いらっしゃいませ。
こんな分かりづらいBARによくいらっしゃいましたね。
ワタクシはBAR隙間のマスター、隙 間太郎と申します。
あなたがここに来たのも縁。
冷房と除湿の間のような、老眼鏡とハズキルーペの間のような、ラガーとエールの間のような隙間をつくオリジナルカクテルをご用意しております。
暑い日が続きますから、体も疲れたでしょう。
はい、キンキンに冷えたビール?かしこまりました。
北極の氷のようなグラスでお出しいたしますので、少々お待ちくださいませ。
最近ダイエットの為に市民プールに通っているんだ。
青葉タイキはそう話すとつまみのナッツに手を伸ばした。
ボカァ元々、こう言っちゃあなんだけどスポーツはだいたい出来てね。
マラソンだって町で1番、地域の大会なんかに出ても決勝までは普通にいけてたね。
サッカーだってバスケだって、大抵のスポーツは練習なんかしなくてもそつなくこなすタイプだったんだ。
「ほう、学生時代はスポーツ万能な子は人気でしたからね、青葉さんも人気者だったのではないですか?」
マスターはテーブルの水滴をスパッと拭き取った。
「それがさ、水泳だけは出来ないんだ」
出てきた生ビールをグイッと口に運ぶと、少しずつ話し始めた。
学生時代も水泳の時間が嫌いで嫌いで。
泳げないもんだから、授業に出たくなくてね。風邪ひいたーだの怪我したーだの言ってサボったもんさ。他のスポーツは人並み以上にできるもんだから恥ずかしくってね。
水泳なんて、なーんでわざわざ息ができない所に行くのか全く理解出来ないね。
どんどん沈むだろう?ほんとに嫌なんだ、それが。
学生時代サボりにサボっていたらそりゃそうだ、単位が怪しくなってね。
鬼みたいな体育教師から呼び出しくらったんだ。
「お前、補講だからな。水泳くらいできるけどサボってるだけだろ?回数泳げば良いだけだからな、サボンなよー」
そう言って先生からバシッと頭をファイルで叩かれた時にもう観念したね。
俺泳げないっすって言っても何もきいてもらえないんだもん。
放課後プールに行ったら10人くらい生徒がいたかな。
その補講メンバーのなかにさ、俺が気になっている子がいたの。
可憐なタイプの女の子でさ、クラスも部活も違ったから接点が無かったんだ。やっと出来た接点が水泳の補講。笑っちゃうよね。
こんなとこ見られたくないと思ったけどさ。始まっちゃったらもう仕方ない、ええいままよとプールに飛び込んだよ。
しっかし、水をかけどもかけども進まない。誰かに足でも掴まれてるんじゃないかと思うくらいに足が重たい。するとお尻から沈んでいく。1人でバシャバシャと犬かきなのか平泳ぎなのかわからない泳ぎだ。
海でこんな泳ぎしたらまずまっすぐにライフセーバーが飛んでくるだろうね。
とても25メートルは泳げなくて、半分で足をついちゃったかな。
すると鬼教師の野次が飛んで来るんだ、教育的指導ならまだ良いんだけどさ。
俺がふざけてるって見えたみたいで。
「おい、青葉!ちゃんとやれ!留年したいのかー?!」などとのたまう。
半ばヤケクソになりながらもう半分死ぬ気で泳いだよ。泳いだって言って良いかわからないけど、足はつかなかったんだから良しとして欲しいよね。
俺が息も絶え絶え、ゴールの壁にタッチして、パアッと顔を上げた瞬間。
鬼教師が見たこともないような笑顔で俺を覗き込んでいたんだよ。
「おおい、青葉。お前、本当に泳げないんだなぁ〜ガッハッハ」
そんなこと大声で言われたもんだから、補講で一緒の生徒達になんか言われるかな、馬鹿にされるかなっておもったりもしたんだけどさ。
みーんな優しくって俺に手取り足取り教えてくれるわけ。もちろん俺の気になっていたあの子も優しく教えてくれるんだ、ここは生きながらにして天国か?なんて思ったね。
ダッセーの見られて凹んだけど、全5回の補講の最後、俺が25メートル足つかずに泳ぎ切った時なんかはみんな大盛り上がりでさ。
何つうんだろ、一体感、そういうのを感じたね。
