読書ストレス-3

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

読書ストレス-3

読書法のテクニック

 スタジオに入った数十人の番組参観客の大人が名札代りに番号札をつけ、それを少年がわずか数秒眺めて参観客に背を向ける。その間に参観客が名札を裏返す。司会者の合図で体の向きを元に戻した速読の天才少年はたちまちどの人が何番の名札をつけていたかを見事に100パーセントの正解率で全員を言い当てたのだ。
一方の天才少女はというと、スタジオに用意された部屋のオープンセットの装飾や備品を一瞥しただけで、すぐに背を向けて係員数人が部屋替えをしてから司会者の合図で振り向き、時計が何十分進み過ぎた、壁掛けの位置が違う、置物が三つ不足している、カーテンの色が変った、などと一気に続けて、スタッフ一同が変えたものを全て言い当て全部正解、悔しいが私には出来ない。
その少女が、自分の学んだ速読法をその場で公開した。
司会者が10冊ほど裏返しした少女小説などの書籍をシャッフルした中から無造作に選んだ1冊の本を、少女はベラベラと3分ぐらい眺めている。200ページ以上はありそうな厚さの本をニコニコしながら眺めただけ、何となくページをめくっていただけなのだ。
司会者が任意のページを開き、適当に2行ほど読み、話の展開を聞くと、少女はすらすらと淀みなく、その続きの文面を答えたのだ。まるで1ページからラストまで丸暗記しているかのように、どのページでもた正しく答えたのだ。本の中のその部分をカメラが追って画面にアップするのだが、一言一句内容に間違いがない。
つぎに、少女の顔に特殊カメラを装置してその焦点を追う。少女の眼は各ページの中央よりやや上を上下しながらハイスピードで横に動いていく。
バカチョンカメラでパチパチとリズミカルに撮りまくっている感じである。
多分、ページ数まで映像となってファイルされているのだろう。三3分一冊、インスタントラーメンの出来上りと同時間。結婚式の主賓のスピーチよりはるかに短い。
速読塾なるものも始まったとか。近い将来小学校の正式課目に採用されたらどうなるか。
まず書店が恐慌となる。子供たちは絶対に本を買わない。10分の立ち読みで3冊は読破し三十30分で10冊、3時間も書店にうろちょろすれば厚手の本60冊、マンガなどは100冊も読みまくってしまう。これでは商売にならない。
そこで、書店側も対抗策を考える。
子供が読みそうな本はすべてビニールをかぶせたり袋とじにしたりする。ビニールをかぶせた本を子供用という常識が定着するからアダルト用のビニ本を間違えて子供が買おうとする。いや、間違えたふりして強引に買っていく子供もいる。それで、アダルト用書物はビニールにかぶせてはいけない法律ができる。そうなると誰も買わなくなる。立ち読みで読み立ちになったりする。