新選組外伝第五話 土方歳三の密使


相馬主計

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新選組と流山

大出 俊幸
(新選組友の会主宰)

新選組外伝 第五話

土方歳三の密使

釣洋一さんの発見した「島田魁日誌」によると「その夜(四月三日)、土方は附添二人を連れて江戸に走り、大久保一翁(いちおう)、勝安房(あわ)に会った」とある。
土方歳三は近藤勇の助命嘆願のため勝海舟に逢いに行ったのだ。ここに言う大久保一翁は勝海舟とともに幕府の最後を支えた人物。
今年五月十一日、日野市高幡不動において川澄祐勝貫主の英断により、新選組総慰霊祭がとり行われた。
一翁の子孫・忠昭氏、歳三の子孫・陽子さんが代表焼香をされた。
「相馬某、大久保、勝、土方の封書を持って板橋へ行き近藤に渡した」と。
相馬某こと相馬主計(かずえ)は板橋総督府に行き、近藤勇助命嘆願の密書を差し出すが、そのまま捕まり脇本陣・豊田市右衛門方に留置された。すでに近藤勇の正体はわかっていた。相馬は近藤処刑の四月二十五日にやっと釈放され幕府陸軍歩兵大隊とともに東北戦線を戟う。
磐城(いわき)久の浜から白石を経て仙台に姿を現し、石巻で土方歳三に再会。
榎本艦隊に合流して猛吹雪のなか北海道森町鷲の木浜に上陸、箱館戦争を戦い抜く。
以来、最後の新選組隊長として指揮をとり、函館山麓の弁天台場で孤立するが、五稜郭から救出に向かった土方歳三が一発の銃弾で馬上に斃(たお)れ榎本武揚は降伏する。
戦後、相馬は旧幕府軍首謀者として終身流刑が言い渡され、新島に流された。明治五年秋、赦免となり、新島で娶(めと)ったマツを連れて東京に帰り蔵前に住んだ。
ある日マツが使いから帰ると、割腹自殺した相馬主計が血の海に染まっていた。享年三十。
カミュの「異邦人」を思わせる最後だった。
(文/大出俊幸)