武士道を考えるー3

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    新渡戸稲造「武士道」復刻版(えむ出版刊・本体5千円)
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 武士道を考えるー3

          開運村村長・花見 正樹

イギリスの政治家・パークは、すでに過去のものになっているヨーロッパにおける騎士道と比較して賛辞を与えたが、いま私(新渡戸)は、その国(イギリス)の言葉をもって、この武士道の考察を行うことに大きな喜びと意義を感じている。
アイルランドの歴史家のジョージ・ミラー博士でさえ、東洋に対する無知と情報の欠如から、東洋には古代も近代も騎士道に類する制度は存在しないと著書で述べている。だが、このような無知は許すことが出来る。その理由は、博士の著作が出たのは、ペリー提督がまだ我が国との交渉で開国する前だったからである。それから十年以上を経て、我が国が封建制末期の苦しみに喘いでいた頃、カール・マルクスが資本論で、封建制の社会的諸制度を研究することによてって得られる新たな利点について発表した。当時、封建制のいい面を活用しているのは日本であるとも述べている。私(新渡戸)も同様に、西洋の歴史・道徳研究者らに、今の日本の武士道の研究にもっと関心をもつように勧めたいと思っている。
西洋と日本の封建制や騎士道と武士道を比較した歴史的な研究は、大いに魅力的だが、それを述べるのは本書の目的ではない。私(新渡戸)の目的は、まず一つ目は我が国の武士道の成り立ちとその係累であり、二つ目はその特徴や教訓、三つめはそれらが一般民衆に及ぼした影響と永続性について述べることにある。