創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-3

 幸福を売る男

        芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

 創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-3
 (注)
 日本民謡と服部良香叩の仏訳者フランス、リヨン育ちの薮内宏氏は、芦野宏のフランス語の先生、 リヨン生まれの令弟(薮内久・故人)は毎日出版文化賞受賞『シャンソン写与イストたち』の著者 である。服部作品の和製ポップスは、「東京の雨」「東京の空の↑隅毘流れる」「絵描と詩人」「東京のブルース」の四曲。

 私の音楽人生のなかで大きな力になってくださった石坂範一郎氏も、名マネージャーといわれた菊池維城氏もすでにこの世にいない。東芝EMIとの専属契約も切れて、一度クラウン・レコードに移籍してレコード、CDを出したが、そのあと私はフリーになり、どこでCDを出してもかまわない立場になっていた。石坂氏の長男である石坂敬一氏が東芝EMIの取締役本
部長の要職にあることを知ったのは、そのころである。私はちょうど歌手生活四〇周年を迎えて、どこかでCDを出すことを考えていた。なにか因縁めいた話だが、これは石坂氏のお導きであるような気がする。私は白い花を持って石坂夫人のお宅を訪ね、ご主人にたいへんお世話になった時代のことを懐かしくお話しした。そして、今またご長男のお世話になることをご報告して帰ってきた。
 東芝EMIから発売された一三〇曲入りのCD『芦野宏のすべて』は敬一氏のお計らいで敏腕ディレクター、仙波知司課長プロデューサー(現・部長)に一任された。五枚組のCDは、一枚目に古い東芝レコードのデビュー曲から、ア~ゼンチンやパリで吹き込んだ「カミ丁ト」1ラ・メール」、思い出の懐かしいシャンソン、そして五枚目は四〇周年記念リサイタルの
ライヴ盤で、最後にリーヌ・~ノーと二人で歌った「知りすぎたのね」「いつの日かパリに」が収録されている。四十数年前からお世話になり、リーヌ・~ノーと引き合わせてくださった石坂氏。言葉に尽くせぬほど感謝している。だから、このCDが出来上がったとき、いちばんに石坂夫人のお手元に届くよう取り計らっていただいた。そして平成六年(一九九嬰、「日本シャンソン館」設立発表の記念に発売していただいた。『くらしの窓』では、この全集CDの曲のうち一〇〇曲は歌っている。なにしろ一か月に三〇曲としても、一年に三〇〇曲は用意しなければならないからたいへんであった。

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2020年 22月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
2月23日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:中野宏美
2月24日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
※ピアニストの変更がありました(2020. 1. 25)
2月29日(土) 11時~/14時~ 江口純子 ピアノ弾き語りライヴ
(2017年内幸町ホールアワードシャンソンコンクール最優秀賞 受賞)

3月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
3月1日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
3月7日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
3月8日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月14日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月15日(日) 11時~/14時~ 宮崎名緒子  ピアノ弾き語りライヴ
(日本シャンソンコンクール2018グランプリ受賞者)
3月20日(金) 14時~ のど自慢vol.26 ピアノ:大美賀彰代
3月21日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:日野香織
3月22日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
3月28日(土) 11時~/14時~ 秋山美保      ピアノ:大美賀彰代
3月29日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子

2020年3月21日(土)
桜井ハルコ
バースデイ・ライヴ
ピアノ:日野香織
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
    ライヴ料 500円
どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪
2020年3月20日(金・祝)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.26
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。

<お問い合せ・お申込み>
 日本シャンソン館事務局
 TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
 営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

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創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-2

     幸福を売る男

        芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

 創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-2

 私はこのあと、松井豊と組んで、ちょっとコミックなシャンソン風なものを書いてみた。
 これはパリの小さなシャンソン小屋で聴いたような風刺やエスプリのきいた小咄(こばなし)風のシャンソンを作ってみたいと思ったからだ。「僕の日記帳」「アパート殺人事件」「わんこそば」「ミスター・ガーリック」などがそうである。
「ミスター・ガーリック、孤独な紳士、それでも 恋をする」で始まるこの歌は、中年過ぎても女性に振られ続ける男の物語である。それでも大好きなガーリックはやめられない。これが自分の健康とエネルギーの源だと思っているからだ。いろいろな女性に振られ続けたあげく、恋が実り、二人は結ばれる。彼女はデパートの漬物売場の主任さんで、にんにく漬けが大好きだったという、くだらない落ちのついた歌だが、これは『くらしの窓』では発表しなかった。
NHKの教養番組だったからである。
 とにかく一年間、殺人的なスケジュールをこなして疲れ果てたころ、好評につき来年度もお願いしたいという知らせを受けたとき、とてもできないと思った。だから辞退するつもりでいた。しかし、マネージャーとNHKの話し合いで、秋に三週間の休暇をくださり、フランス国営放送のテレビが放映している『マガジン・フェミナン』という番組に出演して姉妹関係を強調するという条件付きで渡仏させていただくことになり、私たちは夫婦そろって、思い出の地、パリへ行くことになった。
 新婚旅行で昭和三十六年に滞在して以来二年ぶりのパリであった。この年、私は日本民謡と服部良一先生の作品を仏訳したものを東芝レコードで制作し、『マガジン・フェミナン』の番組へのお土産にした。フランスのテレビ局か・らは、私と妻に和服姿で出演してほしいとの申し出があり、旅行鞄に和服を詰めて出かけた。番組はほとんどロケーションで、パリの街を和服姿で歩く私たち夫婦を追いかけ、カフェでお茶を飲んでいる私たちに司会者がインタビューする形式だった。そのあとホテルのロビーで私が持参した日本民謡のフランス語版をテープで流し、画面は歌っているように見せて撮影された。
 ホテルの大きなマントルピースの前に立ち、照明係が二、三人釆て旧式なテープレコーダーから流れる民謡に口を合わせるだけのことだったが、この『マガジン・フェミナン』の番組は午後七暗から放映され、ちょっとした反響があったらしい。番組で流れた「木曾節」「こんぴらふねふね」はワンコーラスずつ、フランス語で歌ったように記憶している。そのとき持参した民謡のすべて、つまり「会津磐梯山」「五木の子守唄」「さくらさくら」「佐渡おけさ」も含めた録音テープはパテ・マルコニ社に保管された。
 それより一年半前にパテ・マルコニ社から発売された、リーヌ・ルノーとのデュエット曲、四五回転のEP盤も好評で、私の名前を知っている人もあったらしく、とくにこのレコード会社の人たちが番組を見ていてくれたらしい。数日後に東芝の石坂範一郎氏より、東京からホテルに電話があり、『民謡と服部作品の録音テープ』がパテ・マルコニ社のレコード・ライブラリーに入ることを知った。

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2020年 22月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
2月22日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
2月23日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:中野宏美
2月24日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
※ピアニストの変更がありました(2020. 1. 25)
2月29日(土) 11時~/14時~ 江口純子 ピアノ弾き語りライヴ
(2017年内幸町ホールアワードシャンソンコンクール最優秀賞 受賞)

3月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
3月1日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
3月7日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
3月8日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月14日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月15日(日) 11時~/14時~ 宮崎名緒子  ピアノ弾き語りライヴ
(日本シャンソンコンクール2018グランプリ受賞者)
3月20日(金) 14時~ のど自慢vol.26 ピアノ:大美賀彰代
3月21日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:日野香織
3月22日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
3月28日(土) 11時~/14時~ 秋山美保      ピアノ:大美賀彰代
3月29日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子

2020年3月21日(土)
桜井ハルコ
バースデイ・ライヴ
ピアノ:日野香織
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
    ライヴ料 500円
どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪
2020年3月20日(金・祝)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.26
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。

<お問い合せ・お申込み>
 日本シャンソン館事務局
 TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
 営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

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創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-1

 幸福を売る男

芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

 創作シャンソンとフランス版『くらしの窓』-1

 松井八郎先生は素晴らしい才能に恵まれたジャズ・ピアニストであり、作曲家であり、アイデアマンである。『くらしの窓』以来、すっかり仲良しにさせていただくようになり、私は自分で書いたいくつかの詩を先生にお見せすると、先生はその場で詩にメロディーを付けてくださった。まず私の旅の印象を歌にした「南国薩摩の白餅」1鳥取の砂丘」から始まり、「僕の日記帳」「水戸の梅」と続いた。これらは『くらしの窓』のなかで発表し、自主リサイタルでも歌い、地方公演でも歌った。『くらしの窓』でいちばん投書の多かったのは「水戸の梅」である。祖父の転勤先、水戸で生まれたと聞く私の母を歌ったものである。

「水戸の梅」

      詞 芦野 宏
      曲 松井八郎


 ぅちの母さん水戸生まれ 水戸の名物梅の花
 それに因んで名は梅子
 若い頃には鶯を 鳴かせたこともあるそうな


 その名の如く忠実に 生めよ殖やせよ七人も
 子供が出来て 末の子が 今ここに居るこの私
  歌の好きなの 親ゆずり

三 (バラードで)
  むかし歌の大好きな 梅のつぼみも年をへて
  梅干風になったけど
  いついつまでも梅の木は
 丈夫で枯れずにいて下さい

 大した歌と息われないのに、全国からこの歌のアンコー~・リクエストをいただき、私の母は人気者になった。ひと目、水戸の梅のお母さんにお会いしたいという、お手警直接いただいたこともある。テレビの影響力はじつに大きいものである。のちに民放各社が目をつけてモーニング・ショーを始めたのも、『くらしの窓』がこんな早朝でも二五パーセントの視聴率を上げたことにあるのかもしれない。

2020年 22月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
2月1日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
2月2日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
2月8日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野敦子
2月9日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代
2月11日(火) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
2月15日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野香織
2月16日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:江口純子
2月22日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
2月23日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:中野宏美
2月24日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
※ピアニストの変更がありました(2020. 1. 25)
2月29日(土) 11時~/14時~ 江口純子 ピアノ弾き語りライヴ
(2017年内幸町ホールアワードシャンソンコンクール最優秀賞 受賞)

3月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
3月1日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
3月7日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
3月8日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月14日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月15日(日) 11時~/14時~ 宮崎名緒子  ピアノ弾き語りライヴ
(日本シャンソンコンクール2018グランプリ受賞者)
3月20日(金) 14時~ のど自慢vol.26 ピアノ:大美賀彰代
3月21日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:日野香織
3月22日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
3月28日(土) 11時~/14時~ 秋山美保      ピアノ:大美賀彰代
3月29日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子

2020年3月21日(土)
桜井ハルコ
バースデイ・ライヴ
ピアノ:日野香織
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
    ライヴ料 500円
どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪
2020年3月20日(金・祝)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.26
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
————————————————-

観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

2020年2月15日(土)・16日(日)
??バレンタイン??
シャンソン・ライヴ

?ライヴをお聴きになるお客様に
チョコレートをプレゼントいたします?
●出演●
15日(土)…小林美恵子、日野香織(ピアノ)
16日(日)…桜井ハルコ、江口純子(ピアノ)

時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
    ライヴ料 500円

<お問い合せ・お申込み>
 日本シャンソン館事務局
 TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
 営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なかにし礼との出会い-

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

なかにし礼との出会い-3

さて、フランスでは外国の良い歌はすぐにフランス語に直して歌い、シャンソンとして流行させてしまう傾向がある。古くはイタリアのカンツォーネ、たとえば 「ルナ・ロッサ」 がある。
「赤いお月さま」という意味だが、リユシエンヌ・ドリールがフランス語で歌って大ヒットし、日本でも大流行した。フランス人はあまり人種差別をしない国民性だと聞いているが、音楽も国境を感じさせないように思う。エンリコ・マシアスのCDのなかに中村八大作曲の 「遠くへ行きたい」が入っていてフランス語で歌われているが、シャンソンとして大手を振って愛唱されている。私が歌っている「パリの夜」は藤浦恍作詞・原六朗作曲であるが、薮内宏さんの仏
語詞でフランスの女性が歌ったのを聞いたことがある。日本は音楽文化の後進国ではあるけれど、戦後五〇年も過ぎた今、やっと一人歩きできるようになってきたように思える。そん窒息味で、日本人の作った「知りすぎたのね」をフランスのトップ歌手の一人であるリーヌ・ルノーに歌ってもらい、CDに収めていただいたことは嬉しい。

ーーーー
ありがとういつまでも巴里

芦野 宏

あの日歩いた道を 今も忘れはしない
夢を見ているような あの眼差しさえも
ンコルドの広場で 歩き疲れた二人
それでも抱き合って 踊ったワルツ

セーヌの川岸で 走りゆく小舟に
ふざけて手を振った 若かったあの日
あれから世界中の旅を続けたけれど
どこの街にきても 思い出すパリ
ミモザの花咲くパリ マロ土エの散るパリ

冬の厳しささえも 懐かしいパリ
いつも私達を優しく包んだパリ
初めて私達が 出会った街だから

恋が芽生えたのも 愛を育てたのも
二人寄り添いながら 歩き続けた街
あの日であった道を 今も歩いてゆく
ありがとう いつまでも あたたかいパリ
ありがとう いつまでも 思い出すパリ

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2020年 22月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
2月1日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
2月2日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
2月8日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野敦子
2月9日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代
2月11日(火) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
2月15日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野香織
2月16日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:江口純子
2月22日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
2月23日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:中野宏美
2月24日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
※ピアニストの変更がありました(2020. 1. 25)
2月29日(土) 11時~/14時~ 江口純子 ピアノ弾き語りライヴ
(2017年内幸町ホールアワードシャンソンコンクール最優秀賞 受賞)

3月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
3月1日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
3月7日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
3月8日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月14日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月15日(日) 11時~/14時~ 宮崎名緒子  ピアノ弾き語りライヴ
(日本シャンソンコンクール2018グランプリ受賞者)
3月20日(金) 14時~ のど自慢vol.26 ピアノ:大美賀彰代
3月21日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:日野香織
3月22日(日) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:大美賀彰代
3月28日(土) 11時~/14時~ 秋山美保      ピアノ:大美賀彰代
3月29日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子

2020年3月21日(土)
桜井ハルコ
バースデイ・ライヴ
ピアノ:日野香織
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円
どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪
2020年3月20日(金・祝)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.26
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
————————————————-

観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

2020年2月15日(土)・16日(日)
❤❤バレンタイン❤❤
シャンソン・ライヴ

❤ライヴをお聴きになるお客様に
チョコレートをプレゼントいたします❤
●出演●
15日(土)…小林美恵子、日野香織(ピアノ)
16日(日)…桜井ハルコ、江口純子(ピアノ)

時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

<お問い合せ・お申込み>
日本シャンソン館事務局
TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

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なかにし礼との出会い-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

なかにし礼との出会い-2

 なかにし礼さんは、その後、作詞分野でもめきめきと頭角を現し、歌謡界の寵児となり一世を風摩した。レコード大賞も何度か受賞し、そうした活躍で日本一収入の多い作詞家として話題を集めているころ、週刊誌のなかで私はこんな記事を見つけたことがある。「振り返ってみると、一時期、ぼくの歌に色気ぬきの訳詞の時代があった。いまそれを集めてみたら、ほとんど声野宏のために書いたものであった」という談話である。なるほど、なかにし礼さんの膨大なヒット曲、それらはすべて男女の愛がテーマのものばかりである。あのころ、私がNHKテレビでお茶の間向けの番組のなかで歌うことを意識されて、次々と書いてくれた歌を思い起こすと、うなずけるものがある。「ワルソーのピアニスト」「旅芸人のバラード」 のような名曲にも男女の影は見えない。
(注)
なかにし礼は日本レコード大賞三回、同作詞賞二回、ゴールデンアロー音楽賞など受賞。クラシックの分野での活躍も目覚ましく、歌曲・アリアの訳詞、オペラ台本の執筆・演出、放送や著作など多彩な 活動ぶり。日本音楽著作権協会理事長、鎌倉芸術館芸術監督などを歴任。

