謹賀新年 新規出版のご挨拶

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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申しあげます。

平成30年 元旦
宗像 善樹

 

新規出版のお知らせ

今から44年前の昭和49年(1974年)8月30日、金曜日、午後零時45分、東京都千代田区丸の内仲通りで起きた、「東アジア反日武装戦線『狼』」と名乗る赤軍派による三菱重工爆破事件。日本国内で起きた、日本人による、日本人に向けられた、戦後初の無差別爆弾テロでした。
被害者は、死者8名(即死者5名、病院収容後に死亡した人3名)、重軽傷者376名に上りました。

事件発生時、三菱重工社員として爆破されたビルの中にいた私は、時限爆弾の爆風を受けて右耳の鼓膜を損傷して右耳の聴力を失い、吹き飛んできたビルの厚い窓ガラスの破片によって全身傷だらけになりました。
そこで私は、爆弾テロの犠牲者となった同僚、通行人の方々の霊を弔う鎮魂の想いと、事件を風化させずに教訓を後世に伝えたいという願いから、平成22年(2010年)に『爆風』と題するドキュメントドラマを、筆名『沖島信一郎』の名で発表しました。
発売当初から、「この本は、危機管理に役立つ」という評価を受け、事実、3・11の東日本大震災の直後に、この本を読んでいた方々から、「この本に書かれていたことが参考になって、落ち着いて激しい地震の揺れや被害に対処することができました」という感想が多く寄せられました。
また、つい最近も、大企業の役員OBの方々から、「この本は、今でも、企業の間では、『危機管理のバイブル』として評価が高い」という話を聞きました。
ただ、残念なことに、『爆風』の出版社は既に営業を止めており、本は絶版となってしまい、リアル書店(街中にある書店)での本の購入はできなくなっております。
そこで私は、世界各地で爆弾テロが頻繁に引き起こされている最近の社会情勢に鑑み、「爆弾テロに遭った体験者としてもう一度、危機管理に関する物語を世に送り出して皆様の参考に提供させていただきたい」と考えるに至り、タイトルを『三菱重工爆破事件』と改題、内容に加筆、訂正、削除を加えて改訂新版を著しました。
2001年9月にアメリカ・ニューヨーク州で同時多発テロがありましたが、それより27年も前に、日本国内で爆弾テロがあり、テロに負けずに立ち向かった日本人がいたのです。生真面目で、献身的で、控えめな、そういう『昭和の人々』がたくさんいて、あの頃の日本を引っ張っていたのだという人間群像を記録に残しておきたいという強い想いが私にはあります。

事件から既に44年が過ぎ、あのとき、ビルの中で一緒にテロに立ち向った同僚の人たちも、一人逝き、ふたり逝く年齢になりました。寂しい限りです。
果敢に、怯むことなく、わが身を顧みずに、仲間の命を救おうと死力を尽くした社員の人たち。彼らの必死の形相が今も脳裏に浮かんできます。男性も、女性も、まさしく、新渡戸稲造博士が謂う『武士道の精神』 即ち、『日本人の勇気・忍耐・仁・礼儀・誠意・名誉・義務・自己犠牲・惻隠の情』を自ら体現した人々でした。
幸い、「仲間との友情と絆を再度、記録として世に出したい」という私の願いが叶えられ、本年6月に『株式会社幻冬舎』から改訂新版として出版されることになりました。
装丁は、『史料にみる宗像三女神と沖ノ島傳説』のときと同じく、装丁家の幅雅臣さんが手がけてくださいます。
茲に、『三菱重工爆破事件』出版のご報告を申しあげると共に皆様の絶大なるご支援をお願い申しあげます。
平成30年1月吉日
宗像善樹