著書「子孫が語る土方歳三」について

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新選組友の会主宰・大出俊幸
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今回は、平成十七年六月発行114号から抜粋しての掲載です。

著書「子孫が語る土方歳三」について
土方歳三資料館・六代目子孫
土方 愛

私が、この本を書く動機となつたのは、資料館を訪れるかたに、「この資料館に展示している史料の解説が書かれた図録はないですか。」、「説明してくださったエピソードなどが載っている本はありませんか。」と聞かれることが余りにも度々あり、「小冊子でもいいから、来館者の皆様に史料の理解を深めていただけるものを出版したい。」と考えたことがきっかけです。
昨年十月に高幡山明王院金剛寺で行われた東軍戦没者慰霊祭の後の歓談の席で、祖父・康の代からお付き合いのある新人物往来社の大出様にご相談申し上げましたところ、本当に有難いことに大出様自ら御担当してくださると申し出てくださり、今回の出版に至ったのです。
また、別の意味からも、書いたものを残しておきたいとの思いがありました。平成二年に、歳三が育った生家が建て替えられたために、十代後半まで生家に生まれ育った私が、その生家の様子を伝えられる最後の世代となつてしまったのです。私の子供達は、現在土方歳三資料館の人口に移築されている、歳三が相撲の稽古をした大黒柱が、以前は生家のお座敷でつやつやと黒光りしていたのをじかに触って育ったわけではないし、中島登や小柴長之助をはじめとする生き残った隊士達が訪ねてきた生家の仏壇に手を合わせたこともありません。歳三に関する事、土方家の歴史が封印されてしまわないためにも、後世まで、土方家に伝わる土方歳三、また、その歳三が育った土方家に関する記録を残しておきたいと考えておりました。
本の内容は土方家に伝わる口伝や古写真、史料とその解説が中心になつています。
口伝の中には、あまり一般的には知られていないエピソードなども載せてあります。「女は下の下なり」のエピソードに関しては、叔母などは、「これ、公表してしまっていいかしらね。歳三さん誤解されないかしら。」 などと少し心配しておりましたが。また、生家や石田村周辺、歳三とともに暮らした家族の古写真などを豊富に載せ、歳三青年時代の生家敷地の見取り図や土方家の家系図などもいれ、読んでいただいた方に、歳三が育った頃の土方家の情景が浮かんでくるよう配慮しました。
また、土方歳三に関する史料集と読んでも良いほど、できる限りの史料と読み下し文、歳三遺品の写真を載せま
した。歳三直筆の書簡類、豊玉発句集、殉節両雄の碑、加藤福太郎書簡や安富才輔の書状など歳三の俄に関連して書かれた史料等。それから、歳三が俳句に関して影響を受けた祖父・三月亭石巴、長兄・為次郎、俳句の師・要五の句も載せました。俳句がお好きな方には、歳三を取り巻いていた俳風がどのようなものであったか、感じていただけるのではないかと存じます。
原稿を執筆するにあたっては、各子孫の方々をはじめ、本当に多くのゆかりの方々にご協力いただきました。心より御礼申し上げます。
つづく