第45話 サトウの語学力

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「坂本龍馬八十八話」

小美濃 清明

第45話 サトウの語学力

サトウの語学力
アーネスト・サトウの語学力については良く知られている。「おだてともっこには乗らねえ」と洒落●しやれ●
を飛ばした話は有名である。
坂本龍馬とサトウは夕顔に乗り八月十二日に須崎を出航して長崎に八月十五日夜遅く入港している。その間、四日間、同じ船に乗っているのである。サトウの日本語はすばらしく、いくらでも日本語で会話ができたはずである。だが二人はほとんど話を交していないようである。
サトウは日記に船の速度が遅いことと、指にできた_●ひよう●疽●そう●の痛みにいらだっていたと書いている。二人の会話がなかったことは残念である。
サトウの語学力が驚異的であったことを如実に語る史料がある。維新史料編纂事務局が出版した「維新史料○芳・坤」にアーネストサトー書翰が載っている。
毛筆、草書体のこの手紙は慶応三年十一月九日に薩摩藩士・吉井耕助にあて書いている。署名はヱルネスト サトウとカタ仮名で書いている。
時候のあいさつの後に
〈何度もお使いの人に来ていただき、かたじけなく思います。早速お使いの人に返事を差し上げなければならないところ、近日大阪へ行くつもりででしたので、返事を見合せていました。
しかし、ミトフォルドならびに拙者(せっしゃ)両人、昨日当地(京都)に到着しましたので直ぐにお尋ねしなければならないのですが、取込んでおりまして、それができませんので、お気毒ながら、ちょっと宿の寺へお寄り下さるようお願い致します。用向がありますので、前もって来られる時間をお知らせ下されば、間違いなくお待ち申し上げます。〉
と書き、十一月九日、吉井幸輔様とある。龍馬暗殺の六日前に京都で書いている手紙である。
龍馬暗殺については萩原延寿氏が「遠い崖」の中で次のように書いている。
「この私が、長崎で知った土佐の才谷梅太郎は数日前京都の宿で三名の姓氏不詳の徒に暗殺された。
Saedani Umetaro, a Tosa wan whose acquaintance I had made at nagasaki, had been murdered a few ago at lus lodgings in kioto by three men unknown
(この稿については萩原延寿氏より原文資料提供を頂いた)」
宮地佐一郎著「龍馬百話」(文春文庫)より

アーネスト・サトー書翰
維新史料編纂事務局蔵寫眞
以寸楮仕啓上候冷寒之時節益御壯健被爲入太慶奉存候然む過日態々御使を御遣被下忝く存候早速御同人へ頼み返事差上へき筈之處近日上阪之積有之暫時見合申候然むミトフォルド并拙者両人昨日當地來著致直〓御尋問罷出可申候得共取込〓付其儀不能候間御氣之毒〓がら御寸暇〓て宿寺へ御奇被下候様奉願候尤用向〓付他行御座候間前以御來臨之刻限御爲知被下候半バ無相違御待可申候謹言
十一月九日
ヱルネスト・サトウ