
新渡戸稲造著、桜井桜村訳、幅雅臣装丁、えむ出版発刊、本体5千円。
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武士道を考えるー8
花見 正樹
第五章、武士道の仁
「仁」とは、他人への愛、慈悲、思いやり、憐憫の心。寛容さ、同情などです。
昔から「仁愛」は崇高な気高き心と言われ、「仁義」は命を賭けても守る人間関係の約束ごととします。
人間の持つ資質の中で、もっとも光り輝く徳性がこの「仁」で、これこそ人の守るべき道です。
孔子は、民を治める君主たるものが必ず身に着けるものがこの「仁」である、と説きます。
孟子は、不仁にして天下を得る者は未だこれあらざるなり、と孔子の言葉を裏付けています。
武士は、己に強く他人に優しくあらねばなりません。
この「仁」こそ「武士の情け」に集約される美しき心で、歴史の中には随所に現れます。
「仁」は、女性的な慈愛の心だけに、高潔で厳しく男性的な「義」とは異質でありながら、多くは「仁義」として一緒に使われます。
これは、正義を守る「義」なしに、「仁」だけで事に当たれば単なる慈悲ですから公正さに欠ける場合が出てきます。慈悲は確かに美しい大切なものですが、厳しい目で見て正しく行われる慈悲であってこそ価値あるものですから慈悲には「義」の心も必要なのです。
仙台の伊達政宗公は、「義に過ぐれば固くなる、仁に過ぐれば弱くなる」と、慈愛の感情に流されすぎないように部下を諫めています。