 なかにし礼さんはシャンソンの訳詞から始まり、流行作詞家としてナンバーワンの栄誉を勝ちとると、しばらくして流行歌はいっさい書かないと宣言した。そして自費を投じてパルコ劇場を五日間借り切ってシャンソン・コンサートを開き、そのライヴCDの制作に踏み切った。
シャンソンの訳詞は流行歌に比べたら、印税が入ることは少なく、原稿料だけの場合が多いだろうから、比較にならないほど収入が少ない。それでも彼はあえてシャンソンを取り上げてくれた。自分が詩を書くきっかけとなった銀巴里が閉鎖されることを記念して『さらば銀巴里』
というCD五枚組を発売したのである。すべてが「なかにし礼」訳詞によるもので、石井昌子(祥子)、川島弘といった古い銀巴里の仲間たちが集まって歌ったが、そのうちの一枚は芦野宏のステージであった。ほかに出演者は深緑夏代、旦口同なみ、仲代重吉、仲マサコ、しますえよしお、田代美代子、阿部レイ、堀内環、戸川昌子、真木みのる、の皆さん。
なかにし礼さんのシャンソンに対する思い入れ、そしてシャンソンを愛する気持ち、それが私にはとても嬉しくてならない。彼が作詞作曲した 「知りすぎたのね」を「チユ・アン・セ・トロ」と仏訳し、リーヌ・ルノーと私が久しぶりにデュエットでCDを出したことは既述したが、なかにし礼さんは作詞の才能だけでなく作曲の面でもヒットを飛ばし、この曲もそのなかの一つで、メロディーの動きがヨーロッパ風でおもしろかったので取り上げてみた。リーヌもたいへん気に入って、フランス語で歌ったCDを大切にしてくれている。


なかにし礼との出会い-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

なかにし礼との出会い-1

(注)
テレビの普及(受信契約数)
 昭和三十二年(一九五七)
昭和三十三年五月
昭和二十四年四月
昭和三十五年カラー放送開始
昭和三十七年三月
昭和三十九年十月
とカラー放送について
五〇万台突破
一〇〇万台
二〇〇万台(四月一〇日、皇太子殿下(現・天皇陛下)ご成婚〉
NHK(∵日平均三七分)日本テレビ(一目平均一時間四五分)
一〇〇〇万台突破(普及率四八・五%)『くらしの窓』始まる
(東京オリンピック開催でテレビ普及率さらに急伸)

なかにし礼との出会い-1

『くらしの窓』では、各テーマ・コーナーは歌のコーナーをはさんで転換するしくみになっていた。毎回自分の歌いたい曲を二ないし三曲歌うのである。歌うとき私は一瞬、自分を取り戻した。料理のコツとか美容の秘訣、スカーフの巻き方、そんなコーナーで専門家に質問したあと、一曲歌うと救われる気分になったものである。
幸い私は、前にも述べたように、ラジオ番組で新しいシャンソンをたくさん勉強させてもらつていた。だから週三回、一回に三曲を歌っていくのに不足はなかった。イれでも新たにレパートリーを増やしていき、あのころの私の勉強は旅の車中から飛行機の中まで、いつも楽譜を持ち歩いて新曲に挑んでいた。こうした苦労はいま思い返してもさわやかで、ちっとも苦労とは思わなかったし、好きなことなので逆に積極的になるから健康状態もよく、病気などしたこともなかった。
訳詞のほうも薩摩さんに続いて、当時まだ立教大学仏文科の学生であった、なかにし礼さんと出会ったのはこのころのことであり、ジルベール・ペコーの曲を中心に新曲がどんどん増えていった。なかにし礼さんは学生時代からシャンソンが好きで、銀巴里に出入りしているうちにシャンソンの訳詞がしてみたくなり、歌い手たちのためにアルバイトで詞を書いたことが始まりだと聞いている。市ヶ谷の私の家に釆てもらい、フランスから取り寄せた原譜を渡して次々と訳詞をお願いした。
銀巴里からの帰り道ですといって市ヶ谷に立ち寄ってくれたこともたびたびであるが、私がピアノを弾きながら歌ってみて、少しでも歌いにくいところがあると、すぐに持ち帰り、翌日は二通り、三通りの訳詞を持って現れる。若き日のなかにし礼さんには脱帽した。この人は天才だ。きっと将来大物になる人だと、いつも心に思いながら付き合っていた。なかにし礼さんの書いてくれたペコーの曲は次々と『くらしの窓』のなかで歌われていった。「白い舟」「いない人」「もしもお金があったら」「ぼくの仲間たち」……。私は夢中で新曲と取り組み、彼も頑張ってくれた。


明けましておめでとうございます。

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

NHKテレビ『くらしの窓』-5

 『くらしの窓』は主人を勤めに送り出した家庭の主婦たちの評判をとり、二、三か月もすると、視聴率がぐんぐん上昇し、全国どこへ行っても皆さんに、朝のさわやかな番組として知られるようになった。ところが本人にとっては、収録が夜中でもテーマソング「あかるい朝です。
あなたの朝です。みんなの朝です。ボンジュール、ボンジュール」と歌いながら、さわやかに司会しなければならないつらさがあった。
週に三本、内容は違っても酷似したテーマで、ゲストの先生が違うだけ、台本に書いてあってもうっかり間違えそうになる。もし間違えたら、また撮り直しだからスタッフの皆さんに迷惑をかけることになる。そんな恐怖心から、私はカンニングを始めた。カメラのすぐ横に大きな文字で要点だけを書いたものをスタッフに持っていてもらい、次々と場面が変わるごとにカンニングペーパーも変えるのである。この方法を思いついてから少し気が楽になり、スタッフの協力がありがたかった。

———

ヒトリデ過ゴスオ正月

芦野 宏

ソラカラ
ナニカキコエテクルヨウナ
メデタイ オ正月
松カザリヤ オソナエモ
ミンナ ニギヤカナココロデ
黙ッテイル

オロシタル
キモノデハナイケドモ
ナルベク
シワガヨラナイヨウニ
キチント
襟元ニ気ヲツケテ
誰カヲ待ッテイルンダ
ダアレモ来ナイ オ正月

小鳥ヤ
深海魚ヤ
猫ダケガ
僕ノ応接間ノオ相手サ
ソレニ鳩時計モ
ダンロノ火モ
燃エテイルンダゼ

リリリリリントベルガナル
サット椅子カラ立上ガル
サテコソ待ッテル
オ客サマ
ネコヲ膝カラ「ニャン」ト捨テテ
玄関ノ戸ニ手ヲカケル
「ナーンダ 郵便カ」
ダアレモ来ナイ

ソレデモ僕ハ淋シクナインダ
ダレカガ キット ドコカデ
ボクヲ淋シク待ッテテクレルカモ
シレナイモノネ

------

NEW
2020年 1月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
1月11日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
1月12日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子
1月13日(月) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:安藤伸彦
1月18日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
1月19日(日) 14時~ 新春・紅白 のど自慢 vol.25  ピアノ:大美賀彰代
1月25日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安部なおみ
1月26日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代


NHKテレビ『くらしの窓』-4    

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

NHKテレビ『くらしの窓』-4

『くらしの窓』には「会ってみたい人」というコーナーもあった。一週に一人、リクエストによりゲストが決まり、私がインタビュアーをしていた。森繁久弥さん、淡島千景さん、丹波哲郎さんといったベテラン俳優から話題の新人まで、予備知識のメモを見ながらいろいろお尋ねするわけだが、どうも私にとってはこのコーナーがいちばん苦手であった。次のコーナーで歌になると、やっとホッとして自分の世界に戻れるのだった。
ゲストに中村メイ子さんを迎えたときのことである。彼女は抜群に頭の回転が速い女性だから、私のほうが楽なのではと、少々油断した気持ちがあったのかもしれない。いざ本番、カメラが回りだすと、メイ子さんがあまり喋ってくれないのである。私の尋ねたことに対しては的確なご返事をくださるのだが……。私は冷や汗をかきながら、その七分ぐらいのコーナーを切り抜けたことを今でも覚えている。
いつも完壁な司会をされるメイ子さんが、今度は逆の立場で私からインタビューされるということで、ご自分のお喋りを控えめにされたのだと思う。昔からの知り合いなのに、ちょっと歯車がずれて戸惑ってしまったのだ。このコーナーは一年間続いたが、私はインタビュアーに向いていないことがよくわかった。
『くらしの窓』が始まったころはカラー化が二年前から少しずつ始まっていたようだが、ほとんどの番組はモノクロであった。だからファッションやおしゃれのコーナーでは、いちいち色の説明をしなければならなかったが、それでもあのころは最先端をいく番組として注目を集めていた。
私はまだ三十代の働き盛りで、コンサート活動も全国的に展開していたので、週三本のこの番組は一目で収録しなければならなかった。午前八時に開始して一本平均五時聞かかったから、三本日が終わるのは夜の十時を過ぎていた。その間、スタッフと一緒に小さなお弁当を食べる休憩時間が三〇分ほどあるだけで、スタジオから一歩も外に出ることはできない。なにかの都合で段取りが悪いと、夜中の二時ごろまでかかることもあり、翌日は七時の飛行機で北海道公演に出かけ、終わって翌日、九州で三日間の仕事などをしたこともある。若かったし、やる気があったし、いくらつらくーーーーても会場で満員の聴衆が自分を待っていてくれると思うと、疲れを忘れた。

ーーーーー

日本シャンソン館
2020年 1月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
1月2日(木) 11時~/14時~ 新春シャンソンショー 原れい子  ピアノ:江口純子
1月4日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野香織
1月5日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
1月11日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
1月12日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子
1月13日(月) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:安藤伸彦
1月18日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
1月19日(日) 14時~ 新春・紅白 のど自慢 vol.25  ピアノ:大美賀彰代
1月25日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安部なおみ
1月26日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代


NHKテレビ『くらしの窓』-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

 

日本シャンソン館からのお知らせです。

12月21日(土)12:00~13:30
フジテレビの娯楽・旅番組
「ぶらぶらサタデー・タカトシ温水の路線バスの旅」
この中で、出演者一行が日本シャンソン館に立ち寄りました。
その時の様子が番組の中で紹介されます。
・・・
「紅葉残る伊香保~もつ煮の聖地まで!100日まいたけの絶品バター炒め&赤の魅力の河鹿橋で焼きアユを堪能!行列もつ煮・名店の味そのままの自販機も必見!」
タカトシ温水の路線バスの旅は、みなさまの町の隠れた穴場や素敵な観光スポットを路線バスを乗り継いで旅をし、楽しいゲストと絶品グルメを食べながら街を再発見!
皆さんも休日気軽に行けるような場所をご紹介します。
・・・
お時間ございましたら是非ご覧ください。
番組および出演者は下記から知ることができます。
https://www.fujitv.co.jp/burabura/

-----------------

12月22日(日)14:00開演~1X:00
クリスマス・コンサートのご案内です。
まだ少し、チケットに余裕があります。
宜しければ奮ってご参加ください。
時間: 開場13:30 開演14:00
料金:一般7,000円/友の会会員価格6,500円/29歳以下の方3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
<お問い合せ・お申込み>
日本シャンソン館事務局
TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

NHKテレビ『くらしの窓』-3

 平成八年(1998)、パリ市長シラク氏がフランス大統領に就任されて初めて来日の折、赤坂離宮の迎賓館における迎賓会に招待を受けた。私はその日のうちに群馬の「日本シャセン館」に行かをければをらなかったので、少し早めに赤坂の会場に到着した。夜の迎賓館はまだ人影もまばらで、やたらと警備のSPや警官の姿が目立ったが、私の少し前を黒いドレス
に身を包んで、うつつむき加減の女性が階段を上っていた。近づくと、それは森英恵さんであつた。レセプション会場まで白い大理石の廊下をゆつくり二人で歩きながら、森さんはご主人がつい一週間前に亡くなられたことを話された。寂しそうな面持ちで、私は慰めの言葉を申し上げる間もなく、やがて二八はサロンの前でほかの招待客と合流し、華やかなシャン
デリアの光の中に包み込まれてしまった。森さんは、あれからすぐ外国や国内でのお仕事で多忙を極めておられるご様子だったが、その翌年の十二月にクリスマス・ディナーショーで私が歌ったとき、NDK(日本デザイン文化協会)会長としてお元気な姿を見せてくださった。
フランス料理とテーブル・セッティング、テーブルマナーのコーナーで、その先駆者として有名な飯田深雪先生は、「アートフラワー」の創始者としても知られている。終戦後いち早く、古いビロードの布地で作った「ケシ」の花が最初の作品だと伺っているが、私がデビューしてまもなく「コクリコ」というシャンソンをピアノの弾き語りで歌うとき、素晴らしい深紅の「ケシの花(コクリコ)」が届けられた。これを原語で歌う私のために、葦原邦子さんがナレーションを付けてくださった。飯田先生と親しかった葦原さんからお願いされたものだと思っているが、その実っ赤なヒナゲシの花は、「コクリコ」を歌うとき、いつも黒いグランドピアノの上に置かれ、そこだけに一筋の照明がくるように演出されていた。
まるで生きもののように見えるその花は、ステージに飾られないときは、ガラス戸棚に入っている。その後、飯田先生には『くらしの窓』でたびたびお目にかかるようになり、先生のお人柄、人格、お仕事すべてを尊敬する気持ちから、その古いコクリコの花は今でも大切に保管している。


NHKテレビ『くらしの窓』-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

NHKテレビ『くらしの窓』-2

『くらしの窓』は午前九時から三〇分間、家庭の主婦向けの番組で、料理と食事マナー、おしゃれのポイント、来客のためのテーブル・セッティングなど、毎日の生活を豊かにするさまざまなコーナーが作られており、一つのコーナーが終わるごとの合間に私の歌が挿入される、という構成であった。
料理の江上トミ先生は当時、人気絶頂で話術も達者、あの独特の笑顔は格別であった。新宿・市ヶ谷の坂の途中に先生の江上料理学院(現院長・江上栄子)があり、その坂を上りきった右手が私の家だったから、隣組みたいな親近感もあった。私がシャンソンを一曲歌って、料理のコーナーへ行くと、まず第一声「芦野先生のシャンソンは、おいしそうに歌ってくださいます。きっと皆様も食欲がお出になって、今日の料理もおいしく召し上がれますよ」と言って始まるのである。笑顔と話術にプラス、まごころをこめた手料理でいつもいつも江上先生のペースに巻き込まれてしまい、ただただうなずき、感心していればいい、というふうにこのコーナーは進行するので、ありがたかった。
清水とき先生は和装のコーナーを受け持たれ、姿勢のいい先生という印象を持ち続けている。
いつも髪を一糸乱れず結い上げておられる、
九九七年、「清水学園八〇周年記念」 のイべントがあり、私もご招待を受けたが、お母様の創立された学園を受け継いで、さらに大きくされ、和装文化に貢献されているお姿には頭の下がる思いである。
洋装は田中千代先生と森英恵さんであった。田中先生はこの道の先駆者で、昭和天皇の皇后陛下のお召し物をデザインされたり、欧米で日本人として初めてファッションショーを開かれたりした方で、森さんも田中先生をたいへん尊敬しておられた。森英恵さんは私とほとんど同年輩であり、当時としては若手・新進のデザイナーであったから、私も同級生みたいな気持ちで親しくお話しできた。いずれにしてもお二人ともたいへん気さくな方で、とても大先生と思われないような気軽な態度で私たちに接してくださり、今でもときどきお目にかかる機会があると昔話に花が咲き、『く

