第69話 今井信郎の手紙

 小美濃清明講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。

幕末史研究会
事務所:〒180-0006 武蔵野市中町2-21-16
FAX・O422-51-4727/電話・090-6115-8068(小美濃)
Eメール:spgh4349@adagio.ocn.ne.jp
プログアドレス:http://blogs.yahoo.co.jp/bakumatsushiken
幕末史研究会は、東京都武蔵野市を中心に1994年から活動を続けている歴史研究グループです。

「坂本龍馬八十八話」

6、暗殺

小美濃 清明

第69話 今井信郎の手紙

明治四十二年十二月十七日、今井信郎が大阪新報社・和田天華にあてた手紙がある。

その中で次のように自分達の立場を説明している。手紙の最後の部分だけを載せることにする。
「是、要スルニ幕府ハ攘夷因循兵力ノ微弱ナルヲ曝露シ、所謂志士ナル火事場盗賊ニ苦ルシメラレ、土崩瓦解セルモ、勤王愛国ノ念虜ハ毫モ衰弱シタルモノニ無レハ事実ノ上ニ顕然タリ。近藤勇、親見錦、芹沢鴨ノ如、立場ニ依テ其名ヲ異ニ致ス者ト信ジ候。実ニ玉石混交ノ時世、是(ぜ)か非か後世の史論ニ譲リ左ニ御回答仕候。
一、暗殺ニ非ズ、幕府ノ命令ニ依リ職務ヲ以、捕縛ニ向格闘シタルナリ。
二、新撰組ト関係ナシ。余ハ当時京都見廻リ組与力頭ナリシ。
三、彼レ曽テ伏見ニ於テ同心三名ヲ銃撃シ、逸走シタル問罪ノ為ナリ。
四、場所ハ京都鞘薬師角近江屋ト云_油店ノ二階ナリ。
以上
十二月十七日
遠州初倉村
今井信郎
大阪新報社
和田天華殿」
幕府の力が弱っていたところに、志士という火事場盗賊に苦しめられたのである。幕府は瓦解したが勤王愛国の念は少しも変っていない。
近藤勇、親見錦、芹沢鴨のように、その立場によってその評価は変ると信じている。実に玉石混交の時代だったのだ。是か非か、後世の史論に譲り、左のように回答いたします。
一、暗殺ではない。幕府の命令で職務を行い捕縛に向い格闘したのである。
二、新撰組と関係はない。私は京都見廻り組の与力頭でした。
三、彼(坂本龍馬)はかつて、伏見で三名の同心を銃撃し逃走した罪に問われていた。
四、場所は京都鞘薬師角の近江屋という_油店の二階でした。
と簡潔にまとめている。
今井は刑部省口書でも犯行を認めており、自分は一階にいたと話していた。しかし、明治三十三年の「近畿評論」では二階へ上ったことになっている。これは編集段階で改稿があたったようである。今井の責任ではないと思われる。
ただ、見廻組が実行犯としても、彼らに龍馬に関する情報を伝えた者が真犯人と考えられる。 7、遺風の中で