって、三日も続く連休が恐ろしい時間にも思えてくるのだ。
日頃、会社と一体化している組織人間は、自由な時間を得たとたん、たちまち分離不安症状をあらわしてうろたえる。
不況による工場閉鎖、自宅待機、停年退職、どれもこれも同様に、働き蜂人間であるほど落ちこんでしまう。こうなると、暇があるのも考えものである。