日本シャンソン館

12月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
12月1日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
12月7日(土) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:日野香織
12月8日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子
12月14日(土) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:江口純子
12月15日(日) 14時~ ラクレデシャンのクリスマスコンサート
12月21日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:安藤伸彦
12月22日(日) 14時~ 日本シャンソン館 クリスマスコンサート

NEW
2020年 1月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
1月2日(木) 11時~/14時~ 新春シャンソンショー 原れい子  ピアノ:江口純子
1月4日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野香織
1月5日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
1月11日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
1月12日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子
1月13日(月) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:安藤伸彦
1月18日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
1月19日(日)  14時~ 新春・紅白 のど自慢 vol.25  ピアノ:大美賀彰代
1月25日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安部なおみ
1月26日(日) 11時~/14時~  桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代

日 時
2020年1月19日(日)
日本シャンソン館
新春・紅白
のど自慢 vol.25

ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
————————————————-

観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

2020年1月2日(木)
日本シャンソン館
新春シャンソンショー

出演:原れい子、江口純子(ピアノ)
時間:第一回公演11:00~ / 第二回公演14:00~
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」

2019年12月15日(日)
日本シャンソン館
ラクレデシャンのクリスマスコンサート

出演:ラクレデシャン、原れい子(進行)、大美賀彰代(伴奏)
※ラクレデシャンとはシャンソン館でシャンソンを学ばれている皆さんのグループ名です。
時間: 開場13:45 開演14:00
料金:一般2,000円/友の会会員価格1,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」

チケットは日本シャンソン館でお求め頂けます。

2019年12月22日(日)
日本シャンソン館
クリスマス・コンサート

出演:【ゲスト】芹 洋子
原れい子、小林美恵子、山添恵子、小林ちから(ピアノ)
時間:開場13:30 開演14:00
料金:一般7,000円/友の会会員価格6,500円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」

日本シャンソン館でお求め頂けます。
2019年12月19日(木)
シャンソンの花束
~日本シャンソン協会福山支部コンサート~ ※延期しておりました10月4日のコンサートです。
出演:日本シャンソン協会福山支部有志(7名)、角堂りえ(ピアニスト)
開演14:00
入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

らしの窓』のころの話が出たりする。


NHKテレビ 『くらしの窓』-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

NHKテレビ 『くらしの窓』-1

「くらしの窓」

詞 松岡励子
曲 松井八郎
あかるい朝です あなたの朝です
みんなの朝です おはよう
窓をあけて ちょっとひと息
ちょっと花に水を やりましょう
広い空に あわのように ひろがってゆく
あまいあまい花のかおりが
いっぱい いっぱい ひろがってゆく
あかるい朝です あなたの朝です
みんなの朝です ボンジュール ボンジュール

毎朝九暗から始まる『くらしの窓』のテーマソングである。番組は昭和三十七年(一九⊥ハ一▲ニ四月から四年間続いた。初めて日劇のステージを踏んだとき、レコード会社専属をお断りした件で列大のごとく叱られた松井八郎先生とも和解して、このテーマソングは松井先生の肝いりで作られた。『くらしの窓』はウイークデー五日間の放送だが、私の総合司会と歌の担当は月水食の三回で、ほどなくして午後に再放送されることにもなり、このテーマソングはお茶の間にすっかりお馴染みになってきていた。
NHKの番組担当者からこんな投書を見せられた。「四歳になる子供がボンジュールおじさんの歌をいつも聞いています。私もシャンソンが大好きです。たくさん聞かせてください」。
いつの間にかボンジュールおじさんのあだ名をいただいた私は、番組で三曲歌うなかで必ず子供にもわかる楽しい歌を入れることにした。たとえば「パパと踊ろうよ」とか「サラダのうた」「カナダ旅行」「ナポリの山賊」「かえるのうた」などである。
これらのシャンソンは、それまで日本ではあまり紹介されていなかった分野だったから、全国的に新たなシャンソン・ファンが増えて、やがてNHK『みんなのうた』にも取り上げられるようになり、嬉しく思っている。デビュー以来、訳詞の面でお世話になっている薩摩思さんは、こういった明るいシャンソンをたくさん書いてくださって、シャンソンの暗いイメージを一変し、大衆に近づけてくれた功績に対する感謝を忘れてはいけないと思っている。
また、フランスでは当たり前のことなのだが、ちょっと皮肉っぼいシャンソンや、人をからかった内容のもの、コミックなもの、そんな分野も薩摩さんは開拓してくださり、私もたいへんレパートリーが増えて助かっていた。「可愛いアイルランド娘」「蝶々とり」「ルルウ踊り場のピアノ弾き」 「三文ピアノ」などである。
薩摩思さんは、前にもプロフィールを紹介したが、NHKラジオ歌謡にも「木立の中に秋が
いる」をはじめ数々の名作を残し、テレビの 『くらしの窓』 のなかで私が歌ったシャンソンはデビュー以来のコンビで取り上げ増やしてきた薩摩忠訳のものが大部分を占めている。


「パパと踊ろうよ」-4

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

「パパと踊ろうよ」-4

 薩摩忠は第四回室生犀星詩人賞、第九回翻訳出版文化賞など受賞。NHKラジオの深夜番組『夢のハーモニー』で朗読される詩を長年担当された。また、教科書や教育テレビに採用された「まっかな秋」「冬の行進」など、童謡や創作歌曲、外国歌曲の訳詞も数多い。こうした活動に関連の深い『波の会』(現「新・波の会」 の前身) の重鎮である。
この会は昭和四十年に声楽家・四家文子(故人)、国語学者・金田一春彦、両先生を中心に1美しい日本語と香り高い歌を」をスローガンとして結成され、芦野宏も会員であり、令王催のコンサートにたびたび出演。
薩摩ファンを自任される金田一先生は、『芦野宏四〇周年リサイタル』のプログラムに一文を寄せられた。
「国語学者から見た芦野さんの歌は、どんな高い声で歌っても、どんなに速〈歌っても、一つひとつの音がはっきり聞かれるということである。これは案外難しいもので、ソプラノ歌手などの中には、ただいい声でいい節で歌うということにばかり心が行って、聞いていて歌詞が全然聞きとれない人がある。
これは勿体ないことで-というのは、日本語は世界で類のない美しい言葉で、例えば『枯れ葉』という言葉はフランス語では、Lesfeu≡esmOrteSというが、これは『死んだ葉』と言う意味だそうだ。
ぁの有名なシャンソンを日本語に逐語訳したら、♪死んだ葉よ……となるそうだが、それはまずい。H本語には『死ぬ』のほかに『枯れる』という言葉があるので、♪枯れ葉は……と薩摩思さんの名訳がつき日本人の心をとらえたと思う。
日本語訳したシャンソンはそういう言葉で訳されていると考えれば、芦野さんのように言葉がはっきり聞き取れるように歌って下さることは、私たちにとってたいへん有難いことだと感謝尊敬している次第である」。


「パパと踊ろうよ」-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

「パパと踊ろうよ」-3NHKテレビに『黄金(きん)のいす』という木曜夜八時からの三〇分番組があった。ポピュラーな音楽界の第一人者が登場する、ドキュメンタルなバラエティショーである。カラー放送も始まって五年、昭和四十年十二月九日「みんなのシャンソン」というタイトルで、芦野宏がその椅子に迎えられた。当日の案内には、次のように記されている。
「芸大を卒業後この道に入ってからすでに十数年、今やシャンソン界はいうにおよばず、音楽界全般にわたってもベテラン歌手として活躍する芦野さんは、日本のシャンソン界に独自のジャンルを切りひらいてきた。今までシャンソンは芸術青年や文学少女など読の人たちの好む〈夜の歌〉であった。ところが芦野さんはそれを明るく健康的なホームソングとしてとらえ、家中そろって歌える歌として紹介
してきた。今夜は芦野さんのこういった面にスポットを当てながら彼の横顔をさぐつていく。
まず彼の隠れた一面である、ユニークな自筆のイラストをタイトルバックに幕が上がる。曲は彼が最も好きだという1ラ・メール」、つづいて芦野宏ヒットメドレーで明るく健康的な歌を聞かせる。
「幸福を売る男」「風船売り」「サラダのうた」「三文ピアノL、そしてサロンに集まった皆さんとともに「カナダ旅行」を合唱する。ゲストは秋山ちえ子、服部公一、声の会、音羽ゆりかご会、司今宮田輝」(朝日新聞、昭和四十年十二月九日)


「パパと踊ろうよ」-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

「パパと踊ろうよ」-2

 私はもともと歌が好きで音楽の道に進み、いつの間にかシャンソンを歌うようになっていたので、どうしても音楽的で同時にフィーリングのわかる歌のほうに惹かれていく。正直なところ、内容を味わってシャンソンを楽しむところまでは手が届かなかった。だから、クラヴォーやトレネ、モンタンなど声に魅力があってしかも音楽的に十分堪能できる歌手に憧れていた。
しかしそのうち、イヴェツト・ジローやアニー・コルディなどが歌う明るくてサラッとした内容の歌が好きになってきた。ジョルジュ・ゲタリ(エジプト生まれギリシャ系歌手)も楽しかったし、当時オペレッタ界で光り輝いていたルイス・マリアーノ(スペイン系の慧的歌手)の歌はとくに素晴らしかった。歌の内容は難解なところがなくて、だれにでも楽しめるわかりやすいものだった。
フランス人は覚、毒すい、楽しめるシャンソンを家庭でも歌っていることを知ってから、私は日本に帰ったら、明るいシャンソンをたくさん歌おうと思って楽譜やレコードを買いあさっていた。帰国してからNHKの『紅白歌合戦』でも、「風船売り」「幸福を売る男」1パパと踊ろうよ」など、お茶の間に入り込んでいける曲を意識して歌っている。
それまでシャンソンというと、ダミアの1暗い日曜日」とか1人の気も知らないで」き失恋の歌が多く、また戦後も「枯葉」の大ヒットによって、日本ではなぜか暗い悲しい歌という印象が濃かったのだ。
私は子供たちも歌、孟シャンソンをたくさんお土産に持ち帰ってきた。私の帰国を首を長くして待っておられた、薩摩思さんが訳詞をされ、それらの明るいシャンソンはコン丁トやマスメディアを通して広まったので、世間でもシャンソンに対する見方や考、貢が変わってきたように思う。のちにNHKから『くらしの窓』という番組に指名されて、朝の連続司会者として起用されることになったのも、歌のイメージが明るく家庭的なシャンソンを歌うからではないかと思っている。


「パパと踊ろうよ」-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

「パパと踊ろうよ」-1

 アンドレ・クラヴォー(魅惑的な歌声の歌手) の歌う心温まるシャンソン「パパと踊ろうよ」。こんな歌が流行歌として通用するフランスはいいなと思っていた。
初めて私がパリを訪れたとき、のちに専属契約を結ぶ東芝レコードの関係でパリのEMIレコードの制作部長さんとお会い一する機会があった。西も東もわからぬまま、通訳の方に連れていかれてレコード会社の応接室に通されると、まず第一声は日本の著作権はどうなっているかという質問であった。昭和三十一年(一九五六)九月のことである。私はじつのところ、そのころ著作権問題について無知であり、どうなっているかなんてまったく知らなかった。
「日本でシャンソンが流行して、歌われていることはとても嬉しいことだ。しかし、いくら演奏されてもフランスに著作権料が入ってこない。ほかの国では楽譜を出版する際に必ず番号を付けて登録されているのだが、日本の場合はいったいどこでどうなっているのか」という質問なのである。私は肩身の狭い思いをし、文化後進国の恥を一身に背負わされているような気持ちで小さくなっていた。
ところが、私が持参したテープを聴いてくれた部長さんの表情が急に明るくなり、にわかに餞舌になった。「パパと踊ろうよ」である。「ムッシュー、この原盤(アンドレ・タラヴォーの歌)のなかで聞こえる子供の声はじつは私の娘なんですよ」と言われ、そのあとは和やかな会話がはずんで、やっと救われた気分になった。シャンソンの著作権問題は、その後パリでお会いしたドネ氏を通じて日本では音楽之友社(水星社)と最初に出版の契約をすることになったのだが、それまで日本で発売されていたシャンソンの譜面は、すべて海賊版と称する、正式なものではなかったのだ。
さて、昭和三十一年に初めてパリを訪れ、いろいろなシャンソンのあり方を知った私は、目から鱗が落ちる思いで方々のシャンソン小屋を歩きまわった。モンマルトルでコラ・ヴォケー ラルの出ている「トマト屋」とか、サンジェルマン・デ・プレにある五〇人くらいで満席になる寄席みたいなシャンソン小屋「ヤコブのはしご」という狭い階段に客が腰かけてシャンソンや漫談を聴く場末の小屋、また難解な皮肉ばかり歌う小さなシャンソンの部屋。レコード会社の八は、こんなところをまわって新人を発掘するんですよと冗談みたいに笑っていたが、それは本当のことだと思った。ただ、言葉のわからない私たち外国人には歌の意味を理解するのは無
理なことだ。


国際的な夫婦共作共演レコード-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

国際的な夫婦共作共演レコード-3

 リーヌ・ルノーと32年ぶりのデュエット録音 東芝EMlスタジオい992・1t・4) 昭和三十六年の五月に出会ったリーグ、と私たち二組の夫婦は、あれから三〇年以上も変わらない友情の付き合いを続けていることも嬉しい。
そして、発売は奇しくもあの時と同じパリ祭を控えた季節に、今度はリーヌ・ルノーと芦野宏のデュエットCDが昔のよしみで東芝EMIから出ることになった。曲目の一つは友人、なかにし礼の作詞作曲による「知りすぎたのね」である。幸い、リーヌもこれを承諾してくれたので、国際電話やファックスを使って打ち合わせをし、平成四年(一九九二) 十一月リーヌ・ルノーがパリから文化使節として来日し、渋谷のシアター・コクーンで交流フェスティバルのレヴューショーを行ったとき、一日滞在を延長してもらい、スタジオで録音した。フランス語訳は薮内宏さんが原詩に忠実につけてくださり、「チエ・アン・セ・トロ」と題して、二人のCDは出来上がった。なんとこれは三十数年ぶりのデュエット盤となったわけである。
 もう一曲は前と同じ「いつの日かパリに」を美野春樹氏の新しいアレンジで、リーヌがむかし覚えた日本語で再び歌ってもらった。「知りすぎたのね」の仏語版はステージでは平成五年(一九九三二ハ月十一日、東京のマリオン有楽町朝日ホール)で催した私の歌手生活四〇周年記念コンサートで初めて発表し、デュエットのCDもまずまずの売れ行きのようである。また、これを踏み台にして、シャンソン志望の後輩たちが積極的に国際交流の舞台に躍り出てほしいと願っている。
私たちの新婚旅行で初めて出会ったルル・ガステは、平成七年(一九九五)一月に八八歳の高齢で亡くなられた。日本ではNHKが衛星放送で葬儀の模様を中継したが、u-ヌが泣きながら枢のそばに立ちつくしている様子を見て胸が痛んだ。私が東京から送った哀悼の言葉に対して、リーヌからの礼状は二月八日、私の手元に届いた。