遠い目で青春の日々を話す青葉をマスターはニコニコとして見つめていた。
出来ることばっかりやってもダメなんだなって思ったよ。
出来ない事があるくらいの方がヒトとしての魅力はあるのかもね。
ん?とマスターが見つめると
「その時気になっていた子が今俺の嫁です」
「え!そういう話ですか!」
「うん、嘘。」
ズッコとマスターがコケるのも気にせず青葉は話しを続ける。
「まあ人生そんなに甘くないよねー」
でも出来ない事をあえてやるって大事だよね。この歳になって思うよ。
まあ俺はいまスクールの先生の連絡先をどうやって聞くのがいいか毎日考えてるんだ。
マスター、いやらしくない、不快感を与えない、ちょっと気になるかもって思わせるちょうど良い誘い文句ないかい??
「相手の心の隙間に入るの、お手のものだろ?」
「おお〜、一本」
どこからともなくそんな声が聞こえてきて、マスターはこりゃ参ったと言わんばかりの表情だ。
店内はささやかな笑いで満たされ、今日も隙間BARの夜は更けていく。
お腹が痛む。
早朝に目を覚まし異変に気づいた。
お腹にはキリキリとした痛みがあり、波打つように脈を打っている。
布団を被っているはずなのに足元からゾクゾクと寒気がした。
こりゃたまらんと布団から這い出し、トイレに駆け込んだ。
早朝なので布団の外はもっと寒く、布団から出たことを後悔したがそんなことはもうどうでも良い。
気づけばおでこにじっとりと脂汗をかいていた。
季節柄、急性胃腸炎が流行っていると聞く。2、3年前から流行り出した病もまだ留まることを知らないものだから、嫌な想像ばかりが頭を駆け巡っていく。
何か変な物を食べたか、いや、もしかしたらウィルスに感染したのか、ボーッとした頭でお腹の痛みをやり過ごすうちに、痛みの波も少しマシになって来た。
すると段々と思考もクリアになってきて、冷静に考える事ができるようになって来たようだ。
ゆっくりと思い返す。
まずは昨日食べた物からだ、、、。
「あっ」
思わず声が出た。
思ったよりも早くアッサリと答えに到達したものだから自分に呆れた。
それは私のお尻がヒリヒリとして居たことから、答えは明らかだった。
昨日の昼間、激辛カップラーメンを戸棚の奥から見つけた私はしめしめとお湯を沸かし始めた。
フットサルの試合前は避けている食べ物がある。
・お酒
・脂っこいもの
・生もの
・消化の悪い物
・食べ慣れない物
そして、【辛い物】だ。
連戦が終わり、その制限から解放された私は自由だった。
3分もそこそこに封を開け、辛味ペーストを注ぎよく混ぜ、ハフハフと頬張った。
これだこれこれとニンマリとしながら一心不乱にラーメンを啜った。麺はすぐになくなった。
無論、これで満足するほど私の胃袋はヤワではない。
カップ麺に残った汁をスープカップに移し替えた。冷蔵庫に余っていた卵を割り入れ、よく混ぜる。冷凍庫にストックしてある青ネギをたっぷりと。最後にとろけるチーズをパラパラとふり、ラップをかける。
レンジに入れ、3分。
アッツアツのスープカップを取り出すと、そこには激辛茶碗蒸しの完成だ。
真剣な顔でスプーンを引っ掴み、火傷しないよう細心の注意を払いながら頂く。
フゥッ。一息ついて背もたれにもたれかかる。
あぁ〜なんて幸せな休日の昼間だろう。
…そうだった、私は数ヶ月ぶりに激辛カップラーメンを食べたのだった。
お腹の違和感の正解はなんてことない、生理現象だった。
あと5分くらいで家を出なければいけない時間が近づいているが、空気を読んだようにお腹の痛みの波はどこかにいってしまったようだ。
ヒリヒリとしたお尻を気にしながらトイレから出た私は、腹巻をして気合を入れて家を出た。
これを忘れた頃に、また辛い物を食べたくなるんだよなぁとフラフラと歩きながら私は苦笑いをした。
くるくると、まわり
それは私に近付いてくる
きらきらと、輝き
美味しいわよと話しかけてくる
なんて素晴らしい時間だろうか
待っている時間すらも愛おしい!
