「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ
休日ストレス-1
学校が休みの学生でガールフレンド、ボーイフレンドがいない場合は終日よく眠る。休日を眠り続けてしまえば休日ストレスはない。
予算を使い果たして買いものもままならぬ主婦は毎日が休日、よろめきドラマを見てお茶とお菓子では太るばかりでストレスはなおたまる。働きバチ民族の中年男どもは休日の利用法が下手どころか、平日は上司と同僚、休日は賢妻と子供の板ばさみ、家庭サービスで心身くたくたか粗大ゴミ扱いのいずれかで精神的に安まるひまもない。
これが停年後などとなるとなお哀れである。
定年退職しての「出社に及ばず」となった初日、どのように過ごすだろうか。
まず、一度目覚めて、出社無用と知り二度寝、昼までゆっくり寝具にぬくぬくとくるまって天井を眺めたり、枕元のタバコに手をのばしたりひっこめたり、そのうちうとうとしながら「おい、お茶と新聞!」とどなったりする。
「ハーイ」と甲斐甲斐しくエプロン姿の若妻が、香りも豊かな掩れたての伽排をトレーに、新聞を小脇に抱えて満面に笑みを
たたえて小走りに躯け寄って来る。 年齢差三十五歳ぐらいの再婚で得た妻のてを、ぐっとひき寄せると、恥じらいを秘めた初々しい頼が接近する。
と思ったとんに、
「あんた、なにすんのさ」
だみ声に驚いて目を覚ますと、あろうことか、枕元に立つ老妻の衣類の裾などをつかんでいて、見上げると、鬼のようなっ顔の恐ろしい目に睨まれている。いくら会社勤めが辛かったといっても、こんな恐ろしい表情で睨みつける上司には出会っていない。
思わず知らず手を離し、
「済いません」
などといい、二度寝でつい「出社無用」を放念し、布団からとび起きて身仕度もそこそこに、安全カミソリなのに頬に切り傷をつけるところもいつもと同じ、無言で卓上に用意された一膳飯を味噌汁と梅干し干物などでかきこむところも一緒、「遅刻だ」と呟きながら駅に急いでガランとした電車にとび乗って座席に座ってから「出社無用」に気がついて愕然とする。
「そうか、昨日で停年退職だったんだ」
こんな経験ありませんか?
ない? でしたら正常です。