第十七章 武士道の将来

武士道1

新渡戸稲造著、桜井桜村訳、幅雅臣装丁、えむ出版発刊、復刻版・本体5千円。
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 武士道を考えるー19

 第十七章 武士道の将来

 武士道は、武士と呼ばれた特殊階級によって形成され、その階級に属した人々の消滅と共に衰退しますが、その心は日本人全体に引き継がれて細々と現代にも生き残っています。明治維新と称する内乱では、武士道に反する武士の行為もままありますが、武士道に殉じて散っていった戦士も少なくありません。また、武士階級が姿を消して武士道がとうに廃れた現代でも、ごく稀には、武士道の精神に近い状態で暮している意志堅固で道徳心に富んだ人を見ることがあります。それらは、武術家、宗教家、人々に迷惑をかけない一部の右翼、体育科系人々の中などに連綿として、武士道は形を変えて生き残っています。
新渡戸稲造は、明治の近代国家を築いた武士が、武具を手放すと同時に武士道も捨てたのではないかと危惧する反面、武士道が残してきた素晴らしい徳は、決して消え去ることもなく、不死鳥のごとく甦り、武士道は、散った桜の花が風に運ばれ、その香りが人々の心を潤し癒すように永遠に生き残るであろうと記述します。不肖私(花見)も若き日に一流の弓術家(挫折しましたが)を目指して修行した日々を思い起こすと、その言葉に納得するばかり、武士道は明らかに生きています。