新選組外伝 第八話・市村鉄之助

大出俊幸講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。

新選組友の会ニュースでは、新選組に関する記事や会員の投稿文などを掲載しています。
その中には、一過性で忘れ去られるには惜しい記事や随筆もあります。
それらの力作を多くの人に読んで頂きたく、随時掲載して参ります。新選組友の会主宰・大出俊幸

新選組友の会ニュース発行者・大出俊幸
〒270-0116千葉県流山市中野久木572-44
電話0471-53-3506 友の会入会希望者はお問い合わせください。

新選組と流山
大出 俊幸
(新選組友の会主宰)

新選組外伝 第八話
もう一人の少年兵・市村鉄之助

生前の司馬遼太郎氏にある記者が「先生は御自分の作品のなかで何が一番お好きですか」と聞いたことがある。司馬さんはしばらく考えて「ひとつというのはむつかしいので、二つにさせて下さい」といって、『空海の風景』と『燃えよ剣』をあげた。
その『燃えよ剣』を読んでいて気になったことがある。土方歳三の小姓・市村鉄之助が歳三の命を受けて辞世の短冊と歳三の写真を届けに日野に来た、とある。いかに司馬さんでも、そこまで想像で具体的には書けないだろう。
現に歳三の写真が佐藤家に残っているのだから、と思い昭和四十六年晩秋、歳三の姉のぶの嫁ぎ先・佐藤彦五郎の曾孫.佐藤量氏(故人)を訪ねた。
「大出さん、ちょっと二階へ」といって本棚の裏に隠してあったウィスキーをすすめながら「籬蔭(りんいん)史話」と題された三冊の和綴じ本を見せて下さつた。表紙に「不許他見」とある。パラパラと拝見していると、箱館で土方歳三が写真と書付をもって日野に届けるよう市村鉄之助に命じる場面が目に入った。佐藤さんはこの家伝は誰にも見せていない、という。私が「ただ一人見せた人がいるでしょう」というと、小さな声で「司馬先生に見せました」と。私は早速甲聞きがき新選組』と題して刊
行した。
市村鉄之助は大垣の人。慶応三年秋、十五歳で兄・辰之助にさそわれ新選組に入隊。鳥羽伏見、甲州勝沼と戦い、五兵衛新田(足立区綾瀬)に集結したある夜、兄・辰之助に脱走を話しかけられる。が鉄之助は踏みとどまった。
その後、脱走した兄の汚名に耐え、歳三に従って函館まで戦いつづけた。
「頗(すこぶ)る勇気、性亦怜悧(れいり)」といわれた少年兵・市村鉄之助にとって、流山は人生の岐路であった。
(文/大出俊幸)