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新選組友の会ニュースでは、新選組に関する記事や会員の投稿文などを掲載しています。
その中には、一過性で忘れ去られるには惜しい記事や随筆もあります。
それらの力作を多くの人に読んで頂きたく、随時掲載して参ります。
新選組友の会主宰・大出俊幸
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今回は、平成十七年六月発行114号から抜粋しての掲載です。
一
わが愛しのヒラメちゃん-1
福島雅子
沖田総司には、辛か不幸か写真がない。
近藤勇・土方歳三、あるいはその他多くの隊士には晩年のものでも写真があったり、伊東甲子太郎のように肖像画があって、その悌(おもかげ)を偲ぶことができる。沖田にも彼の肖像画なるものがあって、今はもう、こういうこともなくなったのだが、かつては新選組や沖田を取り上げるTV番組では、これが沖田総司ですと紹介されていたから、違う違うと苦笑しながら見ていた。この肖像画は、姉みつの孫・要氏が祖母みつから、総司に似ているといわれていた(それも生き写しというようなことでなく、「どこか」 という程度で、それが単に顔ということではなく、仕草とか癖とかいうことだったのかもしれないと思うのだが……)。
長じて要氏は、沖田を描いた映画で沖田役を演じた月形龍之介の髪型のイメージを加えてモデルとなり、画家に依頼して措かせたというのが、沖田総司の肖像画の真相である。
何の本であったのか記憶は定かではないが、初めてこの肖像画に接した時、私も若かったので、ショックを受けたものだ。沖田といえば労咳で若くして逝き、天才的剣客である。イメージとして痩身。何より美丈夫でなければならなかった。細面で病に苦しみながらも隊務に全力を尽くし、いつも何かに耐えているような顏をしている。そんな青年だった。実際、小説でも映像の世界でも、沖田といえば美丈夫に措かれ、二枚目俳優と相場が決まっていた。
それなのに、その肖像画は、見事にイメージを裏切った。ふっくらとしたお顔で健康優良児……それはそうだ。
これは総司ではなく、要氏なのだから。
本のそれはモノクロだから、余計ふっくらに見えたのだ。以前、赤間倭子氏のお嬢さんが、そのふっくらのところを両側から手で隠して 「ハンサム・ハンサム」とおっしゃっていたそうで、真似をしてみると確かにイメージが変わる。しかし、要氏は要氏で稔司ではない。