三谷幸喜の大河ドラマ 「新選組!」-2

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新選組友の会主宰・大出俊幸
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今回は、平成十七年六月発行114号から抜粋しての掲載です。

三谷幸喜の大河ドラマ 「新選組!」

その2

黒須 洋子

今回の「新選組!」は原作がない。
三谷氏のオリジナル脚本である。そのために、子母澤寛の 『新選組始末記』や司馬太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣」丑が世に出たのちに、様々な研究家によってあきらかにされた新しい史実が採用されていて、私のこれまでの欲求不満が解消された。斎藤一と藤堂平助が若いというのがいい。相撲興行をしたのをとりあげてくれたのは嬉しかった。池田屋も、次々に旅籠を御用改めしていってゆきあたったと描いたのは、このドラマが最初だ。土方の洋装も江戸に帰りついたときになつていた。流山に行く前に五兵衛新田にもちゃんと寄っていた。もちろん新選組が好きで詳しい人にとっては、描いてほしかったことや登場させて欲しかった隊士がまだまだあって、不満だったかもしれない。
今年の「義経」が「久々に大河ドラマらしい大河だ」と評されているのを読んで、前年の大河は大河らしくなかった、と思われているのか、と私は少し驚いた。私の目から見たら「新選組!」は、三谷草書の過去の大河ドラマヘのオマージュ、といった印象がある。大河ばかりでなく、過去の新選組映画やドラマヘのリスペクトもある。
それは栗塚旭や島田順司、瑳川哲朗をキャスティングしたからという意味ではない。過去の様々な作品が三谷氏の
血となり肉となつている、という意味だ。私は「黄金の日日」のような大河ドラマをまた見たいと思っていたが、そんな私に 「新選組!」はジャスト・フィットした。不思議なことに知人の「黄金の日日」フリークも「新選組!」には相当はまっていた。私も知人も、
両作品に〝同じもの″を無意識に感じとったのだ。それは「歴史は面白い」ということ「歴史上の人物は、じつに魅力がある」ということ、それらを「日日」の市川氏も、「組!」の三谷氏も、ドラマで一生懸命に伝えようとしてくれたこと、それが歴史ドラマを書く人の正しくあるべき姿であると、私は心から思う。
(了)