幸福を売る男
芦野 宏
Ⅱ 夢のような歌ひとすじ
4、世界一周と海外録音
劇場・小屋めぐりとテレビ出演-6
カイロの土産屋で買ったときは、それほど感じなかったのに、パリに持帰ったら、まったく私には合わないように思われたのだ。
香りにもいろいろな文化があり、どうやら私にはパリの香水のほうが相性がいいようだ。
二つの大きな旅行鞄の中には、タロード・ヴァゾーリの書いたオーケストラ用の譜面が四曲分と、パテ・マルコニ社で吹き込んだカラオケのオープンリール・テープも入れた。世界の各地をまわって集めた、小さな民族人形も詰められていた。.
昭和三十五年の旅は、ホノルルを振り出しに、
ロサンゼルス、ニューヨーク、ブエノスアイレ
ス、リオデジャネイロ、そしてパリ。さらにパリを起点としてオーストリアのヴイエナ(ウィーン)にも足を延ばした。じつはヴイエナ放送のテレビ番組から出演依頼があり、パリのホテルから電話で話し合ったが、生番組であるためスケジュールが合わず取りやめざるを得なかった。あとでドイツのデュッセルドルフで歌うときに、ウィーンにも立ち寄ってみた。ヴイエナテレビの規模があまりにも小さいのには驚かされた。スタジオも一部屋だけで、あのころH本ほアメリカに次いで最もテレビ技術や設備が進
んでいたのだということが、ヨーロッパ旅行をして初めてわかった。
六月中旬、約三か月のレコード吹き込みを臼的とした牡界二間旅行は終わった。