回転寿司の話だ。
小さい頃に海無し県で育った反動だろうか、大人になって、回転寿司に行く頻度が増えた。
回転寿司には一度ほどしか行ったことがなかったが、その一回は強烈に頭に残っている。
きょうだいたちと、枚数を競いながらお腹いっぱい食べたものだ。
小さい頃から回転寿司は特別な物であったのだが、今では身近な存在だ。
回転寿司に行けば100円からお寿司が食べられて、好きなタイミングで、好きな寿司をタッチパネルで注文することが出来る。
なんなら今では唐揚げやラーメン、ケーキにタピオカ、寿司という概念を通り越して回転ホニャララ。もはやファミレスだ。
ちなみに私が回転寿司でよく頼むのはポテトフライで、回転寿司店舗によって特色があり、箸休めにちょうど良いのでオススメだ。あとは締めにアイスコーヒーを飲む。
うーん、書いてみて思ったがなんて邪道なことか!
そういえば、私の出身長野県での回転寿司売り上げ1位はサラダ軍艦だそうだ。
私も行ったら必ず食べるので驚いた。
他の県ではランクインすらしないのに長野県では持ち帰り含めてトップを譲らないらしい。
海無し県がゆえに、鮮度が低い魚より濃い味付けのはっきりした味の方が好まれたという説もあるようだ。
何の気なしに、ふむふむと調べていたら、某有名回転寿司さんは長野県創業らしい。
海が無い県から寿司屋が生まれたのかとこれまた驚いた。
意外な共通点に少しニンマリしながら、明日の試合が終わったら回転寿司でも良いなぁと、食いしん坊な私は寿司へまた想いを巡らせるのであった。
徒然なるままに日暮らし、文章を書いている日々だ。
最近私は、朝早くのバイトを始めたのだがまだまだ慣れない。
眠気よりも寝坊の心配が先に立ち、信じ難いことにアラームが鳴る前に起きてしまう。
眠る時も寝坊しないか考えながら寝るもんだから眠りは浅い。早く体が慣れてくれと思うものの、慣れてしまったら二度寝なんかしちゃいそうだから更に怖い。
早寝早起きの習慣作りは最初が肝心。人間の体内時計なんて当てにならないものである。
まだ薄暗い朝、外に出ると心なしか街もまだ目を覚ましてないような空気感がある。
辺りを見回すと畑の作物も眠そうに下を向いてるようだ。東京といえど、都心でもない限り畑はちょっと歩けばあちらこちらにある。
コインロッカーに野菜を入れて直売所があったりして、ここが東京であることを忘れてしまいそうだ。
この前まで蝉がうるさくしていたと思ったら、鈴虫が鳴き、今では丸々と太ったカマキリが闊歩していたりして、虫たちの体内時計ほど正確なものは無いのではないか。
アラーム無しなのにどうしてこうもちゃんと季節のリレーができるのか、見習いたいものだ。
そういえば、鈴虫と名前を出したことで、苦い思い出が蘇ってきた。
小さい頃に鈴虫を育てていたが、餌のきゅうりを真上から落っことしてしまった事がある。
鈴虫はそれでお亡くなりになってしまったことで幼い頃の私は大変にショックを受けてしまったものだ。
あれ 鈴虫も 鳴きだした
りんりんりんりん りいんりん
遠い昔の鈴虫さん、ごめんね。
鈴虫に思いを馳せながら、私は今日もアラームをセットして眠りにつくのであった。
バアチャンと私①
