あるご夫妻から学びしこと
新海 富美代
今日は86歳と73歳の御夫妻のお話をさせて頂きたいと思います。その御夫妻とはもう15年以上ご縁を頂きお付き合いさせて頂いております。86歳のご主人は元大学教授をなさり退職前より足が筋ジストロフィーの一種の症状でちょっと不自由で、以前から時々整体をさせて頂いておりました。
その折には社会情勢や新聞やニュース等で問題になっている事柄を私に分かるように詳しく説明してくれたりその他私の知らないことや私の質問に答えたりして下さり整体をさせて頂きながら色々とご指導頂けて本当にありがたい方でした。
しかし段々筋肉が落ち今では動く事が出来ずベッド生活をされておられます。以前から医療福祉に意識があり無駄な医療費を使ってはいけないと言い続けて介護認定も受けずに奥様が色々とお世話をされていました。それが日々段々と厳しくなり私もかかりつけ医もそろそろ認定を頂き福祉の力をお借りした方が良いのではとお話しさせて頂き、先生も奥様にこれ以上は無理させては可愛そうと思いサービスを受け始めています。
それでも奥様のご負担は大きく私も大変だなと思っていました。先生ご夫妻はお子さんがいません。お二人のご兄弟も高齢で近くにもおりませんから頼れる方は無く常にお二人だけで生活してこられました。
今は私も先生の整体はしておらず2カ月に1度位奥様にさせて頂いております。そんな事から先生のご様子も少しは理解させて頂いておりましたが此のところのコロナウイルス感染症の問題でお伺い出来ないでいました。先日本当に久しぶりに伺わせて頂いた折奥様のお姿を見た瞬間背が丸くなり縮んでおられて内心ビックリしました。整体を始めると奥様から私背が丸くなってしまってとお話頂き、そこで私もそうですねとお答えさせて頂きました。
合わせて奥様が今日ぎっくり腰をしていまい腰の一部がちょっと痛いとおしゃっていました。その日は施術させて頂き丸くなった背も改善され帰宅しました。その後4日位経ち、私が自分の家での仕事開業日の記念日としている日にお赤飯を炊きましたからお届けしようとしたら奥様がぎっくり腰が改善されず動きが出来ないからお赤飯は気持ちだけ頂いておきますとのお答えでした。
心配になり翌日様子をお聞きする為にお電話をしてみました。奥様が電話に出られてお話によると起き上がる時に痛みがあり起き上がるまでに10数分掛かってしまうこの事ですが起きてしまえば自転車も乗れるし動けるから大丈夫との事でした。前々から奥様困った時はお手伝いしますから遠慮なくおしゃって下さいと申し出ていましたので今回もお買い物代行しますよとお伝えしましたが奥様がありがとうございますと言って下さりました。
しかし自転車にも乗れるし起き上がれば動けるから大丈夫ですとの事でしたので電話を切りました。そして先生を暫くショートステイに預けるからとおっしゃたので私も安心しました。すると30分もしないうちに奥様からお電話がありました。先ほどは御厚意をお断りしてすいませんでしたと。実は今回のショートステイは急だったので新しい所に行くことになったようです。
そこでちょっと手土産を持たせたいからとその買い物をお願い出来ますかと言われました。先生のショートステイに行く時間まで連絡を頂いてから2時間しか無く指定されたデパートに慌てて買い物に行きお届けして私もお役に立てたと思い嬉しくなりました。その翌日の夜に奥様から連絡がありました。奥様が整形に行って診て頂くとぎっくり腰では無く骨粗鬆症が進み腰上の骨が一部割れていてそれが神経にあたり痛みを伴っているとの事でした。治療法は無く自然にして置いたり骨粗鬆症の治療をするらしいですが何と言っても先生の介護が老老介護ですから厳しい事です。
日々先生も迷惑を掛けて申し訳ないから施設に入所しようかと話しているようですが奥様が頑張れる内はやってあげたいと思っている様です。先生と奥様の結婚50年の
金婚式が2年後に迎える様でして丁度奥様が75歳になるのでそこまで頑張って金婚式を迎えたら先生が入所しようという話になった様です。そんなお話を私にして下さいました。
私は長い間先生ご夫妻とお付き合いさせて頂きお二人のお人柄も充分理解していますから、ほのぼのとした良いお話しだと胸が熱くなりました。奥様は今回の事で色々と厳しいかなと思った様ですが私はすかさず今までずっと頑張って来たし、ここで諦めるのには忍びなく今までの努力を無駄にして欲しくない気持ちが優先してしまい、奥様今決断しなくとも奥様の様子を見て出来ればお二人の金婚式を家で迎えて欲しいと思いますと伝えました。
その為に私も出来る事はお手伝いさせて頂こうと思っています。このお二人の様子をずっと拝見してきて子供もいないご夫婦ですが出来るだけ社会のお世話にならず自分達で自立してやって行こうと常に思い行動していた姿を拝見して素晴らしいお二人だと思いますし、大変尊敬しております。
これからの時代子供達と離れて暮らす老夫婦や独居老人も増えて来る事と思います。私達夫婦もその種類ですし今回のコロナウイルス感染症問題で県外に住む娘も息子家族がいても会うこと出来ない事を経験して、やはり自分達で自立してやって行くことが大切だと再度強く自覚させられました。こんなことを実感する良い機会を頂いたと思っています。
先生ご夫妻には頑張って頂き元気に結婚50年の金婚式を迎えて欲しいと思います。因みに金婚式は2年後の5月7日です。心を和ましてくれる老夫妻の温かい夫婦愛を感じたお話でした。みなさん幸せになりましょう!!