永倉新八『新撰組顛末記』

 

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 講師の一言

     新選組友の会主宰・大出俊幸

 三島由紀夫が自決した翌年(1971年)の2月、私は縁あって新人物往来社の書籍編集部へ入りました。
その年の秋、以前から懇意にしていただいていた評論家の尾崎秀樹先生の書棚から、『永倉新八』と題された本をお借りしたのが、私と新選組の出遭いになります。
私は大学生の4年間を京都で過ごしましたが、その頃は新選組には目もくれず、木屋町の安酒場で白い濁酒(ドブロク・とっても安かったのです)を飲んでは、友人達と遊泳する日々でした。
永倉新八という新選組の隊士が三条小橋西詰の池田屋(大学生当時は修学旅行宿・佐々木旅館)に突入し、乱刃をふるい何人かを斬った。その本人が大正年間まで生き残り、体験談を残した。
自分の記憶にある京都の町並みが鮮やかに蘇り、そこを歩き、そこで戦った永倉新八という存在が、とてもリアルで身近に感じられたのです。夢中になって読みました。
私の中で血がたぎり始め、感慨が大波のように押し寄せて、いてもたってもいられません。
そんな気持に突き動かされ、永倉新八の体験談を『新選組顛末記』と改題して発行。
以後は新選組にどっぷりつかり、新選組の書籍156冊を世に送り出しました。
そして今も、新選組が大好きです。
新選組ファンの皆様と、楽しく賑やかに新選組に関わっていかれる事に、何より大きな喜びを感じております。

   (新選組友の会ニュース掲載)

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 村長から一言

 流山市在住の大出さんの影響で流山は今や新選組のメッカ、熱心な新選組研究家は全国に沢山いて出版物も沢山出ていますが、その中心にいるのが大出俊幸さんです。
私は50年ほど昔、流山市内に家を建てるべく土地を購入したことがあります。仕事の事情でそこを手放して墨田区内に家を持ちましたので流山市民にはなりませんでしたが、流山に在住して縁があったら大出さんの指導の下で流山新選組の行事に拘わっていたはずです。お互いに古い付き合いで、私が生涯尊敬し続けることの出来る人である上に何となくウマが合います。大出さんが新選組に興味を持った切っ掛けは、永倉新八の手記を呼んで感動にしたからという立派な動機からですが、私の場合は実に情けない動機からです。前述の流山に土地を購入した頃、私は弓引きで五段、毎年五月初旬に京都三十三間堂での大的、御所内弓道場での小的と日本選手権などに出て「出ると負け」を繰り返していました。ところが同行の先輩・後輩などは勝ち抜いて翌日も試合ですから、負けた私は京都市内をぶらつくしかありません。それで興味がないのに新選組の史跡巡りで退屈しのぎです。結局、弓は挫折して鮎釣りに化けましたが、長女が高校生になった頃、家の中に新選組の本がやたらに増えてきたのです。聞くと沖田総司のフアンだそうで結果的に大出さんが編集した新選組の本の殆どは長女が少ない小遣いで買ったもの、今頃になって私が「新選組」ものを書く資料の一部に使っている次第です。大出さんとはもっと妙な縁があるのですが、ここでは割愛して将来機会があれば懺悔します。ここでは、大出さんの主宰する「新選組友の会」や新選組に関するこぼれ話などをご紹介させて頂きますが「乞うご期待!」と、大出講師に成り代わって大見得を切っておきます。

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    JR板橋駅前・寿徳寺・近藤、土方、永倉&新選組墓地です。

 ◆名著再見
永倉新入『新撰組顛末記』

             大出 俊幸

 新人物往来社に移って〝さて、どんな本を作ろうか〃と思案している時、尾崎秀樹さん(大衆文芸評論家)から「いちど遊びにいらっしやい」と声をかけられ、保谷市(現・西東京市) の都営住宅にお伺いした。一階は居間と台所、二階の二間は本であふれ、階段にも本が積み重ねられていた。
尾崎さんはどこかに電話されていて、待っている間、私は本の背表紙をずっと目で追っていた。ふと『永倉新入』と書かれただけの本が目にとまった。棚から引いて、パラパラとめくっているうちに、「あれ!」と思った。なおも頁を追って読んでいくと、池田屋に突入した場面が出てきて、自分の刀が折れ、落ちている刀を拾ってなおも戦った。
手ほ血のりでヌルヌルしていたとある。
大学の四年間、京都で過ごし、池田屋は佐々木旅館という修学旅行の宿屋になっているとだけ聞かされていた。うかつなことに新選組の隊士は幕末に皆な死んで、まさか大正年間まで生きていた人がいたとは思ってもみなかった。
早速、借りて帰ってタイトルを『新撰組顛末記』と変えて、装丁も新しく、全国の書店に並べた。いまも新人物文庫の一冊として、売れつづけている。私と新選組の出会いはこうして始まった。  (大出俊幸)

 新選組友の会ニュース149掲載