国際的な夫婦共作共演レコード-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

国際的な夫婦共作共演レコード-2

 私どもとガステ、ルノー夫妻、日仏の四人は一致協力してこのレコード制作に取り組み、私たちはリーヌに日本語を教え込んでスタジオに向かった。

シェリー あなただけなの
いつも変わらない やさしい心なの
甘くささやいて モナムール モナムール

指揮は当時話題のジェリー・マンゴー。超モダンなサウンドのアレンジは、この二曲を作曲したルル・ガステである。彼は本名をルイといい、ルルは愛称であり、世界的なヒット曲「フィーリング」(プール・トワ)やモンタンのレパートリー「ルナ・パーク」などを作曲している大家である。リーヌは一生懸命になってスタジオでは靴をぬいで裸足で頑張り、上手な日本語で歌った。私も無我夢中でフランス語で歌った。日仏両国語で歌われた、欧州でも初めてのレコードはこうして吹き込まれ、パテ・マルコニ社と、日本では輸入盤として東芝から発売された。
著作権に関して先進国のフランスでは、このレコードに関する訳詞料の印税が今でも妻の名義の銀行口座に1ASRAC(日本音楽著作権協会)を通して振り込まれる。
金額的には微々たるものであっても、私たちの新婚旅行の思い出としては大きな財産であり、毎年入金する少額の送金をよすがに思い出をかみしめている。


国際的な夫婦共作共演レコード-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

国際的な夫婦共作共演レコード-1               一

 そんな不安定な情緒のなかでも、新婚旅行中に妻は一大事業をやりとげた。二人は心を一つにして協力したのである。パリで当時二年前からレヴューに長期出演していたリーヌ・ルノー(戦後最高のレヴュー警)と出会いのチャンスがあり、リーヌの提案でとつぜん彼女と私がデュエットでレコードを吹き込むことになったからである。自分がアメリカでディーン・マーチンとデュエットして成功したから、日本人のアシノともデュエット盤を出したいというのである。曲目はリーヌのご主人ルル・ガステからの新婚祝いのプレゼント曲「モナムール(私の恋)」と、カジノ・ド・パリのレヴュー『愉楽(プレジール)』の主題歌であり、いちばんヒットしている「いつの日かパリに」の2局ではどうだろうということであった。
その自のうちに大筋がまとまり、翌日から準備にとりかかった。しかし、私たちが新婚旅行でヨーロッパに滞在するのは約一か月であり、その間にスイスの観光も考えていたから、ちょっと忙しかった。いちばん困り、そしてあわてたのは、リーヌがどうしてもワンコーラスを日本語で歌いたいといい出したことである。今のようにファックスがあれば、あるいは日本語の作詞家に頼み込んで間に合ったかもしれないが、当時はまだまだ日本は遠い国であった。
仕方なく妻と二人で考えることにして、ジュネーヴ行きの夜行列車に乗り込んだ。辞書を片手に原語の歌詞をいちいち直訳して日本語に直すのは彼女の役である。大学で日本文学を専攻していたのだから、心得がないわけではない。しかし、いつまでも残るレコードのことだからいいい加減なものはできない、とたいへんな思いであった。
歌いやすくて、イントネーションを調えて意味がわかって、となると夫婦二人で夜中までかかって協力し合い、推敲しなければ良いものができない。スイスの観光旅行はそんなことに明け暮れして、再びパリに戻ったのだった。


ハネムーン・エピソード-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-3

 当時、早稲田大学、日本女子大学、慶応義塾大学などにそれぞれシャンソン研究会と称するサークルがあり、それは現在も続いているらしいが、戦後のあのシャンソン・ブームのころ各校が競い合ってシャンソン・コンサートを企画し、私もそのターゲットにされて引っ張り凧であった。
そのような積極的なファンに囲まれていた私の前に、すべて控えめな彼女の態度は特別に光り輝いて、私はひと目で彼女が好きになった。というより、これは前世からの赤い糸でつながっていたとしか考えられない。六月十八日に生まれた私と、彼女の父の誕生日が同じであるのも不思議だし、私の母と妻が十一月生まれで、母は彼女を見たとたんに、これは宏の嫁になると直感したという。
こんなふうに皆から祝福されて結婚したのに、外国に出てたった二人きりになってみると、わがままが出てくる。彼女がいちいち私の行動を束縛し、自由を奪うような気がして腹が立ち、ハイドパークを散歩しながら、酒落のつもりで木陰に身を隠した。ハイドは隠すという意味があるからである。私も若かったのだ。彼女は迷子になったと思ってホテルに戻り、通訳の人とロビーで私を待っていた。
半分冗談のつもりでやったことが彼女にとってはこたえたらしい。それ以来、ロンドンやパリでも小さな夫婦げんかが続いた。しかし、やっとめぐり合った二人はお互いに憎み合うような、顔を合わすのも嫌なほどのけんかはせず、すぐ仲直りをした。が、それでも二人は深刻に悩み、お互いににいらいらしていた。じつは、帰国してわかったことだが、彼女は妊娠していたので、精神的に不安定だったのである。二か月にわたるヨーロッパ旅行を終えて、羽田に到着したとき、彼女は流産したのである。無知の悲しさで、ほんとうにかわいそうなことをしたと後悔している。

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日本シャンソン館の新着情報
9月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
9月15日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代
9月16日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:安藤伸彦
9月21日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:中野宏美
9月22日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:大美賀彰代
9月23日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:江口純子
9月28日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:大美賀彰代
9月29日(日) 11時~/14時~  岩崎桃子      ピアノ:日野敦子

10月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
10月4日(金) 10時30分~ シャンソンの花束 -日本シャンソン協会福山支部ツアー-
10月5日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:大美賀彰代
10月6日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:江口純子
10月12日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野敦子
10月13日(日) 11時~/14時~  岩崎桃子      ピアノ:日野香織
10月14日(月) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安藤伸彦
10月19日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
10月20日(日) 未定 原れい子カルチャー教室発表会
10月22日(火) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
10月26日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
10月27日(日)
バニョル エ シャンソン
‐車とシャンソン‐ 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代

11時45分~/14時45分~ 【野外ライヴ】
ジプシーヴァイオリン:古館由佳子
アコーディオン:オラン平賀康子

日 時

2019年10月27日(日)
日本シャンソン館主催
第7回 フランス車 オーナーズ・ミーティング
バニョル・エ・シャンソン
(裏面) 入館料
大人1,000円   小人 500円(中学生以下)
フランス車オーナー900円(ご同伴者様も割引適用) +ステッカープレゼント♪
【本館】
シャンソンライヴ(2階 シャンソニエ 「ヴェルメイユ」)
出演:小林美恵子、ピアノ:大美賀彰代
時間:11:00~/14:00~
ライヴチャージ:500円(二公演共通/入館料別途)

野外ライヴ
出演: ジプシーヴァイオリン:古館由佳子
アコーディオン:オラン平賀康子
時間:11:45~/14:45~
*入館料のみでお聴きいただけます*
【中庭】
フランス車展示
シトロエン社 2CVフルゴネット(AKS400)

フレンチ・アンティーク・マルシェ
ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ブロカント“ユイット” (フレンチ・アンティーク雑貨)

【ショップ 「ラ・ファミーユ」】
2CVグッズ(ショッピングバッグ、ミニカー…他)

【カフェ 「ロゾー」】
特別販売 フランス菓子 ミヤケ 「かぼちゃのプリン」 ※当日限定

主催:日本シャンソン館
協力:双葉自動車
後援:一般社団法人 日本シャンソン協会/群馬テレビ/上毛新聞社/エフエム群馬

フランス車のオーナー様ではない方も、是非お越しください!!

2019年9月23日(月)
小林美恵子
バースデイ・ライヴ
ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

*水曜日休館*
〒377-0008 群馬県渋川市渋川1277-1
TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
営業時間 9:30~17:00
E-Mail:bureau@chanson-museum.com

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ハネムーン・エピソード-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-2

 また、前大蔵大臣で当時の総理大臣・池田勇人氏も祝福のメッセージと記念の陶器を届けてく
ださり、今も大切にしている。駆けつけてくださったNHKの藤倉修一、高橋圭三の両アナウンサーや、藤原あきさん、佐藤美子さんほか、芸能界名士からも祝辞をいただき、東芝レコードからは野上彰先生作詩の「祝婚歌」が贈られ、作曲の大中恩氏が指揮して東京放送合唱団がこれを歌って祝福してくださった。高さ二メートルのウエディング・ケーキの前で、私は「幸
福を売る男」を歌って、皆様にお礼の挨拶をした。
すべてが夢のように輝き、五月の太陽がキラキラ光っていた。
エールフランスが、マンチェスター航路の開通を兼ねて、私たち二人に往復航空券をプレゼントしてくれたので、新婚旅行はロンドン、パリ、ジュネーヴとまわった。
新婚生活はロンドンのハイドパークに面したドーチェスター・ホテルから始まった。
ここで私たちは初めて夫婦げんかをした。婚約期間が半年以上もあったのに、デートはいつ見られていたり、第三者が介入していて、二人きりの付き合いはなかった。
外国に来て初めて二人になると、良いことも悪いことも目につき、鼻についてくる。
私は末で甘やかされて育ち、歌手になってからは付き人やファンたちに囲まれて異常にわがま大事になっていた。妻はたった一人の兄が生まれてまもなく亡くなった一人娘で、大事にられたお嬢さんである。ただ、彼女の場合は四年間、日本女子大学の寮生活をして親元を離れた経験があるのでよかったと思う。
じっは、私の長姉が日本女子大学で講師をしていて、真面目で評判の学生を私に紹介したことから、私たちのお付き合いが始まった。


ハネムーン・エピソード-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-1

 昭和三十五年(一九六〇)五月に私がパリでのレコーディングを終えてからちょうど1年たった昭和三十六年五月八日、私は羽鳥房江(由希子)と結婚式を挙げた。遅い結婚であったが、ようやくたどり着いたという感じである。なぜならば、デビュー以来仕事の忙しさは論外で、母などはマネージャーをうらみ、「うちの息子を働かせすぎないでください」と電話までしたほどである。とても結婚生活など考えられない毎日であった。1年に250回もの地方公演と、テレビが多いときで週に五本、ラジオのレギュラーが週に三本といった調子である。このまま結婚したら、うまくゆかないのは目に見そいる。私が世界旅行をして三か月間、日本を留守にしても、音楽事務所がなんとかやっていけそうなので、結婚を機に少し仕事を減らそうと考ぇて菊池維城氏にもそのように伝えた。
五月八日は夜来の雨も昼過ぎにはすっかり上がり、青空が広がって新緑が美しく目に沁みる素晴らしい日であった。場所は、いま庭園美術館になっている芝の迎賓館である。挙式のあと約五〇〇人の客を招待し、広い庭園の中に模擬店を出してもてなした。仲人は、私がデビューのときレコード会社の対立で苦労した経験があるので、音楽畑の先生は故意に避け、学生時代からお付き合いのあった画家の東郷青児ご夫妻にお願いした。
一人娘のたまみさんに学生時代に家庭教師として音楽を教えていたので、快く引き受けてくださった。
披露宴には、妻の実父・羽鳥久雄が銀行家であることから、当時の大蔵大臣・福田剋夫先生が、実業界からも鹿島守之助ご夫妻が出席してくださり、なかなか盛大なパーティーになった。


劇場・小屋めぐりとテレビ出演-6

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

劇場・小屋めぐりとテレビ出演-6

 カイロの土産屋で買ったときは、それほど感じなかったのに、パリに持帰ったら、まったく私には合わないように思われたのだ。
香りにもいろいろな文化があり、どうやら私にはパリの香水のほうが相性がいいようだ。
二つの大きな旅行鞄の中には、タロード・ヴァゾーリの書いたオーケストラ用の譜面が四曲分と、パテ・マルコニ社で吹き込んだカラオケのオープンリール・テープも入れた。世界の各地をまわって集めた、小さな民族人形も詰められていた。.
昭和三十五年の旅は、ホノルルを振り出しに、
ロサンゼルス、ニューヨーク、ブエノスアイレ
ス、リオデジャネイロ、そしてパリ。さらにパリを起点としてオーストリアのヴイエナ(ウィーン)にも足を延ばした。じつはヴイエナ放送のテレビ番組から出演依頼があり、パリのホテルから電話で話し合ったが、生番組であるためスケジュールが合わず取りやめざるを得なかった。あとでドイツのデュッセルドルフで歌うときに、ウィーンにも立ち寄ってみた。ヴイエナテレビの規模があまりにも小さいのには驚かされた。スタジオも一部屋だけで、あのころH本ほアメリカに次いで最もテレビ技術や設備が進
んでいたのだということが、ヨーロッパ旅行をして初めてわかった。
六月中旬、約三か月のレコード吹き込みを臼的とした牡界二間旅行は終わった。


劇場・小屋めぐりとテレビ出演-5

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

劇場・小屋めぐりとテレビ出演-5

 パリ滞在もあと一週間くらいになったとき、私はとつぜんエジプトのカイロで歌うことになり、エールフランスでカイエに向かった。フランス人はみなカイロのことをカイエといい、それが耳には妙に響いた。今回は土田大使ご夫妻からの招待で、ナイルに浮かぶ船上パーティーで歌った。イヴェット・ジローもこの船上で歌ったと聞いたが、エキゾティックな夜景を楽しみながら、土田大使ご夫妻が日本からたまたまカイロを訪れた柔道選手の一団と、シャンソン
歌手の私を中心に開いてくださったパーティーであった。
翌日は三菱重工に勤める長兄が当時カイロに滞在していて、私をラクダに乗せてピラミッドに案内してくれた。砂漠の中にある古風なテントでできたレストランでは、珍しい料理を食べさせてくれた。そのとき飲んだスープは、モロヘイヤという草をすり鉢ですったものだと聞いたが、日本のとろろ汁によく似ていた。昔は王侯貴族以外は、このモロヘイヤという植物を口にすることができなかったほど貴重な精力飲料だったと聞いたが、とくに美味しいものでもな
かった。今では高栄養価野菜として日本でも売られているから、珍しくはないが。
エジプトの土産は、クレオパトラの時代から有名な香水だということで、七種類の香りの詰まった小瓶を買ってパリに持ち帰り、箪笥の上に並べて置いた。二日ほどしてから、どうにもその香りがたまらなくなり、惜しいけど捨ててしまった。


劇場・小屋めぐりとテレビ出演-4

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

あれから三十数年たち、日本の真ん中、渋川市に私が建てた「日本シャンソン館」の展示室に、彼女の舞台衣装が運ばれてきた。私は目を瞠(みは)った。あのときの衣装だったような気がするからだ。開館に先立ち、パリの友人であるルル・ガステと、リーメ・ルノーに有名歌手の舞台衣装を飾りたい旨、お晦いしておいたのだが、オープンを直前に、この衣装とイヴ・モンタンの衣装が届いた。ボワイエはあのとき、紺色のロングドレスを着ていたのだから、あるいは同じものかもしれない。ポワイエも、ルルも今はこの世にいないと思うと感無量である。
夢のように暗が流れ、帰国の日もだんだん近づいてきた五月の下旬ごろ、パテ・マルコニ社が新しいスタジオ完成のレセプションをするとき、私を招待してくれた。私はトゥル土工氏に案内されて早めに会場に入り、たくさんの芸能人に紹介してもらった。ジジ・ジャンメール(シャンソン歌手、ダンサー)、ローラン・プティ (ダンサー、振付師、ジジの夫君)、アニー・コルディ (シャンソン・コミックの歌手)など、当時、パテ・マルコニ社はフランス最大の規模を
もつレコード会社だったから、ほとんどのシャンソン歌手が顔を見せるのは当然だが、私は写真でしか知らなかった人たちを目の前にして、あのときなぜカメラを持参していかなかったの190か今でも後悔している。
パテ・マルコニ社からあとで送られた写真のなかに、少し遅れて到着したジルベール・ペコーと私の抱き合っている写真があるが、四月の 『グラン・ガラ』以来、約一か月ぶりの再会をしたときのスナップである。私がパテ・マルコニーで吹き込んだカラオケを使って、テレビの『ディスコラマ』という番組に出演したのが四月の下旬だったから、客のなかには番組を見ていたらしく、珍しそうに私に話しかけてくる人もいた。

