第43話 須崎の板垣退助ー1

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「坂本龍馬八十八話」

小美濃 清明

第43話 須崎の板垣退助ー1

「パークスが軍艦で土佐へ来る」と知った乾(板垣)退助は兵隊を連れて須崎へと走った。軍務総裁・乾退助、別撰小隊長・山田喜久馬、足軽小隊長・山地忠七、祖父江(土屋)可成、差使役・高屋佐兵衛という陣容で各隊が揃って高知から須崎へと向った。
土佐藩上層部は不測の事態が起ることを心配して談判中は出兵しないと藩議で決定していたが、乾は「兵制ヲ改革シ、且ツ実地演習ヲナス高時機」と判断して勝手に兵を出してしまったのである。
これらの諸隊が須崎に到着した時、夕顔の乗組員たちが、船から机、腰掛を大善寺へ運び込んでいた。
山田、山地、祖父江らは作業中の乗組員に問いただすと、談判会場を作っているところであり、パークスは英国兵を率(ひき)いて会場へ来る予定だと答えた。
これを聞くと、彼らは応接掛の佐佐木三四郎、渡辺弥久馬のところへ押かけ、「英国側が兵を率いて談判にのぞむのは真(まこと)か」と詰め寄った。佐佐木、渡辺が
「そうだ」と答えると、彼らは
「そうか、それならば我々もまた兵を率いて談判するべきと思うが、いいがか」と迫った。
佐佐木、渡辺は返答につまり、押し問答をくり返したが、それならば談判の代表をつとめる後藤象二郎のところへ行こうと押しかけた。
「兵を率いて談判するかしないか」と問うと、後藤は
「兵を率いていくことは勿論だ。英国が兵を率いて来るならば、土佐も兵を率いていき、もし、無礼の言葉を発したら、あなたたちが討ちなさい。しかし、それよりも前に私が斬っているだろう。談判の際はあなたたちを呼ぶから待機していて下さい。」
と答えた。
乾らは悦び勇んでその準備をしていたが一向に声が掛からなかった。
後藤は大善寺での談判を変更し、英国軍艦バジリスクに自ら乗り込み、幕府立ち会いのもと談判を開始していた。
乾らは湾内に停泊しているバジリスクを遠くから見ているしかなかった。