私にはバアチャンがいる。2人とも高齢だがいつも元気だ。ボケずにシャンとしている姿にいつもこちらが元気をもらっている。
バアチャンとのエピソードで忘れられないものがある。
小学校低学年くらいだったか、一歳違いのイトコと外で遊んでいた。
ある日のお昼前だっただろうか。
日が照るなか、外でイトコとサッカーをしていた。お互い、思い思いの必殺シュートを開発しながら楽しくボールを蹴りあっていた。
そんな時、バアチャンが私達を大きな声で呼んだ。
「おい!こっちこい!」
何があったのかと、イトコと顔を見合わせ、バアチャンの元へ走って行った。
バアチャンは玄関の前で草刈りをしていたようだ。草が重なり土は掘り返されて、バアチャンは地べたに座り込んでいる。
「これ見ろ。」
バアチャンの手元を見ると、太陽の光に輝く草刈り鎌が見えた。
草刈り鎌には手のひらサイズほどの黒い物体が付いていた
よくよく見ると、それはモグラだった。バアチャンはモグラを一突きにしていた。モグラはもう死んでいた。
「あそこからな、土がモコモコモコってな、盛り上がってきたもんで、やってやったわ」
なんと地面にいたところを仕留めたらしい。
イトコも私もモグラを見るのが初めてで、目を白黒させて驚いていた。
以前より、バアチャンはモグラの被害に悩まされていたらしく、バアチャンの顔は誇らしげだった。
「もう昼にするから、それ、捨ててこい」
鎌ごと渡されたものの、いとこも私もアタフタするばかりでパニック状態だった。土に捨てるとまた逃げてしまうかもしれない。ただ、どこに置いておけばいいのか迷った結果、近くのマンホールの蓋の上に置いて家の中に戻ったのであった。
お昼ご飯を食べ終わったら、どこか落ち着く場所に持って行こうといとこと話していた。
だが、ご飯を食べ終えてマンホールの所に戻るともうモグラはいなかった。
ホッとしたような残念のような複雑な気持ちになった。おそらく猫が持って行ったのではないかということだった。
時間で言うと30分くらいだが、最終的に消えてしまったこともあり、モグラとの遭遇は自分の中で更に幻のような存在になってしまった。
ただ、近くで見るモグラの手の逞しさと、ツルツルとした体毛の輝きは今でも忘れられない。土を掘るのに特化した手は分厚く、掌を外側に向け体に沿ってくっついていて、見れば見るほど人間の手のようで少し怖く感じた。あ、正しく言えばモグラの手、、、と言うか前足なんだろうか。
それよりも、バアチャンがモグラを一突きにした事実の方が私にとって忘れられない衝撃的な出来事になった。
二十数年経った今もあの時のことは色褪せずに想い出せる。
たくましいバアチャンの元でさまざまな経験をさせてもらった。そのお話はまた折をみて書こうと思う。
私もバアチャンのように逞しくてかっこいいバアチャンになりたいものだ。
モグラを一突きにするのは、まだまだ修行が足りないかもしれないが。
四葉のクローバーといえば幸福の象徴だ。
誰しも小さい時は四葉のクローバーを探したことがあるのではないだろうか。なかなか見つけられず日が暮れるまで探したり。あるいは見つけた友達を羨ましがったり。
大体は見つかることなく、あたり一帯のシロツメクサを踏み付けて終わるのだが。