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日本シャンソン館の新着情報

8月のライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
8月10日(土) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:日野敦子
8月11日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安藤伸彦
8月12日(月) 14時~ のど自慢 vol.23
8月17日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:大美賀彰代
8月18日(日) 【中庭】
11:00~11:45
【ヴェルメイユ】
13:30~15:00 2019年 群馬県 第15回 “生きる” 小児がん征圧「天使の泉」チャリティーコンサート in 日本シャンソン館 Vol.54
8月24日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
8月25日(日) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:江口純子
8月31日(土) 14時~ 2019年プリスリーズ新人賞受賞歌手5名による シャンソンコンサート

2019年8月31日(土)
2019年プリスリーズ新人賞
受賞歌手5名によるシャンソンコンサート
出演:八田朋子、小峰里緒、SAKURA.、セニョリ~タとも夜、依田知絵美
小林ちから(ピアノ)
時間: 開場13:30 開演14:00
料金:一般4,000円/友の会会員価格3,500円/29歳以下の方3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
後援:一般社団法人 日本シャンソン協会

チケットは日本シャンソン館でお求め頂けます

2019年8月12日(月)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.23
参加者募集中
(裏面) ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
————————————————-
観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

<お問い合せ・お申込み>
日本シャンソン館事務局
TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
営業時間 9:30~17:00(水曜日休館)
*クレジットカードのご利用はできません。

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劇場・小屋めぐりとテレビ出演-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

劇場・小屋めぐりとテレビ出演-3

 五月に入ってまもなく、ある日、NHKの磯村氏からお電話をいただき、ご夫妻に連れられて、モンマルトルへ行くことになった。リユシエンヌ・ポワイエが自分の店ヘアシノさんをぜひ連れて釆てほしいと言われたとのことであった。彼女はたまたま私が出演したテレビ番組のなかで、「ラ・メール」が気に入ったから店でも歌ってほしいとのことである。五月のパリは、一年じゅうでいちばん良い季節、フォブール・サントノーレ祭りの夜だった。高級ブティック
や老舗の店頭にはそれぞれ自慢の商品がデコールされており、なんと舗道には各店の銘柄の香水が撒かれたと聞いている。五月の宵、フランス語にご堪能なご夫妻と三人でゆっくりパリの夜を散歩しながらビギヤールに出て、モンマルトルの坂道を上っていった。ダミアの住まいからそう遠くない場所に「シエ・リユシュンヌ」があった。
ボワイエは丸顔で小柄な円満そうなマダムだったが、やはりパテ・マルコニで歌手としてデビューした娘のジャクリーヌ・ボワイエクリーヌが一曲歌い、私も「ラ・メール」(ヒット曲「トン・ビリビ」)も一緒だった。まずジャを大スターの前で歌うと、彼女はたいへん喜んでくれて、お返しに有名な「パレ・モワ・ダムール(聞かせてよ愛の言葉を)をささやくように歌ってくれた。彼女は静かに、じつと動かないポーズで歌った。クープレからルフラン(繰り返しの部分)に移るところで、ちょっとだけ膝が動くと、紺色の絹のドレスが少しだけ揺れて美しい影ができた。まさに心に沁みる絶唱だった。

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日本シャンソン館の新着情報

8月のライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
8月3日(土) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:日野香織
8月4日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
8月10日(土) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:日野敦子
8月11日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安藤伸彦
8月12日(月) 14時~ のど自慢 vol.23
8月17日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:大美賀彰代
8月18日(日) 【中庭】
11:00~11:45
【ヴェルメイユ】
13:30~15:00 2019年 群馬県 第15回 “生きる” 小児がん征圧「天使の泉」チャリティーコンサート in 日本シャンソン館 Vol.54
8月24日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
8月25日(日) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:江口純子
8月31日(土) 14時~ 2019年プリスリーズ新人賞受賞歌手5名による シャンソンコンサート

2019年8月31日(土)
2019年プリスリーズ新人賞
受賞歌手5名によるシャンソンコンサート
出演:八田朋子、小峰里緒、SAKURA.、セニョリ~タとも夜、依田知絵美
小林ちから(ピアノ)
時間: 開場13:30 開演14:00
料金:一般4,000円/友の会会員価格3,500円/29歳以下の方3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
後援:一般社団法人 日本シャンソン協会

チケットは日本シャンソン館でお求め頂けます

2019年8月12日(月)
日本シャンソン館
のど自慢 vol.23
参加者募集中
(裏面) ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
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観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪


劇場・小屋めぐりとテレビ出演-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

劇場・小屋めぐりとテレビ出演-2

 スタジオに入って、またびっくりした。私のために特別に製作してくれたセットが、まるで中国なのである。担当者は得意げに胸を張って自慢した。1あなたのために特別に注文して作りました」というのである。本番まであと数時間、私は呆然としてしまったが、今さら取り替ぇてもらうこともできず、また取り替えるにも実物があるわけでもなかろう。仕方なく私はその中国風のバックの前で歌わなければならなかったのである。セットは海に向かった中国風の
テラス、そこに紫檀のアームチェアがあり、中国のランタンがつり下がっていた。ほんとうはなんの飾りもないベンチに、岐阜提灯でもあれば日本らしかったと思うが、もうあとの祭りでぁる。私はそこで「ラ・メール」を歌い、遠い東洋を思い出すという演出に従わなければならなかったのである。
しかし考えてみれば、無理もないことかもしれないと思うようになった。なぜなら、われわれがもしヨーロッパの部屋を想像で演出してみても、フランスの椅子、ドイツの椅子、イタリアの椅子、イギリスの椅子、そぞれの微妙な違いがわからないと同様に、東洋の日本と中国と韓国の区別などよくわからないのも無理はないからである。放送時間が少ないだけに、フランス人はテレビをよく見ているのだろう。あとで私がリユシエンヌ・ボワイエから招かれて、
彼女のモンマルトルの店でお会いできたのも、この番組を彼女が娘のジャクリーヌ・ボワイエと一緒に見ていてくれたからである。


劇場・小屋めぐりとテレビ出演-1

幸福を売る男

劇場・小屋めぐりとテレビ出演-1

四月から五月にかけて、パリのいちばん良い季節に、私はほとんど毎日、劇場めぐりをした。
シャンソン小屋はコンセール・パタラなど場末の小さなところまで探しながら歩きまわり、ミュージツタ・ホールのオランピア
やポピノへは出し物が変わるたびに出かけた。ジョルジュ・ブラッサンス(歌手、作詞作曲家)とも何度か会って、依頼されて
いた日本公演を打診したが、愛想もなにもない表情で日本行きを断られた。「言葉のわからない連中に、おれの歌がわかるわけ
はないから」と同じ答えを二度聞いたので諦めた。
フランスのテレビ放送は、日本よりも少し遅れて発足したように思う。日本でもまだモノクロの時代だったが、フランスの同
営放送は昼に一時間ぐらい放送すると休みになって、夕方から夜にかけてまた始まるという状況であった。視聴率は高く、テレ
ビのあるところでは、ほとんどの人が見ていた。私はレコードの吹き込みを終えたあと、今度はフランス国営放送〈ORTF、昭和四十九年に解体、七会社に分割)のテレビ番組に出演することになった。たしか『ディスコラマ』いうタイトルで、レコードの新譜を紹介する番組だった。日本のテレビ局でもあのころよくやっていた、音に合わせて、歌っているように画面に向かって口をあけるやり方であった。
一週間も前からテレビ局の人がホテルに来て十分な打ち合わせをしたから、安心して本番に出かけることができた。スタジオに入るとき、日本人の通訳がカメラを持っていたら、入口で取り上げられてしまった。スタジオの中は撮らないでください、と言われたそうである。たしか前の年、クリスチャン・ディオールのファッションショーで日本人の一人がディオールのデザインを盗み撮りして問題になったことを知っていたので、なるほどフランスという国は、アイデアを尊重しているのだなと思った。


パリ再び、初録音-4

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

パリ再び、初録音-4

 東芝の石坂氏からパテ・マルコニ社への手紙で私の 「ラ・メール」収録のことを知り、聴きに来たらしい。しかし彼は、そそくさと部屋を出ていった。パリ木の十字架少年合唱団が同じ曲「ラ・メール」を別のスタジオで録音中だと、 スタジオの人がいさむ教えてくれた。この歌は第二次大戦の直後から世界中でヒットし、フラン 山内はもちろん各国で多数の歌手がレコード化しているのだ。
私が懸念していた、吹き込み中のいざこざはいっさいなく、二人の通訳の方も手持ち無沙汰なかの様子だった。モニター室にはさらに、磯村文子夫人の顔も見えていた。NHKの磯村尚徳氏(パリ日本文化会館長)は当時パリに駐在しておられたが、フランス語の達者な文子夫人を、なにか問題が起きたときのためにと派遣してくださったのである。夫人は吹き込みが終わるとまもなく帰られた。
私はちょうどアペリティフの時間だったので、トゥルニュ氏と相談して中華料理店をリザーブし、前菜と飲み物を用意してスタッフの皆さんをねぎらった。フランスでは仕事が終わって仲間と一杯やる習慣はあっても、食事は家庭でとる人が多いから、料理店に残って最後まで夕食をしてくれた人は独身者ばかりだった。
二人の通訳の方が最後まで残ってくれたが、あとはパテ・マルコニのスタジオでバック・コ-ラスをしてくれていた合唱団の皆さんのうち何人かと、若いモニターの方くらいだった。一日の大仕事を終えた私は肩から重荷をおろしてホッとした。


パリ再び、初録音ー3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

パリ再び、初録音-3

 10日ほどしてから吹き込むことになったが、やはり不安は山ほどあった。アルゼンチンの吹き込みで、私は通訳が一人で右往左往したことを思い出し、大使館に頼んで二人の女子留学生をアルバイトで予約した。また、あのときのように、楽団員にそれぞれ勝手なことを言いだ
されては困ると思ったからである。あのオデオン・レコードのスタジオでは、蒜はまったく蜂の巣をつついたようになり、言葉がわからない悔しさをいやというほど味わったものだから。
ところが、パテ・マルコこ社での吹き込みは、まったくなんの波風も立たず、渡された譜面に全員が忠実に従っていた。しかし、スタジオで約四〇人のオーケストラがあってピアノがな
かったのにはびっくりした。今までは必ずピアノがあって、その昔を確かめながら音程を拾う」とに慣れていたから、初めは戸惑ったのだ。ところが編曲者は、私が四年前の忘れもしないT一月十四日に、日本人として初めてだといわれたオランピアの舞台で「ラ・メール」を歌っ
にとき、私の編曲と指揮をしてくれたクロード・ヴァゾーリ氏であった。
なんと今日録音する四曲も、全部彼の編曲になるものだと知って、私はまた一人味方が増えたようで心強かった。なぜなら、四年前、「ラ・メー~」と「マ・プティト・フォリー」の編曲の打ち合わせのため、私は小柄で目の優しい彼のアパルトマンまで行って家族全員とも会っていたし、オランピアの初舞台のときは目の前で棒を振ってくれていたので、私の歌い方をよく知っている人だったからである。アレンジャーである彼に尋ねると、今回はピアノの代わりにハープを使って、エレガントな編曲にしたのだという。まず、ひと通り私が歌ってみてから、
カラオケをとるやり方であった。あれから四〇年以1たっているから、現在の日本での録音事情は欧米並み、あるいはそれ以1かもしれないが、当時はこのカラオケ方式がいちばん新しいやり方であった。
四曲のなかでいちばん苦労したのは「枯葉」であった。前半のクープレ(語りの部分)はバラードで、語るように歌うから普通なら同時録音するところである。しかし、別どりのほうが音質がよいからという理由で、私の歌い方をシェフ(指揮者)がいちいち記号で書き込んだ指
揮譜どおりに何回も歌わせるのである。それを録音して、あとで歌を吹き込むのだから、これもたいへん不安なことであった。しかし、本番ではまったく驚くほど正確にぴしっと私の歌い方どおりのカラオケができ、私の不安はいっぺんに解消した。また、ここでフランス語で歌っ
たもののほかに、日本に帰ってから日本語でダビング (合成録音)しなければならないから心配したのだが、言葉が違っても曲想はまったく同じでよいことも再確認された。
二曲とり終わったところで休憩になり、トゥルニエ氏からシャルル・トレネが来ていることを知らされ、私はモニター室にトレネの顔が見
えたので、とんで行って彼に尋ねた。「なにか歌唱上のご注意をください。私の歌い方の悪いところを指摘してください」と懇願した。「こ
のままでパルフェ (完全) だ。あなたは日本の美しい海を思いながら歌ってください」と言われて物足りない思いだった。


パリ再び、初録音-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

パリ再び、初録音-2

 舞台から有名スターたちがちょっと挨拶するだけなのに、客席のほうは超満員で熱気に満ちていた。やがて舞台から戻ったペコーと、私は四年ぶりに再会し、今日のご招待のお礼を言う。
日本でも映画『青春の曲り角』 で人気の出た女優パスカル・プティと一緒に、私もジルベール・ペコーから呼ばれて舞台に上がり「南米からパリへ、ただいま到着した彼は、パリでこれから活躍する日本人です」 という紹介だった。わけのわからない客席は、それでも温かい柏手を送ってくれた。ペコーの計らいは、石坂範一郎氏の手紙によるものであったことを、私は舞台から戻って初めて知った。石坂氏は私が宿泊するホテルの名前を彼に知らせ、このたびパテ・マルコニ社で初めてレコードの吹き込みをするアシノをサポートしてほしい、と手紙に書いてくれたのである。
ペコーもパテ・マルコニの専属であったし、提携会社・東芝レコードの石坂氏からの手紙には重みがあったにちがいない。それにしても、ペコーの人柄と日本人に対する偏見のなさ、四年前に初めて彼の家で出会ったとき、寝間着のままでピアノに向かい、私のために 「メケ・メケ」と 「風船売り」 の伴奏をしてくれたときの彼とまったく変わらない態度に、私は感銘を受けた。楽屋でいただいたアペリティフがまわってきたせいか、目がしょぼしょぼしてきたので早めに退散し、ホテルに戻るといっペんに疲れが出てぐつすりと眠ってしまった。
フランスで初レコーディング パリに着いた翌日から、私はパテ・マルコこ社に電話をかけはじめた。担当のディレクター、トゥルニュ氏と会うためである。ところが、彼は外国に出張中で三日後に帰るとのこと、三日後にまた電話をかけると今度は休暇で休み、その次の日は土曜、日曜と続いたので、彼とシャンゼリゼの事務所で出会ったのは、パリに着いてから六日目だったと思う。
曲目の打ち合わせから始まり、アレンジャー(編曲者)の選択と希望も尋ねられたが、私はお任せすることにした。ただ曲目はスタンダードを二曲と考えて、1ラ・メール」と1枯葉」に決め、たまたま大流行中の1サラダ・ド・フリユイ(サラダのうた)」、あとはその年のサ
ン・レモ音楽祭の入賞曲「ロマンテイカ」を選び、さっそく自分のキイを提示してアレンジをお願いした。


