第八章、武士道の名誉

武士道 本

 新渡戸稲造著、桜井桜村訳、幅雅臣装丁、えむ出版発刊、本体5千円。
お問い合わせ。ご注文は、”えむ出版企画”<mbook@cl.cilas.net>、へ。

 武士道を考えるー11
花見 正樹

   第八章、武士道の名誉

 武士にとって命以上に価値があるのが名誉です。
どのような苦難に耐えても名を残すことこそ武士の本分です。
そのためには命など惜しくないのです。
武士の子は、人に笑われるような行いはするな、と教えられて育ちます。
体面を汚すな。恥ずかしい行いはするな、と一挙一動が矯正されます。
武士の子は、こうして、名誉の大切さを身をもって体験して育つのです。
名誉とは、人格の尊厳そのものですから、価値観の高いものです。
高潔さを保つためには、人に恥じる行為を自ら律しなければなりません。
新渡戸稲造は、何人かの著名な人の言葉を引用しています。
平戸の殿様、松浦静山の創った家康の性格描写「鳴かずなら鳴くまで待とう時鳥」は、名誉のための忍耐を詠ったものです。
西郷隆盛の遺訓は「道は天地自然、行いは天を敬うを目的とす。天は、人も我も同一に愛し給う故、我を愛する心で人を愛すなり」、さらに、名誉ある心の持ち方として、次のように続きます。
「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己を尽くし人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬるべし」
実に明快です。
名誉のためには、寛容と忍耐が必要ですが、さらにもう一つ大切なことがあります。
それは、いざという時に、一命を捨てる覚悟がある、ということで、これこそが「名誉」そのものです。