私自身も見つけたことは一回か二回ほどしかない。見つけたからといって押し花にしたり挟んでラミネートをして本の栞にしたりとマメに大事にとっておいたことは一度もない。
そこまで思い入れが無かったといえばそれまでだが、マメでも無い私が四葉のクローバーに対して思いを馳せることはなかった。
あの日までは。
中学生の頃まで遡る。
その日は1人で下校していた。夕方の4時頃だったか、まだ明るかったのを覚えている。
いつもの道を歩いていると、少し前を歩く同じ学校の生徒が目に入った。
その生徒は、道傍にいた誰かに呼び止められ、少し話をして、足早に去って行った。
少し、変だな、と思った。
なぜなら足早に去った生徒は、すでに私からは見えなくなるほど走り去っていたからだ。
私は怪訝に思いながらも、帰宅するためにはこの道を歩くしか無い。
道傍には見知らぬオジサンがいたが、歩いてくる私に気がつくと、
「ちょっと」
と、私を呼び止め、満面の笑みで近づいて来た。
私の中の警戒スイッチはオンになった。
あれ、知り合いか?いや、もしかしたら私が覚えていないだけで、小さい頃に会っていたのかもしれない、いや、それなら、先ほどの生徒は何なんだと色々と考えを巡らせたが、考えれば考えるほど、笑顔で近づいてくるのは、やっぱり見たこともないオジサンだった。
もうこれは避けられない。
やばかったら、逃げよう。
そんなことを考えたところで、近づいてきたオジサンが口を開いた。
「これを持っていると幸せになれるからね」
と、私に向かって手を差し出してきた。
視点をオジサンの顔から、手の方へ向けると、オジサンの手には今まで見たこともないような大きさの四葉のクローバーが握りしめられていた。
拳で握っても、茎の部分が優にはみ出るくらいの大きさだ。
驚いて声を出すのも忘れるほどだった。
私は戸惑いつつもオジサンから四葉のクローバーを受け取った。
「ありがとうございます」
と、早口で一礼して、足早にその場を立ち去ったのだった。
クルクルとクローバーを片手に転がしながら歩いて頭を整理しながらテクテク歩いた。
振り返るとオジサンはしゃがんで、またクローバーを探しているようだった。
おそらく私の前を歩いていた生徒も、オジサンからクローバーを貰ったのだろう。
ふと気づくと足元にクローバーが落ちていた。さっきの人は、こんなに早く捨てたんだ、と驚いた。
オジサンには悪いが少し気味が悪かったので、私もクローバーを捨てようと思った。
ただ、オジサンの言葉を思い出して、その場にポイとは捨てられなかった。
5分くらい片手に持ったまま歩いて、近くのフェンスにクローバーをくくり付け、そのまま家に帰ったのだった。
今思えば、オジサンがくれた四葉のクローバーは本当に幸せになれるホンモノだったのかもしれない。
だってあんなに大きな四葉のクローバーなんて今までも見たことがないし、これから先も見ることはないだろうから。
もしあのクローバーを家に持ち帰って
それこそ本の栞なんかにしたりして取っておいたら、今頃驚くような幸せが来てたりして。
四葉のクローバーと聞くと、私はまずこの出来事を思い出すのであった。
オタクよ胸を張れ!