パリ再び、初録音-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

5、パリ再び、初録音

芸能人「ゲラン・ガラ」にご招待-1

 昭和三十五年の世竺周旅行は、北米、南米の次は欧州フランスへ飛んだ。四月半ば、パリは初渡仏以来、四年ぶりである。懐かしいパリ、あのときとまったく変わらないパリの街に着いたとき、キザなようだが、パリに帰ってきた、という感激で陶が熱くなった。街角の古びたビこストロも、カフェの椅子でさ、ろも懐かしく、歩きなれた道を通ってホテルに入った。フロントで部屋の鍵を受け取るとき、一過の封書を渡されたが、気にしないで一刻も早くベッドで休みたいと思っていた。
ホノルル、ロサンゼルス、ニューヨーク、ブエノスアイレス、リオデジャネイロと旅をともにしてきた二つの旅行鞄を開けて衣装をロッカーにつるし、ホッとしたところでベッドに腰かけて先ほど渡された白い封筒を開けてみた。なんと! それはジルベール・ペコーからの手紙で、芸能人の「グラン・ガラ」(慈善大会)への招待状であった。場所はクリシーの角にある大劇場ゴーモン・パラス。しかも、日時は今日、夜六時から。私は呆然とした。少しでもベッドで休みたい。睡眠がほしい。でもグラン・ガラ
にも出席したい。大きく揺れ動く心の中で、四年前私にオランピア劇場出演をすすめてくれたジルベール・ペコーの笑顔があった。せっかくの共演の申し出を断って、インドでのリサイタルを優先して日本へ帰った、あのときのすまなさが切々とよみがえった。
その夜、結局少し遅れて私も「グラン・ガラ」に出席した。シャワーを浴びてから、タキシードのたたみ皺を伸ばすのに時間がかかったからである。ロールスロイスやジャガーなどの高級車が次々と楽屋口に到着して、有名映画人、シャンソン歌手たちが入っていく。私もペコーからの招待状を見せて楽屋口から入り、控え室でアペリティフをいただく。少し遅れて当時人気絶頂のブリジット・パルドーの顔も見えた。


リオで骨休め-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

リオで骨休め-2

 貧し気な集落に近づいていくのである。リオの山の上にはこの国の舞踊音楽サンバの学校があり、あの華やかなカ-ニバルの踊りは山の上で練習するとか聞いていたので、もっと上まで行かったが、もう車も登れないような地面になっていて、引き返すことにした。コパカバーホテルに戻って支配人に尋ねてみたところ、リオデジャネイロは高いところほど水の傾が、貧しい人がみな山の上に追いやられるのだという。山の1ではよく犯罪が起きて、観光被害にあうのだとも聞いて、背筋が寒くなった。そういえば、シャルル・トレネのシャン「リオの春」のなかでも美しい海と空が主題になっており、遠景に見える緑の山は眺めているだけのほうがよいのだということに気がついた。
リオデジャネイロは世界三大美港(夜景)の一つとされているだけに、空からの眺めはじつに素晴しく、トレネの名曲「リオの春」の美しいメロディーが、何回も私の心の中によみがぇってきて思わず口ずさんでしまう。到着したときの昼の海と違って、いま飛び立とうとする夕暮れの海もまた素晴らしく、数えきれないイルミネノンヨンがともされ、おとぎの世界にいるような気分だった。
リオデジャネイロ空港をあとにしてブラジリアで給油し、一路大西洋を横断して北半球の回へ向かうことになる。北半球の片隅に位置する国・日本で生まれた私にとって、地球裏側の国々で体験した貴重な経験は忘れることができない。
ここから一気にパリのオルリー空港へ直行する夜行便は、当時ジェット機が運航されていない時代だったから、18時間くらいかかったと記憶している。ファーストクラスは足が伸ばせてほとんど水平になって寝られたのでだいぶ助かったたものの、秋たけなわの南米から早春のヨーロッパへへ一日のうちに飛んでしまうのだから、少々体調がおかしくなっても不思議ではない。


リオで骨休め-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

リオで骨休め-1

 ブラジルはサンパウロにも一泊する予定だったが、アルゼンチンでのブエノスアイレス滞在が予定より延びたのでリオデジャネイロに直行した。東芝レコードの石坂範一郎氏からの紹介状を持ってレコード会社の人ともお会いしたが、ここで歌う気持ちはなかったので、前から憧れていたコパカバーナ海岸に宿をとって、美しい海岸線を見ながら、心はすでにパリへ向かっ
ているのだった。
ブラジルでも地球裏側ゆえのおかしな経験をいくつもした。リオは美しい緑の山々が手の届くような距離にあり、車で登ってみたいと思った。ポルトガル語の国なので、タクシー運転手の説明は理解できなかったが、こちらが話しかける英語はわかってくれた。
山へ登る途中に屋台の果物屋があって、新鮮なバナナやパイナップルなどが山と積まれているから、ぜひ味わってみろと言われ、ひと∥食べて驚いた。この果物がこんなに美味しいものとは思ってもみなかった。パイナップルは缶詰にされたもの、バナナははるばる運ばれてきたものしか食べたことのない私にとって、これは衝撃的であった。グローリア‥ラッソ(スペイン系のシャンソン歌手)の歌ったシャンソン、私のレパートリーでもある「山のアヴェ・マリア」のなかに、リオの山々は大国にいちばん近いところで、そこに住む人たちにお金は要らない、という歌詞が出てくるが、私も山道を登るにつれて、いわば理想郷が近づいてくると勘違いしていたのである。
この国は、私の知っている北半球の国とは逆で、高いほうへ行くほど環境が荒れていくのだ。


テレビ・ラジオの仕事ぞくぞく-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

テレビ・ラジオの仕事ぞくぞく-2

 それというのも、日本のテレビ局のように、あと何分、あと何秒という神経質なやり方でなく、いとも大ざっばなディレクターの指示であり、時間のほうは司会者にお任せです、というようなのんきなものであったから、出演するほうもプレッシャーを感じなかったのである。
テレビ局を出ると、中華料理店へ直行した。あと二日でアルゼンチンを離れるし、レコーディングとテレビ出演でお世話になったロペス氏を中心に、楽団の人たちもテレビ局の人も、皆さんを招待したかったのである。約20人ほどの宴会になり、だいぶ盛り上がったが、スペイン語の会話なのでなかなか溶け込めなかった。宴たけなわのころ、電話が入ったことを知らされ、私は稲塚氏に出てもらった。しばらくして、彼は苦笑しながら帰って来られた。「芦野さん、どうしますか、仕事がたくさん入ってきて、明日、隣の国チリで歌ってほしいとのことですよ。ずっとアルゼンチンで歌ってほしいとも言ってます」。私はびっくり仰天した。ほんとうなら、とび上がって喜ぶべきことかもしれないが、すでに明日の午後、ラジオ・エルムンドの公開放送が終わってから、ブラジル経由で憧れのパリへ向かって出発することになっていたからである。
私にとってはパリでのレコーディングが本命であり、そのための世界旅行だったつもりである。思いがけない人気が嬉しくないわけはないが、一方で、私はタンゴ歌手・藤沢嵐子さんの忠告を思い出していた。アルゼンチンで大成功を収めて高い評価を受け、帰国された「ランコ・フジサワ」の名はアルゼンチンではいまだに伝説として残っている。私が日本を発つ前に、嵐子さんから聞いた詰もしっかり頭に入れてきた。
「声野さん、あの国の人はすぐに燃え上がって熱狂するけど、金銭的にはよほどしっかりしていなければだめよ。私は何べんも興行でだまされた。熱狂的なファンのために歌っても、お金が入らないことで嫌な思いをしてきた」。そんな言葉も思い出されて、私はいい潮時と考え、翌日ラジオ・エルムンドとラジオ・リベルタールの公開放送を終えて、思い出の町ブエノスア
イレスを離れることにした。街はアルゼンチンの国花である淡紅色のセイボの花が満開の季節であり、初めて受けた南米の人たちの熱狂的な歓迎を深く心の奥にしまって、うしろ髪を引かれる思いでこの回を離れた。日立製作所の稲壕氏は、空港を離れるとき、いつまでも手を振ってくださった。


テレビ・ラジオの仕事ぞくぞく-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

テレビ・ラジオの仕事ぞくぞく-1

 ちょうどレコーディングが終わるころ、稲塚氏ご夫妻がスタジオに現れた。そして、日立製作所が用意した高級レストランでの慰労会のとき、今度新しくできたブエノスアイレスのテレビ局で私のワンマンショーをする打ち合わせをした。滞在日程の都合で、明後日、夜8時半からの30分、生放送で出演することになったので、ロペス氏を楽団に選定をした。テレビ局からも責任者が参加して意見を出したが、私はその場でプログラムを考えた。
スペイン語で会話することに慣れていなかったから、英語で挨拶をする。楽団で歌うには譜面の用意がなかったから、ピアノに向かって弾き語りでシャンソンを歌う。英語で解説しながら、シャルル・トレネの「ラ・メール」「リオの春」、そして日本でもそのころ流行していた「ドミノ」を歌うことにした。そのあとアルゼンチンの女性歌手に二2曲歌ってもらい、その間に日本から持ってきた紬(つむぎ)の着物に着替えて、今日吹き込んだタンゴの「カミニート」とフォルクローレの「サンフアン娘」を、吹き込んだときと同じ楽団に出演してもらって歌うことにした。
当日は午後4時ごろテレビ局に入り、たった一回のリハーサルで本番を迎えることになった。
日本ではたいてい三3回のリハーサルをすることに慣れていたからちょっと不安だったが、ロペス氏も大丈夫というので任せることにした。男性の司会者は英語もできる人だったから、打ち合わせもうまくいき、いよいよ本番を迎えることになる。
私はグランドピアノに向かって座り、日本の民謡をバラード風に流している。それをバックに司会者がスペイン語で、今夜なぜ特別番組かということを話し、私のプロフィールを紹介する。「セニョール・アシノ・ポルファボール」という声を聞いたら、私のピアノが「ラ・メール」のイントロに変わり、あとはいつものペースで歌うのだから気楽なものである。ピアノを
弾きながら歌う。これは私が芸大を卒業してから一年間奉職した学校で、授業中に必ず生徒たちにアルゼンチン ブエノスアイレスのテレビ出演(1960.4)歌ってあげていたので慣れていた。ただ解説を英語に変えるだけのことだった。「ドミノ」が終わると、司会者がとんできて、次に歌うアルゼンチンの人気女性歌手の紹介が始まる。
その間に、私はピアノを離れてスタジオの片隅で着替えるのだ。母が用意してくれた紺色の紬の着物に、白と紺の博多の角帯である。日立の稲塚氏夫人が慣れない手つきで付き人の役をやってくださり、恐縮しながら「カミニート」のイントロにのって再びスポットの中に入る。「サンフアン娘」 のほうは、レコーディングのときよりさらにリラックスして、楽団の皆さんが歌いながら踊りだしたので、大いに盛り上がり大成功だった。


アルゼンチンでタンゴの録音-2

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190505

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

アルゼンチンでタンゴの録音-2

 私はロペス氏と英語で話し合って、楽士たちの意見をなるべく受け入れるように頼んだ。「郷入れば郷に従、え」という諺があるから、私はこの国の人に任せようと思ったのである。ロぺス氏は、それじゃ私に任せてくれと言って大きな声で皆を制止し、楽士たちに譜面どおり弾かなくてもよいことを伝えた。
これは大成功だった。作られた音楽でなく、アルゼンチンで生まれたタンゴの響きがあった。
楽士たちはだれも譜面を見ないで弾きはじめ、「カミニート」は私の考えていたものよりずっと生き生きしてきたように思われた。最初はどうなることかと胸を痛めていたのに、吹き込みは約一時間で終わり、少し休んでから二曲目に入った。「ミ・サンファニーナ」、私のサンファ/娘というフォルクローレ(民謡)である。高橋忠雄先生のもとで練習していたときはとても難しくて、譜面をたどるのに苦労した曲である。やはりちょっと心配であった。ところが、どうしたことだろう。楽士たちは前曲同様、譜面も見ずに弾きはじめ、ヴァイオリンの背中をたたいたりして踊りながら演奏しはじめたのである。これはサンフアン地方に伝わる民謡で、踊りの歌だから、こうして演奏するのがほんとうのやり方なんだという。
「クエッカ、クジャーナ、恋の踊りだ、皆さん、それじゃ一番から歌うぜ」と私がスペイン語でどなると、楽士たちのかけ声がとびかい、踊りの音楽が始まる。練習を一、二回したあと、すぐ本番のテープが回され、盛り上がったところでOKが出た。ロペス氏がモニター室から大きく両手を広げて現れ、「ムイビエン、大成功」と言ってくれたので、ホッとして弧につままれたような気分だった。日本ではあれほど心配して、何度も何度も譜面を見直して勉強してきたが、ほんの短い時間で吹き込みを終わり、嬉しいような物足りないような気もした。フィリベルト氏は高齢のため、私の吹き込みに立ち会うことはできなかったが、ご自宅で直接私の歌を聴いてくださったことは、なによりもありがたいことであり、一生の思い出をつくつてくれた。


アルゼンチンでタンゴの録音-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

アルゼンチンでタンゴの録音-1

稲塚保氏ご夫妻のお取り計らいにより、津田正夫大使主催のレセプションが私のために開かれ、各国の人々の前で私はアルゼンチン・タンゴの名曲「カミニート」を歌った。お返しにブエノスアイレスの女優さんがシャンソンとしても有名な「ウマウアケニョ〈花祭り〉」の詩を朗読してくれたときは、涙が出るほど感動した。稲塚氏は私が会いたかった人、「カミニート」の作曲者フィリベルト氏にも合わせてくださった。アルゼンチン・タンゴ発祥の地ポッカの港町に「カミニート」という街角ができて、そこに住んでおられた高齢のフィリベルト氏は、ピアノに向かって私の「カミニート」に伴奏を付けてくださり、「ムイビエン、ムイビエン(素晴らしい)」を連発した。そして記念に「ラ・カンシオン」という歌の楽譜を下さったイリベルト氏のレッスンを受けたので、私は自信をもってオデオン・レコードのスタジオに入った。ディレクターのロペス氏は、中年の陽気な紳士で、日本のディレクターのようにきめ細かいやり方ではなかった。まず「カミニート」を吹き込むことになり、アレンジ・パートが配られて練習に入った。ヴァイオリンを弾く楽士の一人が私のそばに来て、譜面と違う弾き方をしてみせた。「おれはこう弾きたいが、よいか」と言っている、と通訳が伝える。私はロペス氏に任せる、と答えた。そのうち別の楽士がとんできて「おれはこう弾く」と主張する。
他の方からまた別な意見が出て、スタジオは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
稲塚氏は仕事の都合で吹き込みの現場には来られず、部下の方を代わりによこしてくれたが、まだ若い彼はスペイン語が堪能でなかった。若林氏も、まだ着任して日が浅く、どうしてよいわからぬ様子である。オデオン・レコードのロペス氏は英語がわかる人だったので助かった。


南米ブエノスアイレスへ-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

南米ブエノスアイレスへ-2

 支配人がやっと納得して急きょ別のホテルを探し、タクシーに荷物を載せて少し離れた、公園に近い静かな宿に着いた。それは森の中の館といった感じのすてきなホテルであり、こぢんまりしていたし、ドアマンも制服をつけて礼儀正しかった。ヨーロッパの田舎にあるような夢のような静かなホテルで、私はその日ぐつすりと眠り、翌日の仕事にべストを尽くすことができたのである。この間、ホテルに訪ねて来られたのは東芝の若林氏で、彼は本社から連絡があって私の滞在中、とくにレコード吹き込みに関してサポートするよう頼まれたとのことである。 そこへ現れたのが、昨夜出迎えてくれた日立の稲塚氏である。「私は日立の本社から、滞在中の面倒をみるように言われている」 というのである。ロビーでちょっとしたゴタゴタがあり、私は離れたテーブルで二人のやりとりを傍観していた。若林氏が納得できない表情で語気を強めたので、どうなることかと成り行きを心配していたが、結局、稲塚氏が私の面倒をみることになったのである。若林氏は単身赴任で若かったせいか、スペイン語の達者な稲塚氏ご夫妻にお任せすることで納得し、東芝側は私がオデオン・レコードで吹き込みをする当日だけ、ずっとスタジオについてくださった。お子さんのいない稲塚氏ご夫妻は、社交的で親切なお二人で、私を息子のように方々へ案内してくださった。

