第一章、武士道の倫理系

yjimageNYLY6C2M|鉄扇です。

新渡戸稲造著、桜井桜村訳、幅雅臣装丁、えむ出版発刊、本体5千円。
お問い合わせ。ご注文は、”えむ出版企画”<mbook@cl.cilas.net>、へ。

 

 武士道を考えるー5

                                          開運村村長・花見 正樹

 第一章、武士道の倫理系

 前回は「武士道」復古版の目次を載せましたが、その「第一章」について述べます。
「武士道の倫理系」とは、武士道とは何か? との解釈もできます。
武士道の基本は、大きく分けると次の四項目になります。
1、日本の宗教(主として仏教)のもつ死生観、禁欲節制観、人生の無常観。
2.神道のもつ先祖崇拝の心、死生観、道徳観。
3.儒学のもつ礼節観、節度感、倫理観。
4、天に恥じない武士としての基本原理

 新渡戸稲造は、これらの項目が、この時代(明治年間)にどう生かされているかを追求しています。
その上で、これら武士道の基本原理を個別に整理すると、次のようになります。
義、勇気、仁徳、礼儀、誠、名誉、忠義、教育、克己心、切腹と敵討ち、刀、理想の女性。
その最初が、そもそも武士道とは? という問いに対する解答です。

 日本の武士道は、西洋の騎士道よりも、もっと多くの要素を含んでいます。
武士道は、士農工商の上位にある武士階級の「身分の高い者の守るべき規律」なのです。
では、武士が守るべき規律は明文化されているかというと、藩の掟のように文章にはなっていません。
武士道とは、寺小屋での師弟教育や父兄や先輩などからごく自然に教えられる道徳教育で身につく徳目なのです。
武士道の倫理には、武、士、道、夫々の意味が色濃く入っています。
戦いへの心構え、本来の武士としての規範、正しき人の道・・・それらが凝縮されての武士道です。
「武士道・復刻版」の中には次のような内容の記述もあります。
アイルランドの歴史家でダブリン大学教授のジョージミラー博士でさえ、東洋には古代から現在に至るまで、西洋の騎士道に類似した制度や規律は存在しない、と著書の中で述べているというのです。ただし、この書物の初版は、ペリー提督が日本の鎖国を解くために浦賀沖に現れる前でしたから仕方ありません。
一方、ドイツの社会主義者で「資本論」で知られるカール・マルクスは、封建制の社会的かつ政治的諸制度の生きた見本は江戸時代から明治の日本だけに見ることが出来る、と述べています。
新渡戸稲造はこう結んでいます。
「西洋の倫理研究に携わる歴史家が、もっと日本の武士道の研究にも敬意をもって接して頂きたい」
つづく