声を大にして言いたい。
でも結局口に出さず胸にしまってしまうあたり、私もオタクの殻にこもっているなあと感じる。
違う。オタクには今やそんなイメージすら取り払うパワーがある。
オタクと言われる人には熱意のある好きのレベルが深い。
もっといい言い方がないだろうか。
専門家、ファン、サポーター、スペシャリスト、、、
好きになったことに対しては、知れば知るほど、自分が新参者であるという思いが抜けないのだ。
人間誰しもオタクで新参者だ。
ただそれを恥ずかしいと思うようではまだまだだ。人間誰しも、いつでも、始める時は新参者なのだ。ビギナーであることを恐れていては何も始められない。
私は昔から好きな事を発信出来なかった。
好きであることを発信するのが怖いのだ。否定されたらどうしよう、笑われたらどうしよう。
そんなことを悶々と考える時間すら今では勿体無いと感じる。
発信していったらどんどん世界は広がっていった。
笑う人なんていない。それ以上に、同じ趣味を持つ仲間が増えていく。
それはフットサルも同じだ。
フットサルが好き、で集まったメンバーたち。年齢もバラバラだ。
普通に暮らしていれば、まず出会うことの無かった人達だろう。
チーム内でもジェネレーションギャップが生まれるくらいだ。
それでも皆、フットサルが好きで、一つの目標に向かい、同じ時間を共に過ごしていく。
同じメンバーでフットサルをすることは今後ないだろう。
今現在を更新していく、楽しさを味わっているんだなあと感じている。
私は今も昔も、フットサルオタクだ。
フットサル以外の、私のオタク的趣味はまた、どこかでご紹介したい。
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黒猫が横切り、靴紐は解け、葬祭場の周りではカラスが集まっているのを見たらゾッとする。 霊柩車が通れば親指を隠し、朝出る蜘蛛は殺さない。夜は爪は切らない。夜に口笛を吹くなんてもってのほかだ。 幼い頃からどこからか教えられ、話を聞き、誰しも頭の隅にあるだろう。
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それでも怖いものは怖いのだ。
昔、母の実家のお墓参りに行く時、口を酸っぱくして言われていたことがある。
「転んだらその場の土を舐めろ」
「来た時と帰る時と同じ入口は使うな」
前者について、子どもは困ったことになぜかすぐに走りたがるし、ふざけたがる。 特別な日、お盆などであれば、親戚もたくさん集まるし尚更だ。 お墓で走り回ったりしたら何をしでかしてしまうか分からない。 落ち着いてお参りをしてほしいという思いから、そのように言い始めたのだと思うが、これはまさに効果抜群だった。 現に私も小さい頃、駆け出そうとした瞬間、ハッとしてやめたことが何度もある。 土を舐めるなんて嫌だからだ。リスクが大きすぎる。
後者は、入口と出口は覚えなくちゃ、と強く思ったのは覚えている。 結局、物覚えの悪い私は黙って大人についていくという堅実な選択肢を選んだのだった。 それもまた思う壺だったのだろうか。
大人になってから、そういうような言い方をするのは母の実家だけだと気づいた。 土地柄なのか、ただ単に私たちがやんちゃすぎたから言い始めたことなのか。 真相は分からないが、そのようなローカルルールは全国に沢山存在しているだろう。
詳しく調べてみたい気もするが、知らない方が気にせず過ごせもするだろう。 「知らぬが仏」なのかもしれない。 いや、この言葉の意味すらも深読みしてしまうともう止まらない。熱帯夜の中、周りの空気が少し冷えた気がした。
ジンクスと言っても不吉なジンクスばかりではない。私にもある。勿論フットサルだが。ジンクスというかルーティーンの類になるのだろう。ジンクスを決めているスポーツ選手は多いはずだ。私自身はどちらかと言うとジンクス否定派なのだが。何故かと言うとジンクスに左右されてしまう気がして、出来なかった時に気持ちがぶれてしまうのではないかと考えるからだ。否定派の私がなぜ?と思うかもしれないが、勝利の為には何でもいいから縋りたいものなのだ。私の感覚的には、いつも通りにプレーする為に、という方が大きいかもしれない。そんな気持ちになるのがフットサルなのだ。