ブエノスアイレスではレコード吹き込みのはかにラジオの公開録音が三本、帰る前日にはテレビの生放送があり、それらは項を改めて後述しょう。相当きついスケジュールであったが、やっと納得するホテルに落ち着き幸運であった。ところが帰る間ぎわになってわかったことだが、このホテルはビジネスの人は泊まらないということである。そういえば妙に静かで、ロビーに人がいたこともなく、大声で話す客もいなかった。いわゆる高級な二人連れのホテルだったようである。知らないということはありがたいことで、私はこの静かなホテルに男一人で泊まり、ぐつすり眠って良い仕事ができたのである。

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4月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
4月27日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:中野宏美
4月28日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
4月29日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野敦子

5月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
5月2日(木) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
5月3日(金) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:江口純子
5月4日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:江口純子
5月5日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
5月6日(月) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:日野敦子
5月11日(土) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:日野香織
5月12日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代
5月18日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安藤伸彦
5月19日(日) 11時~/14時~ 秋山美保      ピアノ:大美賀彰代
5月25日(土) 14時~ 第3回 村上リサコンサート ~苦しみを乗り越えて~
5月26日(日) 14時~ のど自慢 vol.22

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日本シャンソン館
ゴールデンウィーク イベント
◆シャンソンライヴ◆
出演: 5月2日 あみ、今野勝晴
5月3日 原れい子、江口純子
5月4日 小林美恵子、江口純子
5月5日 山添恵子、大美賀彰代
5月6日 MIKAKO、日野敦子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円
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◆野外ライヴ◆ (入館料のみでお聴きいただけます。)
出演: 5月4・5日 フレンチカフェ(Keiko&美鶴)
時間:第1回公演/12:00~、第2回公演15:00~
会場:日本シャンソン館中庭 「ル・ジャルダン」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円

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2019年5月3日(金)
原れい子
バースデイ・ライヴ
ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円
どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

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2019年5月26日(日)
日本シャンソン館
新春シャンソン
のど自慢 vol.22
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪

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2019年7月6日(土)・7日(日)
第57回 パリ祭
時間:16時15分開場 17時00分開演
会場:NHKホール
主催:パリ祭実行委員会、一般社団法人 日本シャンソン協会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、
公益財団法人 日仏会館

チケットは好評発売中です♪
※日本シャンソン館ではS席のみ取り扱っております。A席、B席をご希望の方はチラシに記載されているチケットのお申込み先にお願い致します。

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2019年5月25日(土)
第3回
村上リサコンサート
~苦しみを乗り越えて~

出演:村上リサ、中上香代子(ピアノ)
【午前の部】開場;10:30 開演:11:00
【午後の部】開場;14:30 開演:15:00
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:3,500円(入館料込み)
主催:Office Risa


南米ブエノスアイレスへ-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

南米ブエノスアイレスへ-1

 日本からいちばん遠い国、ちょうど地球儀の裏側にあるアルゼンチンは、日本と逆の気候だから、四月といえば秋たけなわである。飛行機は途中ベネズエラのカラカスとパラグアイの首都アスンシオンで給油すると、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスには夜中の二時ごろ到着した。深夜のブエノスアイレス空港に着いたとき、日立製作所の稲塚保氏が出迎えてくださった。初めての外国で西も東もわからない私は、稲塚氏の指示に従ってホテルに直行し、すぐにもシャワーを浴びて寝ようとしたが、どうしたことかお湯が出ない。言葉もよく通じないし夜も更けていたので、その日は諦めてベッドに直行した。
翌朝、フロントの人と英語で交渉したら、あの部屋は工事中でお湯が出ないとのこと、少々腹が立ったので、すぐ別のホテルを紹介してもらって移ることにした。今度のホテルは新しいし、もちろんお湯が出ることを確かめて荷物を運び、オデオン・レコードに吹き込みの打ち合わせに出かけて、夜の食事を終わってから帰り、さて寝ようとするとどうも臭いのである。部屋全体が臭くてちょっと寝つかれそうもないので、さっそく支配人を呼んで交渉した。臭くない部屋に替わりたかったのである。
ところが、こういう返事が返ってきた。「新しいホテルなので消毒した。どの部屋も同じ条件である」というのである。そういえば、終戦後によくお世話になった、あのDDTという殺虫剤の臭いによく似ていた。仕事を明日に控えて、特別神経質になっていた私は、咽喉が心配であった。夜も十時を過ぎていたが、私は理由を話してさらにホテルを替わることにした。
「明日は大事なレコード吹き込みです。ぜひ最高のホテルを探してください。私はぐつすり眠りたい」 と嘆願した。


幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

初めてのアメリカ-4

ニューヨークでのエキサイティングな一週間は、猪熊ご夫妻のおかげで忘れ得ぬ思い出をいくつも残してくれた。作家の有吉佐和子さんと二人でペリー・コモのショーを見たり、ペギー・リーのレブロン・ショーをテレビのスタジオで見せてもらったりしたのも、猪熊ご夫妻のご配慮によるものだった。なかなか手には入らないメトロポリタン・オペラのチケットを買っておいて、ニューヨ-クでの思い出にと『マダム・バタフライ』の舞台を見せてくださった心温まるご親切は、忘れられない。主役はレナータ・テパルディ(マリア・カラスと双壁のプリマドンナ)で、レコードでしか聴いたことのない彼女のソプラノを実際に聴けると思うと胸が躍った。しかし、あまりに大柄な蝶々夫人が着物をまとって舞台に現れたときは、思わず苦笑してしまったが、肉声で、あのやわらかい、しかも芯のある声を実際に聴けたことはほんとうに嗜しかった。どんなに感謝しても感謝しきれない思いである。
ニューヨークからブエノスアイレスまでは、パン・アメリカンが昭和三十五年から初めて運航することになったジェット旅客機で飛ぶことになり、空港まで見送りに来られた猪熊ご夫妻に深くご礼を申し上げると、もう私の心は初めて見る南半球の国を想像して胸がときめくのであった。


初めてのアメリカ-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

初めてのアメリカ-3

私はフォスター歌曲集のなかから、お客様のリクエストに応えて歌い、大成功であった。このときのことを思い出すと、懐かしさと楽しさで八馬氏と私は大笑いする。なにしろ照明係は猪熊先生、マネージャーは棟方の巴里ちゃん、猪熊夫人が案内係という、まるで旅まわりの興行みたいだった。今にして思えばあれでよく金がもらえたものだと赤面している。巴里爾さんは鎌倉にお住まいで、演劇活動のかたわら棟方版画の鑑定という重要な役目を果たしておられたが、平成10年(1998)5月13日、私のパリ滞在中に亡くなられた。懐かしい友人をまた一人亡くしてしまった。
猪熊先生は、残念ながら文子夫人に先立たれたが、意外なほど明るくご立派に仕事を続けておられたのに、平成5年(1993)5月16日、腹痛を訴えてまもなく眠るように天国に召された。ミキモト画廊での最後の個展に伺ったとき、「私の描く顔がみんな家内の顔に似てきてね。ほら、あれも、これも」といって説明してくださったが、あの優しい素晴らしい奥様のもとへ、こんなにすぐに行かれるとは思ってもみなかった。
5月19日、目黒の行八坂教会で密葬が行われたが、まだどなたも見えない午前中に私は一人で先生の枢の前で賛美歌320番を歌った。聖堂にこだまして響く私の声と自分白身で弾くオルガンの響き、白いカーネーションを一本捧げて、一対一でお別れをしてきた。その日の午後は6月10日の私の40周年記念コンサートのリハーサルがあり、また、その当日には先生の本葬儀が青山斎場で行われるのだが、それには参列できないので、こんなふうに教会で一対一の会話を神様が与えてくださったのだと解釈して、感謝している。


初めてのアメリカ-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

初めてのアメリカ-2

 真夜中である。何時ごろだったかわからない。ふと目をあけると、目の前に大入道のような大男が現れた。ピストルのようなシルエットも見え、小さな電灯でこちらの様子をうかがっているではないか。決して夢ではない。胸は早鐘のように高嶋ったが、声は出なかった。だれかを呼んでも聞こえるはずもない。じつとしているより仕方がないと思って観念した。だが次の瞬間、男はなにかを枕元に置いて黙って立ち去った。ドアが完全に閉まるのを見てすぐに明かりをつけると、一枚の紙片が置いてあった。「あなたは二枚目のドアに鍵をかけていませんでした。今後ご注意ください。警備員」と書いてあった。先日、廊下で起きた事件以来、このホテルは警備を強化したということを翌朝初めて聞いた。
猪能先生は私のために一人の青年を紹介してくれた。ニューヨーク滞在中、出歩くときの相棒にしなきいと言ってくださった。名前は棟方巴里爾さん。ニューヨークの演劇学校に通っている、目の丸い人なつこい青年だった。世界に名の通っている、有名な棟方志功画伯のご長男だったが、気前がよくて外国人に志功の版画をチップ代わりにあげたりするのでヒヤヒヤしていた。私と気持ちがピッタリ合う青年で、グリニッジ・ヴィレッジや、ハーレムの入口あたりまで二人で冒険したりして楽しい思い出がいっぱいある。
ニューヨーク滞在中、猪熊氏ご夫妻のお取り計らいによって、私は二回小さなコンサートを開いた。アジア人留学生のためのチャリティが目的であった。伴奏は八馬啓さんのギターだっ
た。彼は関西財閥の八馬家の次男坊で、日本に帰ってから宝塚スターと結婚し、青年実業家として活躍しておられる。

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3月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
3月30日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:江口純子
3月31日(日) 11時~/14時~ 山添恵子       ピアノ:日野敦子

4月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
4月6日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
4月7日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
4月13日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:未定
4月14日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
4月20日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:安藤伸彦
4月21日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:松川裕
4月27日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:中野宏美
4月28日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
4月29日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:日野敦子

2019年4月7日(日)
山添恵子
バースデイ・ライヴ ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

 

 


初めてのアメリカー1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

初めてのアメリカー1

 昭和35年(1960)3月末、世界旅行に旅立つ。初めてのアメリカ行きは胸が躍った。
ハワイのホテルに滞在したときは、プロレスラーの遠藤幸吉氏のエスコートで珍しいレストランで食事をし、ダイヤモンドヘッドへのドライヴは日本人学校校長の小林虎男氏の車を使わせてもらった。ロサンゼルスでは、凸版印刷の山田社長から差し向けられた車でビバリーヒルズ、ハリウッドの見学もしたが、観光と食べ歩きより、私の心はまだ見ぬニューヨークへ飛んでいた。
ニューヨークの空港では、デビュー以来お世話になっている画家の猪熊弦一郎氏ご夫妻が出迎えてくださった。ご夫妻は当時、町の静かな住宅街に女優M・ディートリヒの部屋と向かいあったところにアトリエを持って活躍されておられた。
ニューヨークでの一週間はすべてご夫妻の組んだスケジュールに従ったのである。まずホテルへ向かう車の中で、ニューヨークがどんなに恐ろしいところかを教わった。ペンシルヴァニ駅の近くにあるスタトラ・ヒルトン・ホテルに泊まることになっていたが、このホテルで一時間ほど前に日本人商社員が強盗にあったことを話された。廊下を歩いているとき、とつぜんストルを突きつけられて現金を奪われたということである。それからグリニッジ・ヴィレッジでは殺人事件があり、ハーレムでの誘拐事件では日本の商社が金を積んで社員を取り戻したという。
その夜遅くまで私のためのパーティーを開いてくださったあと、ご夫妻は「夜の一人歩きはいけません」とわざわざホテルの入口まで送ってくださった。とにかく恐ろしいところだから、絶対に一人で出歩かないこと、そう念を押されてホテルに帰り、先日この廊下で物騒な事件があったのだと確かめながら自分の部屋に入った。なるほど廊下は人影もなく静寂そのもので、ここでなにが起きても不思議ではないなと思いながら部屋のドアを開けた。ところが、その中にもう一枚の鉄のドアがある。つまり部屋に入るには、二度ドアを開けなければならないわけである。大都会の中の森の中に入ったような気持ちになり、私は初日の疲れがどっと出てぐっすり寝込んでしまった。


幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

念願の世界旅行-2

(注)
日立コンサートは服部良一ひきいる四〇人編成 のオーケストラをバックに、クラシックから日本 民謡まで世界のあらゆるジャンルの歌を楽しんで いただくもの。全国各地で開催。芦野宏は服部先 生に芸大卒業前から師事しており、このコンサー
トに真っ先の指名を受けた。ラジオの『シャンソ ン・アワー』『きらめくリズム』ほか、テレビで『花の星座』『歌の花びら』『歌のパラダイス』など多数の番組、労音・音協ほか全国各地のリサイタル、の過密スケジュールをぬって、ほぼ一〇年続く。なお、ファッションショー、日航PRキャラバンなど世界一周の帰国リサイタルは昭和三十五年九月に開催。
多彩なジャンルの歌のコンサートだけに、共演する歌手も多士済々、パリ祭などのコンサートとは違う趣だった。服部良一にはほかのコンサートやミュージカル、オリジナルの作曲もしてもらい、門下生で集う「釜めし会」など、芦野は晩年までお付き合いした。先生は平成五年に逝去(八五歳)された。

ところで不思議なことに、東芝レコード (東芝音工) の親会社も電機メーカーで同じような庭電器を扱っており、私だけがレコードは東芝でスポンサーは日立ということであった。高成長へと向かいはじめるころ、まだ少しおおらかな時代だったのだろうか。
(注)
当時のある新聞は「この夢のような三か月の世界漫遊は、乗り物、ホテルなどすべて一等、Aクラスという超豪華版。スケジュールと規模はまさに米国の富豪並みLと伝えた。


3月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
3月16日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月17日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
3月21日(木) 11時~/14時~  原れい子      ピアノ:大美賀彰代
3月23日(土) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
3月24日(日) 14時~ 日本シャンソン館 のど自慢 vol.21
3月30日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:江口純子
3月31日(日) 11時~/14時~ 山添恵子       ピアノ:日野敦子

日本シャンソン館
4月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
4月6日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
4月7日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
4月13日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:未定
4月14日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
4月20日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:安藤伸彦
4月21日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:松川裕
4月27日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:中野宏美
4月28日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
4月29日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:日野敦子

2019年4月7日(日)
山添恵子
バースデイ・ライヴ ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

2019年3月24日(日)
日本シャンソン館
新春シャンソン
のど自慢 vol.21
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
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念願の世界旅行-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

念願の世界旅行-1

 ここ数年、目を追って仕事のほうはますます忙しくなり、一年三六五日のうち二五〇回以上のステージをこなしていた。こんなに忙しくては結婚もできないと母は嘆き、私もこのへんでもう一度外国旅行をして、頭を冷やしたいと思うようになっていた。東芝レコードの石坂範一郎氏に話すと、パリとブエノスアイレスでのレコーディングなど、素晴らしいアイデアをくださったので、たまたま日立コンサートの味岡果さんにも話してみたところ、日立製作所がスポンサーになって世界一周旅行の航空券を提供していただけることになり、話がうまく進んでトントン拍子に私の二度目の外遊が実現した。
世界一周といっても、ハワイを振り出しにアメリカをまわり、南米アルゼンチンで念願のタンゴを本場の楽団と一緒にレコーディングし、さらに大西洋を北へ上ってフランスへ直行し、パリのレコード会社で吹き込みをする計画である。東芝レコードの石坂範一郎氏はわがことのように喜んで、全面的にバックアップしてくださった。この昭和三十五年(一九六〇)、海外
でのレコーディングはポピュラー歌手としては、わが国でもパイオニアのほうだと思う。
旅行の費用は日立がファーストクラスの世界一周航空券と宿泊を保障してくれた。それは私が五六年から始まった日立コンサートのレギュラー歌手として活躍していたからである。日立日立コンサートで歌う(1956頃)の家庭電化製品は、当時「三種の神器」といわれたテレビ、洗濯機、冷蔵庫などの売り上げが急上昇しているころで、宣伝費の一部を日立コあてており、服部良一先生と私がレギュラーとして契約していたのである。帰国してから、東京宝塚劇場を昼夜借り切って、『芦野宏・世界一周コンサート』として日立製品愛用者招待会を計画し、また地方公演も約束させられていた。

