誤解しないで!

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 あたしは、れきとしたナス科の植物です。
皆さんからは誤解されたまま、こそこそと世の中の裏通りを生き続けています。
このままでも充分に美しいと自負してるのに、乾燥されて大雑把に砕かれて「鷹の爪」などと呼ばれて飲み屋のテーブルなどに放置されていたり、さらに細かく粉砕されて「七味」などと、その他大勢扱いされて小さな缶に押し込まれ、窮屈な穴から熱い「立ち食いソバ」や「モツの煮込み」などに振りかけられて辛(つら)い思いをしています。たしかに私は辛(から)いのは認めます。でも、わざわざ辛(つら)いのと同じ字を使わなくてもよさそうなものと思いませんか? なに、思わない? あなたも意外に薄情ですね。あたしは確かにナス科トウガラシ属で唐辛子とも書かれますが、唐(中国)ではなく中南米が原産地で、メキシコでは紀元前6千年から野生ですからどこでもとれたそうです。そうそう、あたしの仲間で辛みがないのに子供の嫌われ者になっている哀れなのがいます。名前は「ピーマン」ですが、聞いただけで何となくピリっとしませんね。こんなのを食べる人の気が全く知れません。
あたしのことをよく知らないあなたに、少しだけ自慢させてください。
あたしは、料理に辛みをつけるだけじゃありません。健胃薬、凍瘡・凍傷の治療に最良、それに、ビタミンAとビタミンCが豊富ですから夏バテ防止、疲労回復に絶大な効果がありますし、除虫効果も抜群ですから園芸業者も多用しているぐらいです。その上・・・おっと、ここからは企業秘密ですが、頭の薄い村上画伯と村長だけにはそっとお教えしますね。じつは、あたしの一番のお得意さんは育毛剤メーカー、この刺激が枯れた頭皮と毛髪を刺激して再生への起爆剤になるらしいのです。でも、効果を焦って間違っても丸かじりは止めてください。唐辛子の辛味成分は刺激が強く、人によっては胃の粘膜をヤケドさせて傷つけますし、発ガン物質を誘引しますから。ともあれ、あたしを見捨てないでください。   文・村長