そんな私のジンクスは、勿論、秘密だ。試合を見たことがある人だったらすぐ分かるかもしれないが。
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私は某海無し県で育った。
朝は鳥の鳴き声で起き、暗くなったら家に帰る。
そういうと山深くのポツンと一軒家を想像するかもしれないが、実家は案外都会へのアクセスも良い。新宿へ停まる特急あずさも停車する最寄り駅から徒歩5分。
まあこれの恩恵を受けるのは大人になってからなのだが、親には大変感謝している。
そんな町で兄がサッカーを始めた。地域のスポーツ少年団だ。
父がサッカーをやっていたこともあり、昔から身近にサッカーボールはあった。
兄の影響もあり、小学2年からサッカーを始めた。
50人近くいる中で、女の子は最初1人しかいなかった。
完全アウェイだ。無口な私は友達も作れず何が楽しかったのか分からないが頑張って通った。
サッカーそのものというよりボールを蹴るのが楽しかったのかもしれない。
3年生に上がると、なんと同い年の女の子が1人入ってきた。とても嬉しかったのを覚えている。
学校は違ったのだが些細な話で盛り上がり、今までのサッカーが倍近く楽しくなったのは間違いない。
時にはサッカーせずに、踏むと煙の出るキノコを探したりなんかして、笑い合ったものだ。
その子とは今でも連絡を取り合う良い友となった。
その子と出会っていなかったら、私は今までフットボールにのめり込むことはなかっただろう。
「楽しい」は全ての原動力だ。
子どもでも大人でも。「楽しい」から続けられる。
競技としてフットボールに携わってから、「悔しい」思いの方が沢山してきたが、それもまた「楽しさ」への原動力に繋がっているのだろう。
「結果」より「過程」とはよく言ったもので、「結果」からくる「楽しさ」だけだったら、ここまでフットボールに携わっていることはないだろう。
「過程」まで楽しめるようになれば、万々歳。深く深く沼に嵌る。
世の中にはまだ未経験の「楽しい」が沢山転がっている。
スポーツだけにとどまらず、色んなことを経験して自分の肥やしに出来たら。
視野が広がってそれこそ毎日「楽しい」だろうなと思う。
無意識に自分の向いている事、うまくできる事しかやらなくなっている、と気づいた。
得意でなくても興味が向いたことにはチャレンジしていかなければ。
失敗上等、できなくて当たり前。
「下手の横好き」が私のこれからの人生の目標だ。
フットサルは面白い。
ミニサッカーとも呼ばれるまだ知名度の低いスポーツだけに、残念ながらその面白さは誰にも伝わらない。
わたしの祖父母父母が子供の頃は、いま隆盛の卓球はピンポンと呼ばれて温泉ホテル客の遊びに過ぎず、バドミントンなどは羽根つきに似た遊びに過ぎなかったと聞くし、スケボーなどは悪ガキの遊びに過ぎず公園では邪魔者扱いされていたのはわたしでも知っています。それらが今や堂々とメジャースポーツとしてオリンピックでも花形なのだから、フットサルが大化けしたとしてもおかしくない。
近い将来、フットサルもオリンピックの正式種目にエントリーされることを信じている。
さて、この数日後に行われる試合に備えての練習を行ったが、梅雨戻りとも思える天候不順の湿度の高さでの蒸し暑さにはいささか参った。
疲れきって熟睡したのだが寝汗もひどい。
この日は休日なのだが、うだるほどの暑さで、朝からエアコンばかりつけて過ごしている。
こんなに暑いと食欲も無くなる。冷蔵庫を開けて簡単に何かつまめるものがないか探す。
ご飯を炊くのも面倒だし、パスタを茹でるのも暑いからなあ、なんて考えていると冷凍庫にキンキンに冷えたアイスを見つけた。
チョコミントアイスだ。
昔は好きでなかったが、今では好きになったものの代表格といっていい。
ミントが爽やかで、かつ、パキッと甘いチョコが入ることで、上手いこと1つにまとめている。
正反対に近い組み合わせなのに面白いものだ。
嫌いな人からしたら、歯磨き粉の味だと言われればそれまでだが、いつから食べれるようになったんだっけ。