3月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
3月9日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月10日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:安藤伸彦
3月16日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月17日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
3月21日(木) 11時~/14時~  原れい子      ピアノ:大美賀彰代
3月23日(土) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
3月24日(日) 14時~ 日本シャンソン館 のど自慢 vol.21
3月30日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:江口純子
3月31日(日) 11時~/14時~ 山添恵子       ピアノ:日野敦子

日本シャンソン館
4月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
4月6日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
4月7日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
4月13日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:未定
4月14日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
4月20日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:安藤伸彦
4月21日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:松川裕
4月27日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:中野宏美
4月28日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
4月29日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:日野敦子

2019年4月7日(日)
山添恵子
バースデイ・ライヴ ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

2019年3月24日(日)
日本シャンソン館
新春シャンソン
のど自慢 vol.21
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
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ジローとの再会ー6

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

3、初吹き込み・初渡仏

ジローとの再会-6

 昭和二十三年の暮れに、自主リサイタルとして三度目の連続リサイタル『クリスマス・リサイタル(山菜ホール、イヴまでの一週間)開催。第一部「プチ・パパ・ノエル」ほかフランスのクリスマス・ソング、第二部「パパと踊ろうよ」などの新しいシャンソン、第三部「さくらんぼの実る頃」ほか古いシャンソン、それぞれ五曲ずつという構成。各部の間にアンサンブル・ミュゼット(浜中外代治、稲葉脚光、岡田博、神谷正行) の演奏をワンステージ設けた。

昭和三十四年十一月、芸術祭参加『秋のリサイタル』が催される(産経新聞評)
「芦野宏が『日本のうた』と『パリのうた』 の会を五日 (六H芸術祭参加公演)夜、産経ホールで開いた。会場は静かなシャンソン・ファンで満員。最後のアンコールが終わるまで、ひとりも席を立つものがなかった気持ちのいい催しだった。総体にゆったりとした歌いぶりで、音程もしっかりしており、東京混声合唱団や、東京メール・クワルテットを効果的に使い、視覚に変化を持たせるなど、演出に力を入れて頭脳的なプレーをみせ、ラストまで客をひきつけるうまさは、さすがにシャンソン界第一の実
力者とはいえそうだ。
浜辺の歌や椰子の実などの日本の歌曲から馬子唄、佐渡おけさなどの民謡も、よく計算した結果がており、コーラスのアンサンブルに助けられて、いわゆる芦野調を十分生かしている点、聞きごたえのあるものだった。平岡精二クインテットと共演し、語りの要素を生かした(ある青年のノートから)は、しっとりとした味わいがあり、間のとりかたもよ〈、後半の 「パリのうた」の数々とともに素直に客をムードへ引き込んでいくうまさがあった」(演出・葦原邦子)
このリサイタルの模様は十二月八日に日本テレビから放映された。その反響として、読売新聞十二月十四日『放送塔』を引用する。
「……日本のシャンソン界にも、これだけのレパートリーを持つ歌手がいるとは思わなかった。二時間という長時間、ともかくワンマン・ショーとしてあきさせないようにするには、どんなにむずかしいことか。適当なユーモアと仕草。先日好評だった『ペリー・コモ・ショー』と優に対抗できるのではあるまいか」

3月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
3月2日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:大美賀彰代
3月3日(日) 11時~/14時~ 唯文         ピアノ:大美賀彰代
3月9日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
3月10日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:安藤伸彦
3月16日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代
3月17日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
3月21日(木) 11時~/14時~  原れい子      ピアノ:大美賀彰代
3月23日(土) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
3月24日(日) 14時~ 日本シャンソン館 のど自慢 vol.21
3月30日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:江口純子
3月31日(日) 11時~/14時~ 山添恵子       ピアノ:日野敦子

4月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時
開演時間 出 演
4月6日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
4月7日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:江口純子
4月13日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:未定
4月14日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:大美賀彰代
4月20日(土)  11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:安藤伸彦
4月21日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:松川裕
4月27日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:中野宏美
4月28日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:大美賀彰代
4月29日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:日野敦子

2019年4月7日(日)
山添恵子
バースデイ・ライヴ ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

2019年3月24日(日)
日本シャンソン館
新春シャンソン
のど自慢 vol.21
参加者募集中
ご案内:日本シャンソン館館長 羽鳥功二
ピアノ:大美賀彰代
司会:飯塚裕美
時間:14:00開演
参加費:一般4,000円/友の会会員価格3,000円
会場:日本シャンソン館2F シャンソニエ「ヴェルメイユ」
主催:日本シャンソン館
★どなたでもご参加いただけます。
★歌唱曲はシャンソンに限らせていただきます。
★楽譜をご持参ください(お一人一曲)。
★当日の午前中に譜面合わせを行います。
★最後まで思う存分歌って頂けます。
————————————————-
観覧料:入館料(1,000円)のみでお聴きいただけます♪


ジローとの再会-5

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

3、初吹き込み・初渡仏

ジローとの再会-5

 東京労音運動史年表には、昭和三十三年「ポピュラー例会のテストケースとして、芦野宏シャンソン・リサイタル(特別例会)を日本青で大成功」とある。当時、労音の運営委員であった土橋政昭さんの感想を以下に引用する。
東京労音「芦野宏シャンソン・リサイタル」「労音が初めて企画したシャンソンの特別例会構成・薩摩忠、昭和三十三年六月)を聴いて『芦野宏シャンソン・リサイタル』は、近頃ほんとに心愉しい例会であった。
第一部、芦野氏の機知あふれるプロローグに続いて歌う(パリのうた)六曲は、シャルル・トレネの歌を中心にした明るい健康さと近代性をもったシャンソンの一面をのびのびと歌ってくれた。(日本のうた)では「プンプンポルカ」がやはり手馴れてうまい。第二部に入って (楽しいうた) はほとんど聴きなれた歌ばかりだが、「小さな汽車」が牧歌的な詩情をたたえて美しい。「風船売り」「ボンボン・キャラメル」の芦野氏は聴衆へのサービスで精一杯というところだが、風船やキャラメルをあげる場合、もう一工夫あってもよかったのではないか。でも聴衆はいちばん喜んでいたようだ。(好きなうた)では「小雨降る径」「メケ・メケ」が素直な感情がよく出ていたように感じた。アンコールで弾き語った「小さなひなげしのように」は照明もはえて劇的な雰囲気が素晴らしかった。
全体的に芦野氏の歌い方は、いかにも歌が好きで愉しんでるんだという感じで、その平凡だが品のいい明るい雰囲気は貴重なパーソナリティだと思う。シャルル・トレネがトウール・ド・シャン《歌の芸》を持った偉大な歌手であるように、芦野氏も今後十分に自己のパーソナリティを生かされんことを望む。音楽を通じて人間の心を豊かにし、結びつけてゆくのが労音の使命のひとつであるとすれば、こういう愉しめる特別例会を多く持つということは今後も大いに期待できるのではないか。会場の雰岡気とマッチして、バンドマスターの浜中外代治氏(アンサンブル・ミュゼット)の伴奏は、会場の女性陣になかなか好評であった。以後の例会が楽しみである」——–

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2月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
2月17日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:江口純子
2月23日(土) 11時~/14時~ 藍澤幸頼/瀧本真己 ピアノ:近藤正春
2月24日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴

詳細については再上部の「日本シャンソン館のご案内」をご覧ください。

 


ジローとの再会-4

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

3、初吹き込み・初渡仏

ジローとの再会-4

 ところで、昭和三十二年に入ってからはしだいにテレビの仕事が多くなり、日立のスボンサーで日本テレビ制作のミュージカル仕立て連続もの 『東京ロメオ』(脚本・野上彰/音楽・服部良一、共演・中原美紗緒)の主役をすることになった。この模様はパリ祭の夜から毎日曜日の夜、三か月にわたって放映された。挿入歌に「東京の空の下隅田は流れる」などがある。地方公演が多いころで、早朝の一番機で羽田空港に着いてから、すぐにスタジオ入りし、収録後にまた九州へ飛び立つという殺人的スケジュールも平気でやってのけた。
昭和三十三年六月には、東京労音(昭和二十八年発足)がポピュラー例会を始めたので私はまたまた忙しくなった。
(注)
束京労許の前年、二度目の自主連続リサイタルは、昭和二十二年の四月中旬にパリ帰りの成果を披露するべ〈一週間の日程で開催。「観客席は若い女性が圧倒的に多い」(束京新聞)。トリオ・ヴォランのコーラスをバックにイヴェツト・ジローからのプレゼント曲「パリは花束」に始まり、スウインギーなものから、しみじみとしたもの、コミカルなもの、日仏の新曲も取り入れた。後半は「ミラボー橋」などの弾き語りで始め、歌い込んだ「ケベックの街にて」「リオの春」「ラ・メール」などシャルル・トレネ作品を主にした。
「銀座で都合五千人のファンを集めようというのだから、シャンソンもポピュラーになったものだ。……邦人作品集を聞いていると、まだまだ日本語で書かれた曲を歌いあげるという力に乏しい。・・・弾き語りで・・・趣向は悪くなかったが、話がスムーズに流れないので間のびしてしまい‥…・」(報知新聞)。
他方、「パリへ行く前の彼とはガラリと変わって心で歌おうと努力しているのがよみとれた。これは彼の進歩だ。
パリのすぐれたシャンソン歌手の歌をじかに聞くことにより、彼は客観的に自分の歌をふリかえってみたからだろう」(読売新聞)という評も。ピアノ・秋満義孝、ギター・鈴木康允、ベース・浅原哲夫。

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日本シャンソン館最新情報
2月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
2月10日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:日野敦子
2月11日(月)  11時~/14時~ 岩崎桃子     ピアノ:松川裕
2月16日(土)  11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:安藤伸彦
2月17日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:江口純子
2月23日(土) 11時~/14時~ 藍澤幸頼/瀧本真己 ピアノ:近藤正春
2月24日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴

詳細については再上部の「日本シャンソン館のご案内」をご覧ください。


ジローとの再会ー3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

3、初吹き込み・初渡仏

ジローとの再会-3

昭和三十一年十二月、パリからの帰途、カルカッタで以前から約束されていたコンサートを開いた。映画館を借り切ってのワンマンショーであった。私のショーの前に第一部として、インドの民族音楽、シタールの演奏と民族舞踊が行われ、私は無理やり客席中央に座らされて鑑賞させられた。正直いって退屈だった。同じフレーズのメロディーが何度も何度も繰り返されるし、踊りもみな同じように思えたが、隣の席に寄り添う主催者側の方は、真剣に英語で説明する。この国の人たちは、自分たちが世界一の歴史をもつ世界一すぐれた民族であると、心から思っているのだ。
第二部の 「芦野宏ワンマンショー」では、まだ駆け出しの歌手でレパートリーも少なかったから、デビュー前からのおはこも入れて世界歌めぐりとした。シャンソンは四曲くらいにし、イギリス、ドイツ、スペイン、アメリカ、日本の歌というプログラムであった
が、学校時代に習っていたドイツ語がこんなところで役に立ってくれた。
ペコーとはなぜか心の波長が合って、彼が日本へ来たときも、また私がそれから四年たってパリでレコード吹き込みのために
行ったときも、特別な好意をもって付き合ってくれた。ダイナミックでエネルギッシュな歌い方で 「ムッシュ十万ボルト」と愛称されるジルベール・ペコーの曲は、私には似合わないと思って最初は敬遠していた向きがあった。のちにNHKのテレビ番組『くらしの窓』で週に三日、
一日二、三曲ずつシャンソンを歌うようになったとき、ペコーの曲のリクエストが多く、「白い舟」「居ない人」「もしもお金
があったら」「私の仲間たち」「ふるさとへ帰ったら」など、私は訳詞のなかにし礼さんと組んで、どんどん新曲に取り組んでいって好評を得た。大晦日のNHK『紅白歌合戦』では、昭和三十二年に「メケ・メケ」を歌い、三十三年には「風船売り」を歌ってジルベール・ペコ一にメッセージを送った。

日本シャンソン館最新情報
2月ライヴスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
2月2日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
2月3日(日) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:大美賀彰代
2月9日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
2月10日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:日野敦子
2月11日(月)  11時~/14時~ 岩崎桃子     ピアノ:松川裕
2月16日(土)  11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:安藤伸彦
2月17日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:江口純子
2月23日(土) 11時~/14時~ 藍澤幸頼/瀧本真己 ピアノ:近藤正春
2月24日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴

詳細については再上部の「日本シャンソン館のご案内」をご覧ください。

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ジローとの再会-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

3、初吹き込み・初渡仏

ジローとの再会-2

ジローは心から優しく、善意の人である。その後、何回も日本を訪れ、日本で同じステージに上ったこともしばしばである。じつは、四二年前のそのとき、ジローが私たちにプレゼントレてくれたものがある。「パリは花束」という歌である。「私はこれをアシノを通して日本の皆さんにお贈りしたい。アシノはこれを日本語で歌ってくれるでしょう。そして私は次の機会に、フランス語で皆さんにお聞かせしましょう」というメッセージとともに。

「パリは花束」
詞 薩摩 忠
曲 マルク・エイラル
ブーケ・ドゥ・パリ
パリの街は 夢ひらく並木道に
いつもマロニエ散り
ひかり満ちる 花のモンスーリ
緑のプラタナス 鳩のすむノートルダム
鈴蘭の花の香り
幸を飾る花よ
行きずりの人の胸に
リラの門に

パリ滞在も終わりに近い11月末の寒い日曜日の午後だった。私はマルセル・カルネの愛弟子として有名だった俳優のローラン・ルザッフル、谷洋子ご夫妻に連れられて、ジルベール・ペコーの家を訪れた。午後三時の約束なのにペコーはまだ寝ていて、寝間着の上にガウンをはおってわれわれの前に現れたのである。
彼は朝のコーヒーを、われわれは午後のコーヒーを口にしながら、私はペコーの前で彼作曲の「メケ・メケ」と「風船売り」を歌った。すると、すかさず彼は立ち上がって私を抱き、ぜひ12月のオランピアに一緒に出てほしい。そして、私のオーケストラを提供しようと言う。
私も飛び上がって喜んだが、よく考えてみると、二月にインドのカルカッタで行われる私のコンサートに差し支えて、約束できないことがわかった。
しかし、そのときペコーの瞳の中に真剣な輝きを見たような気がしたのは、私の思いすごしだろうか。私がインドでの約束を大切にしたいと言ったとき、彼は「私にも東洋の血が入っている。残念だが、わかった」と言って大きな手で握手を求めてくれた。ペコ一には本当にインド人の血が流れているんだと、帰りの車の中でローランからも聞いたとき、彼の風貌にインド的なものを思い起こして納得した。
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日 時
開演時間 出 演
2月2日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
2月3日(日) 11時~/14時~ 小林美恵子     ピアノ:大美賀彰代
2月9日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:日野香織
2月10日(日) 11時~/14時~ MIKAKO       ピアノ:日野敦子
2月11日(月)  11時~/14時~ 岩崎桃子     ピアノ:松川裕
2月16日(土)  11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:安藤伸彦
2月17日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:江口純子
2月23日(土) 11時~/14時~ 藍澤幸頼/瀧本真己 ピアノ:近藤正春
2月24日(日) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴

詳細については再上部の「日本シャンソン館のご案内」をご覧ください。

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