よくよく思い返すと、20代前半ひたすらハマって飲んでいたお酒を思い出した。
モヒートだ。
ミントが入った、ラムベースのカクテルの一種である。
非常に飲みやすく、更に見た目も良く、お洒落に見えるなあなんて思って頼んでいた。
口もサッパリするしよく飲んでいたことを思い出した。
モヒートをのむようになってから、民都系の物に抵抗感がなくなった気がする。
ただモヒートに関しては、飲み放題のお店や居酒屋などで嗜んでいたこともあるので邪道かもしれない。
30も過ぎたことだし、フラッとBARに足を運んだりして。
バーテンダーが作ったモヒートを、しっぽり頂いてみたいものだ。
以前パクチー専門店でパクチーモヒートを飲んだことがあった。
美味しかった記憶があるのだが、いまいち味が思い出せない。
こちらももう一度是非にも味わって飲んでみたい。
順序は逆になったが、アイスを食べ終わったら急に食欲が湧いてきた。
フットサルの練習や試合の後は体力も消耗し水分も糖分やミネラルも不足するのか、つい飲食物に意識が飛ぶ。
これも、フットサル効果の1つと思えば悪くはない。
アイスもフットサルも共に爽やか、後味がいい。
と理屈をこねて、だからフットサルは面白い、と言えるのだ。
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コーラの炭酸割り
フットサルは面白い。
だが、はたで思うより過激なミニサッカー型のスポーツだけに、この季節は少し動いただけで汗まみれ、水分補給は欠かせない。練習や試合のの合間に補給する水の量もバカにはならないが、日頃から飲み物には多少のこだわりもある。
ここのところ暑い日が続く。まだ7月の初旬だというのに酷暑で、東京の室外温度は毎日35度はゆうに超えている。
そんな中、私がバイトで通っているクリニックの院長に、最近おすすめのドリンクを教えてもらった。
「コーラと炭酸を1:1で入れるのがうまい。」とのことだ。
炭酸を炭酸で割る? 頭は暑さでボンヤリしてしまっているせいか、最初はピンと来なかった。
「コーラはコーラでも、カロリーゼロのコーラだ。」
ますます院長説の意図がわからなくなり、頭の中が混乱している。
コーラは、単体で十分美味しいものではなかったか。
わたしは、キンキンに冷やしたコーラに氷をたっぷり、ストローでグイッと飲むのが大好きだ。
のど越しの甘い刺激と爽やかな清涼感がクセになる、これこそ炭酸界の王様と言っていい存在であろう。
それをわざわざ炭酸で割る・・・よく見ると炭酸は無糖炭酸だ。
そんなことをしたら、コーラの美味しい味が薄まってしまうではないか。
そもそもカロリーゼロのコーラって、好きな人がいるのだろうか。
甘みが妙に舌に残る感じが、私はあんまり得意ではなかった。
恐る恐るコップにコーラを注ぐ。
続いて、同量の炭酸をゆっくりと流し入れる。
早くも完成した。驚くほど簡単だ。
色はそこまで薄まっているようには見えないが、味はどうだろうか。
口に運んでみる。
「あれ、美味しい!」 考える間もなく声が出た。
非常に爽やかで、口当たりもとても良い。
これを飲んでしまうと、普通のコーラの甘味が甘ったるく感じてしまうかもしれないと思った。
舌に残る感じがなく、シャキッとキリッとした爽快感だけが残る感じだ。
何より驚いたのは、あまりグビグビ飲めないことだ。
コーラは開栓後、いつもすぐ飲んでしまう私だったが、これはあまり一気飲みするようなものではない。チビチビゆっくりと飲むのが正解のように感じた。
「、、、お茶よりも持つよ」
私の反応を見ながら嬉しそうに院長は教えてくれた。
熱い毎日が続き、甘いジュースばかり飲んでしまいがちな日々。
少しの工夫でサッパリ過ごせる知恵を教えてもらった。
帰り道、ゼロカロリーコーラと無糖炭酸、そして参考までに、と言い訳をして普通のコーラも買って帰った。
「さあ、明日も頑張るぞ!」
気分はさわやか、まるでコーラ割りのような清涼な気持ちが快い帰路だった。
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